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4章予想外の出来事もいいように使いましょう
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「そうだ。そのまま魔力を身体全体に通すように・・・」
「んむー・・・」
只今、ミーアは魔王に魔法教育を受けている。これまた魔法が得意な使用人もいたが、魔法は魔王が最初に約束していたため、魔王が魔法を使えることに驚く使用人たちに、それに関しては自分が教えると却下したのだ。
それはともかく、魔王は却下しつつも、人間では少ないだろう魔法の使い手すらいるこの家はなんなのか、より使用人の謎は深まるばかり。実際目にして見ただけに魔王どころか、悪魔、天使にも劣るが人間にしては上出来だったために疑問ばかりが募る。
そして今、この時、魔王は気配を完璧に隠している使用人たちに感心した。常に探知魔法を展開している魔王には通用しないが、それがなければ魔王が気づけたかもわからないくらいに死角に隠れている使用人たちの気配はない。
あらかじめ使用人の侍女長が、ミーアのための暗殺部隊を護衛につけていると聞いているため、魔王は放置している。信用するもしないも、例え全員が襲いかかってこようと魔王は一瞬で亡き者にできるからこその放置。魔王ならば、ミーアの目と耳を封じた上でできるくらいに余裕なことだ。
そう思えばまず護衛自体いらないわけで、それ以前に、護衛に暗殺部隊というのもいかがなものかと思うが、暗殺や隠密行動を何より得意とするだけで、戦闘が苦手なわけではないらしい。
それでもやっぱり魔王からすれば不要な護衛だが、ミーアが泣くため傍から離れられない魔王は、気になることがあれば調べに行かせるには役に立ちそうだということで実力を測りつつ、放置する方向に至ったわけだ。
使えるならとことん使わなければ、使用人たちの償いなど言葉だけでしかなくなる。使うだけ使って許す気もない魔王だが。
「随分魔力が安定してきたな。ミーアには魔法の才能もありそうだ。しかし、やり過ぎはよくない。しばらくは休憩の合間にでも魔力を身体全体に通すことを日課にすれば魔力も増える」
「がんばる!あっ・・・えへへ」
そう言ってぐうぅとお腹を鳴らすのはミーア。少し恥ずかしそうに笑うミーアに、気配を隠していた暗殺部隊からも和やかな雰囲気が感じられる魔王。
「(まだまだだな)」
隠すなら最後まで隠せと思うのが魔王だ。 危険は見当たらないが、最後の爪が甘いと言わざる終えない。とはいえ、ミーアは使用人が隠れてこちらを見守っていることに気づく気配はないが。
そう思いながらも魔王は機嫌がよかった。どんなに今更ミーアに償おうとミーアに尽くす使用人たちでも、まだ手ぬるいと許す気のない魔王だが、魔王も感心するほどの気配を絶つ者がミーアのあどけない照れた笑みで雰囲気が漏れでたことに機嫌をよくしたのだ。
ミーアの可愛さの理解者が増えたことに喜んでいる結果だと魔王は気づいていない。
「まおう、ごはんたべる」
「ああ、慣れない魔力を動かすことに疲れたんだろう。今日はいい肉が入ったらしい」
「たのしみ!」
「野菜もあるからな」
「うん、ちゃんとたべて、おおきくなるの!」
「・・・いい子だ(だからいい子に育てようとするなというのに、俺は!)」
葛藤の結果、それ以外の言葉はなかったとばかりに出た言葉に魔王は項垂れる。魔王の思う魔王らしい子育てなど、ミーアの涙に弱い時点で無理だというのに魔王は諦めないし、これくらいのことというのがやり過ぎな時点で手遅れなことにも魔王は気づかない。
その例はたくさんある。
第一に食事の時間
「ルキ様、食事中に膝の上にミーア様を乗せるのはいかがなものかと」
「こんな高い椅子、ミーアを座らせれても足が浮く。落ちて怪我でもしたらどうする。それにご飯も食べにくいだろう」
膝に乗せるのは当たり前だろとばかりに言われ、使用人一同は黙る。ミーアに食事マナーを教えている使用人は食事マナー以前の問題だと頭を抱えた。
足が浮くからどうした。椅子から落ちるなんてことはそうない。何よりそちらの方が食べにくいのでは?なんてこと誰にも言えない。
「ありがとう、るき!」
何せミーアが嬉しそうなのだ。教育として一度は口出ししても、しつこく言ってミーアを悲しませる権利など今までミーアに辛く当たっていた使用人たちにはない。
そして第二に体調管理
「くしゅんっ」
「風邪の引き始めか?こじらせたら大変だ。今日は勉強は終わって、すぐ部屋で休むぞ」
「え?くしゃみでただけだよ?」
「熱があがるかもしれないだろう」
「さすがにくしゃみひとつで大袈裟では」
今日のミーアの教育係の使用人は思わず口答えしてしまう。しかし、その使用人の本音だ。くしゃみひとつで考えすぎなのは魔王。実際ミーア自身これくらいと思えるくらいには元気だ。
「倒れたら大変だ。部屋まで連れていく」
「わあっ」
抱き上げて部屋のベットまで連れていく辺り、くしゃみひとつでここまでする魔王はやり過ぎだろう。心配性にもほどがある。本人は心配したわけじゃないと否定したとしても誰も信じないだろう。
