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4章予想外の出来事もいいように使いましょう
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魔王は驚き以上にドン引きし、ミーアはどうしたらいいものかと魔王の足元にしがみついては戸惑うように目の前の土下座する男の使用人を見ている。
「ミーア様!たいっへん、申し訳ございませんでしたあぁぁぁ!」
顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、額を床にぶつける勢いでの土下座は見事と言っていいだろう。
これは、魔王の呪いとも言える食材、食事に関する魔法をかけてから一ヶ月のこと。腐った食材と分類された新鮮な食材で、食事に関して毎日満たされるようになったミーアの生活に、突如現れたのがこの使用人なる男。
一人で魔王の容姿にときめく侍女のように、ミーアについて言いに来るようなことはしなかったが、周囲に釣られて便乗するようにミーアの存在を否定する輩のひとりだった。だから当然魔王の魔法の対象にもなった人物。
それが今、何を思ってか、急に部屋の扉からノックが聞こえ、警戒する魔王が足元に怯えるミーアをひっつけさせながら扉を開ければ、既に土下座待機していたのが今、目の前にいる男である。
ミーアの部屋の周りには基本人は集まらないため、人気がないのはいいが、人の部屋の前の廊下で土下座など迷惑極まりない。だが、男は物凄く必死にミーアに謝罪する。魔王もミーアも意図がわからず男を見据えることしかできない。
「わ、わだじは、わだじば、なんて、ごどをぉおぉぉ!」
わかることは何やらミーアにかなり反省をしていることだろうか。だが、何故急に?まずい飯の日々に頭がおかしくなった第一号だろうかと考える魔王。
「うぇ・・・っ」
「ぐへっ」
そんな中、あまりに目の前の男が泣くからか、釣られて泣きそうなミーアの姿。素早くそれを感知した魔王はミーアの目を手で隠し、パチンと指を鳴らしては男を死なない程度に吹き飛ばすとパタンと扉を閉めた。
「う、ん?あれ・・・?うわぁっ」
扉が閉まって見えなくなった男の姿にミーアは涙を引っ込めて首を傾げれば、魔王によって抱き上げられる。
「あれは、夢だ」
「ゆめ・・・?」
ドンドンッ
魔王は、ミーアを安心させるよう笑みと共に夢だと言うも、どんどんとドアを叩く音によって、夢にすることは叶わなかった。
「ずびませんっ!はなじをぎいでぐだじゃーい!」
「(仮にも使用人ならそれらしく振る舞え)」
と思うのは魔王。こんな使用人をよく雇ったなここの家はと思うのも無理はないくらい煩わしい男である。
仕方がないので落ち着いて話せるようになってから来いと魔王から一言。30分も経たずして次は静かなノックが響く。
「落ち着いたか」
「はい・・・、すみません」
「ミーア、どうする?話を聞くか」
先程と違ってまともに話ができそうな状態の男を見て、ミーアに問う。ミーアが嫌がればもちろん、魔王はすぐに男を吹き飛ばして部屋に入れないだろう。
「いいよ、はいって」
魔王に抱かれての安心感もあるのか、はっきりとした言葉で許可を出すミーア。魔王は嫌そうな顔をしながらも、ミーアが言うならと部屋へ招く。そして魔王によって用意されたブランコへ魔王はミーアを抱えながら座る。
「え、ブランコ・・・ありましたっけ?いや、滑り台に、シーソー?え?」
ようやく遊具の存在に気づいた男は混乱した。つまりは一度はミーアの前の部屋に訪れたことのある人物だということ。ミーア本人は毎回使用人が違うため、覚えていないが。
「さっさと用件を言え」
不機嫌そうに言う魔王にびくりと怯える男。抱えられてるミーアは何も言わない。これではどちらが主人かわかったものではないが、口出すものはおらず、男はすぐまた土下座をした。次は泣いていないが。
「最近、食事が全部腐ってるように見えてまずいんです!」
「それがどうした」
それをした本人である魔王はまさか自分がしたと勘づいたのかと少しばかり目を見開いたことに、この場にいる二人のどちらとも気づく様子はない。
「食べずに生きるわけにもいかず、この一ヶ月ほど食べ続けたら、俺、泣けてきて・・・っミーア様にこんな食事ずっと食べさせてきたのかって!今だって、変わらない食事お食べなんだなと思うと、俺、凄く最低なことしてきたって・・・っ思って」
結局ぽろぽろと泣き出す男に、ミーアも魔王も今は新鮮でいいものを食べていると言う気にはならない。
「だから、なんだ」
今更反省しようが、ミーアにしてきた仕打ちを魔王が許すはずもない。それに食事が今だ腐ったように見えてまずいのなら、それは嘘だと魔法をかけた本人だからわかることだ。
「だからミーア様、ごめんなさいっ!まだ幼いミーア様にしてきたことを償いたい!と思って食べていたら、ご飯が美味しくなったんです・・・っ!だから、もうこれは神様からの罰なのかなと・・・っミーア様の本当の姿は女神様なんじゃって!俺、女神様になんてことをしたんだと思うと、謝りたくて謝りたくて!自己満足ってわかってるんですけど、でも・・・っ!」
