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結局あれから龍は完治するまで入院となった。俺は面会謝絶のままに。母さん、父さんが可哀想だからと毎日違うアルバムを持って見舞いに行くのが羨ましい日々。

同時に二人共仕事は?毎日ぶっといアルバム明らかに違うものだけど何冊あるの?とか色々疑問はあったがまあ中身を見て説明を受ければ納得がいった。

「これはね、優人が初めてハイハイした一歩目で、これが二歩目、これが三歩目で……」

そりゃいくらでもアルバムができるわけである。もう動画にしろよ!と思えば動画もあると丸一日俺のハイハイを延々と見せられた。今の俺より断然体力ありすぎるんじゃなかろうか?赤ん坊の俺。どんだけハイハイするんだよ。

というか自分のより龍のを見たい……と言えば翌日は丸二日徹夜で龍のハイハイ時期を見ることになった。赤ん坊はちゃんと寝ろよ。と思うくらいに泣きもせずご飯も嫌々して朝から晩までハイハイを丸二日する龍はもはやただ者ではない。

そしてそれを動画と連写してアルバムにしまくった俺の親もおかしい。まあ龍が可愛いのはわかるけどさ!ほら、このハイハイ一歩目と二歩目、少し幅が違うんだけど二歩目が若干進みが大きい……きっと早くハイハイをすることを考えていたに違いない!え?違いがわからない?

まあ俺は龍の兄でもあるからな、わかって当然だ。何より動画のハイハイする龍は明らかにスピードが早くなっている。ところどころ俺が写ってるわけだが、楽しそうに笑う俺を見て気のせいか龍がやる気を出してやっている気がしてならない。ハイハイしながらちらちら俺を見る龍は嬉しそうだし。

もしや赤ん坊時代から俺は想われていたのだろうか?愛され過ぎではなかろうか。

なんて感じで過去を振り返っていたため意外に龍が退院するまでの時が過ぎるのは早かった。龍が完治して戻ってきた時明らかに多い荷物のほとんどが俺用のアルバムだったので恐らく龍を大人しくさせるために母さんたちはあらかじめ先生に言われていたのかもしれない。

こんなにアルバムがあるとは思わなかっただろうが。俺だって知らなかった。

「ああ、二人に今まで見せてきたのは一般用アルバムだからね」

こんなにアルバムなかったよね?と聞いたときの父さんの言葉だ。アルバムの一般用とは一体。

「入院中に僕の知らない兄さんたくさん知れたよ。これからは僕の知らない兄さんなんていない人生になるから覚悟してね」

謎は色々あるが、まあおかげで龍が満足そうに帰ってきたので気にしないこととする。龍が幸せならそれが一番なのだから。

「それはこっちの台詞だ。母さん、父さん龍を送ってもらったばかりで悪いんだけど……」

「ふふ、大丈夫よ」

「ホテルはもうとってるからね」

そんな俺と龍が会わない間気にかけないよう配慮してくれたことだけでも感謝しきれないのに、もはやわかってるとばかりの親二人の空気読み感にはいつか恩返しせねばとすら思う。

「僕、この家族に生まれてよかったとつくづく思うよ」

「俺も」

「じゃ、我慢した分色々先生から学んできたしたくさん愛してあげるね。兄さん」

「何を学んできたんだか……まあ、お手柔らかにな」

「兄さん相手にできる気がしないけど、善処するよ」

そんなわけで互いに会えなかった期間を埋め合わせるがごとく退院後はそれはもう濃い時間を過ごしたとだけ言っておこう。もはや初めての時とは比べ物にならないテクニックを身に付けていた。あの先生、医師なのに龍にナニを教えまくったのか……。先生の弟くんに少し同情したが、愛し合ってるなら些細なことだろう。

とまあ、結局なんだかんだ離れられない俺たちなんでこれからはお互いの愛を確かめ合いながら傍にいる幸せを噛みしめたいと思う。

とりあえず弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?っていう悩みを抱えた過去の俺みたいな人がいたら伝えてほしい。

その答えはどうしようもない、離れても無駄だから諦めろと言ってやってくれ。それで掴める幸せもあるから。

おわり
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