そんな魔王の手遅れ満載はまだ続く。
「んむー・・・」
只今、ミーアは魔王に魔法教育を受けている。これまた魔法が得意な使用人もいたが、魔法は魔王が最初に約束していたため、魔王が魔法を使えることに驚く使用人たちに、それに関しては自分が教えると却下したのだ。
それはともかく、魔王は却下しつつも、人間では少ないだろう魔法の使い手すらいるこの家はなんなのか、より使用人の謎は深まるばかり。実際目にして見ただけに魔王どころか、悪魔、天使にも劣るが人間にしては上出来だったために疑問ばかりが募る。
そして今、この時、魔王は気配を完璧に隠している使用人たちに感心した。常に探知魔法を展開している魔王には通用しないが、それがなければ魔王が気づけたかもわからないくらいに死角に隠れている使用人たちの気配はない。
あらかじめ使用人の侍女長が、ミーアのための暗殺部隊を護衛につけていると聞いているため、魔王は放置している。信用するもしないも、例え全員が襲いかかってこようと魔王は一瞬で亡き者にできるからこその放置。魔王ならば、ミーアの目と耳を封じた上でできるくらいに余裕なことだ。
そう思えばまず護衛自体いらないわけで、それ以前に、護衛に暗殺部隊というのもいかがなものかと思うが、暗殺や隠密行動を何より得意とするだけで、戦闘が苦手なわけではないらしい。
それでもやっぱり魔王からすれば不要な護衛だが、ミーアが泣くため傍から離れられない魔王は、気になることがあれば調べに行かせるには役に立ちそうだということで実力を測りつつ、放置する方向に至ったわけだ。
使えるならとことん使わなければ、使用人たちの償いなど言葉だけでしかなくなる。使うだけ使って許す気もない魔王だが。
「随分魔力が安定してきたな。ミーアには魔法の才能もありそうだ。しかし、やり過ぎはよくない。しばらくは休憩の合間にでも魔力を身体全体に通すことを日課にすれば魔力も増える」
「がんばる!あっ・・・えへへ」
そう言ってぐうぅとお腹を鳴らすのはミーア。少し恥ずかしそうに笑うミーアに、気配を隠していた暗殺部隊からも和やかな雰囲気が感じられる魔王。
「(まだまだだな)」
隠すなら最後まで隠せと思うのが魔王だ。 危険は見当たらないが、最後の爪が甘いと言わざる終えない。とはいえ、ミーアは使用人が隠れてこちらを見守っていることに気づく気配はないが。
そう思いながらも魔王は機嫌がよかった。どんなに今更ミーアに償おうとミーアに尽くす使用人たちでも、まだ手ぬるいと許す気のない魔王だが、魔王も感心するほどの気配を絶つ者がミーアのあどけない照れた笑みで雰囲気が漏れでたことに機嫌をよくしたのだ。
ミーアの可愛さの理解者が増えたことに喜んでいる結果だと魔王は気づいていない。
「まおう、ごはんたべる」
「ああ、慣れない魔力を動かすことに疲れたんだろう。今日はいい肉が入ったらしい」
「たのしみ!」
「野菜もあるからな」
「うん、ちゃんとたべて、おおきくなるの!」
「・・・いい子だ(だからいい子に育てようとするなというのに、俺は!)」
葛藤の結果、それ以外の言葉はなかったとばかりに出た言葉に魔王は項垂れる。魔王の思う魔王らしい子育てなど、ミーアの涙に弱い時点で無理だというのに魔王は諦めないし、これくらいのことというのがやり過ぎな時点で手遅れなことにも魔王は気づかない。
その例はたくさんある。
第一に食事の時間
「ルキ様、食事中に膝の上にミーア様を乗せるのはいかがなものかと」
「こんな高い椅子、ミーアを座らせれても足が浮く。落ちて怪我でもしたらどうする。それにご飯も食べにくいだろう」
膝に乗せるのは当たり前だろとばかりに言われ、使用人一同は黙る。ミーアに食事マナーを教えている使用人は食事マナー以前の問題だと頭を抱えた。
足が浮くからどうした。椅子から落ちるなんてことはそうない。何よりそちらの方が食べにくいのでは?なんてこと誰にも言えない。
「ありがとう、るき!」
何せミーアが嬉しそうなのだ。教育として一度は口出ししても、しつこく言ってミーアを悲しませる権利など今までミーアに辛く当たっていた使用人たちにはない。
そして第二に体調管理
「くしゅんっ」
「風邪の引き始めか?こじらせたら大変だ。今日は勉強は終わって、すぐ部屋で休むぞ」
「え?くしゃみでただけだよ?」
「熱があがるかもしれないだろう」
「さすがにくしゃみひとつで大袈裟では」
今日のミーアの教育係の使用人は思わず口答えしてしまう。しかし、その使用人の本音だ。くしゃみひとつで考えすぎなのは魔王。実際ミーア自身これくらいと思えるくらいには元気だ。
「倒れたら大変だ。部屋まで連れていく」
「わあっ」
抱き上げて部屋のベットまで連れていく辺り、くしゃみひとつでここまでする魔王はやり過ぎだろう。心配性にもほどがある。本人は心配したわけじゃないと否定したとしても誰も信じないだろう。
そんな魔王の手遅れ満載はまだ続く。
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