ご飯が美味しいという時点で本音とわかった魔王だが、色々飛躍しすぎて魔王は呆れ顔だ。謝られた本人、ミーアもまさかの女神発言にぽかんとした表情。ぽろぽろと涙を流す使用人男は、その様子に気づかずただ謝り続けるのだった。
「ミーア様!たいっへん、申し訳ございませんでしたあぁぁぁ!」
顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、額を床にぶつける勢いでの土下座は見事と言っていいだろう。
これは、魔王の呪いとも言える食材、食事に関する魔法をかけてから一ヶ月のこと。腐った食材と分類された新鮮な食材で、食事に関して毎日満たされるようになったミーアの生活に、突如現れたのがこの使用人なる男。
一人で魔王の容姿にときめく侍女のように、ミーアについて言いに来るようなことはしなかったが、周囲に釣られて便乗するようにミーアの存在を否定する輩のひとりだった。だから当然魔王の魔法の対象にもなった人物。
それが今、何を思ってか、急に部屋の扉からノックが聞こえ、警戒する魔王が足元に怯えるミーアをひっつけさせながら扉を開ければ、既に土下座待機していたのが今、目の前にいる男である。
ミーアの部屋の周りには基本人は集まらないため、人気がないのはいいが、人の部屋の前の廊下で土下座など迷惑極まりない。だが、男は物凄く必死にミーアに謝罪する。魔王もミーアも意図がわからず男を見据えることしかできない。
「わ、わだじは、わだじば、なんて、ごどをぉおぉぉ!」
わかることは何やらミーアにかなり反省をしていることだろうか。だが、何故急に?まずい飯の日々に頭がおかしくなった第一号だろうかと考える魔王。
「うぇ・・・っ」
「ぐへっ」
そんな中、あまりに目の前の男が泣くからか、釣られて泣きそうなミーアの姿。素早くそれを感知した魔王はミーアの目を手で隠し、パチンと指を鳴らしては男を死なない程度に吹き飛ばすとパタンと扉を閉めた。
「う、ん?あれ・・・?うわぁっ」
扉が閉まって見えなくなった男の姿にミーアは涙を引っ込めて首を傾げれば、魔王によって抱き上げられる。
「あれは、夢だ」
「ゆめ・・・?」
ドンドンッ
魔王は、ミーアを安心させるよう笑みと共に夢だと言うも、どんどんとドアを叩く音によって、夢にすることは叶わなかった。
「ずびませんっ!はなじをぎいでぐだじゃーい!」
「(仮にも使用人ならそれらしく振る舞え)」
と思うのは魔王。こんな使用人をよく雇ったなここの家はと思うのも無理はないくらい煩わしい男である。
仕方がないので落ち着いて話せるようになってから来いと魔王から一言。30分も経たずして次は静かなノックが響く。
「落ち着いたか」
「はい・・・、すみません」
「ミーア、どうする?話を聞くか」
先程と違ってまともに話ができそうな状態の男を見て、ミーアに問う。ミーアが嫌がればもちろん、魔王はすぐに男を吹き飛ばして部屋に入れないだろう。
「いいよ、はいって」
魔王に抱かれての安心感もあるのか、はっきりとした言葉で許可を出すミーア。魔王は嫌そうな顔をしながらも、ミーアが言うならと部屋へ招く。そして魔王によって用意されたブランコへ魔王はミーアを抱えながら座る。
「え、ブランコ・・・ありましたっけ?いや、滑り台に、シーソー?え?」
ようやく遊具の存在に気づいた男は混乱した。つまりは一度はミーアの前の部屋に訪れたことのある人物だということ。ミーア本人は毎回使用人が違うため、覚えていないが。
「さっさと用件を言え」
不機嫌そうに言う魔王にびくりと怯える男。抱えられてるミーアは何も言わない。これではどちらが主人かわかったものではないが、口出すものはおらず、男はすぐまた土下座をした。次は泣いていないが。
「最近、食事が全部腐ってるように見えてまずいんです!」
「それがどうした」
それをした本人である魔王はまさか自分がしたと勘づいたのかと少しばかり目を見開いたことに、この場にいる二人のどちらとも気づく様子はない。
「食べずに生きるわけにもいかず、この一ヶ月ほど食べ続けたら、俺、泣けてきて・・・っミーア様にこんな食事ずっと食べさせてきたのかって!今だって、変わらない食事お食べなんだなと思うと、俺、凄く最低なことしてきたって・・・っ思って」
結局ぽろぽろと泣き出す男に、ミーアも魔王も今は新鮮でいいものを食べていると言う気にはならない。
「だから、なんだ」
今更反省しようが、ミーアにしてきた仕打ちを魔王が許すはずもない。それに食事が今だ腐ったように見えてまずいのなら、それは嘘だと魔法をかけた本人だからわかることだ。
「だからミーア様、ごめんなさいっ!まだ幼いミーア様にしてきたことを償いたい!と思って食べていたら、ご飯が美味しくなったんです・・・っ!だから、もうこれは神様からの罰なのかなと・・・っミーア様の本当の姿は女神様なんじゃって!俺、女神様になんてことをしたんだと思うと、謝りたくて謝りたくて!自己満足ってわかってるんですけど、でも・・・っ!」
ご飯が美味しいという時点で本音とわかった魔王だが、色々飛躍しすぎて魔王は呆れ顔だ。謝られた本人、ミーアもまさかの女神発言にぽかんとした表情。ぽろぽろと涙を流す使用人男は、その様子に気づかずただ謝り続けるのだった。
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