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自分の気持ちを自覚してから数日後、早くも龍の退院が決まった。無理こそはできないが、安静にしている分には家でもいいそうで暴れないようにだけきつく言われている。俺を後ろからもたれるように密着する龍が聞いているかはともかく。

何度か傷口が開きかけていたみたいなので仕方ないと言えばそれまでだが。とりあえず俺が傍にいれば問題はないだろう。

「立ってて大丈夫か?」

「んー、意外に平気。兄さんの癒しパワーかも」

「何言ってんだか」

甘えたな龍の手に右手を重ねてやれば龍のもうひとつの手が俺の右手を包み込む。話を終えたばかりの医者と看護師の目が痛いが、龍が気にしないのなら俺は構わない。

「本当に仲良しね!でもそろそろ帰りましょ?龍をずっと立たせてるわけにもいかないしね」

車イスを拒否したのは龍だが、それでも確かに立たせたままなのは傷口に悪いだろうと俺も思うため母の言う通りにする。意外というべきか母に関しては、龍が入院する前はともかく、普段から俺と龍が仲良くしているのを見てきたからか、特に気にした様子はない。

実は龍の入院中キスしたところを見られて慌てもしたがいつも通り仲良しね~、で終わった。寧ろ気にする俺の方がおかしいとばかりに龍も気にした様子もなくてとりあえず母に関しては俺も気にしないことにした。

「龍、大丈夫か?」

「兄さんがいるから大丈夫」

「何だそれ」

車に乗るときも気遣っていれば龍はそれが嬉しいとばかりににこにこと笑っていて本当に怪我してるのかすら怪しいほどに上機嫌だ。まあそれでも無理はさせられないが。

そんなわけで龍を気遣いつつ、二人で後部座席に座り母が運転し始めれば母の唐突な質問に俺は吹き出すことになった。

「結婚はいつするの?」

「ぶ……っへ、か、母さん?」

もはや兄弟を通り越した関係わかってますとばかりの行き過ぎた質問に頭が混乱する。他人ならともかく母さんは家族だからこそ動揺が先立つ。

「兄弟でも結婚できるの?」

しかし、龍はとても冷静だ。やはり俺がおかしいのか?と感じてしまう。

「んー、無理だけど、婚姻届書くことはできるし、家族内でしちゃえばいいじゃない」

「か、母さんはいいのか?俺と龍がそういう関係でも」

「寧ろ大歓迎よ」

あっさりとした母の答えに気持ちを封じ込めていたときの自分が本当にバカみたいに思えてくる。

「兄さん……いいの?僕と兄弟以上になっても」

なんて思っていれば隣から目をきらきらさせた龍が。そう言えば行動が先立って俺自身の気持ちは伝えてなかったなとこれまた今更気づく自分にため息が出そうになる。なんだかんだ龍をまた不安にさせてしまっていたのだろう。

愛してるとは伝えたが、龍からすればそれは兄弟としてとしか思われてなくてもおかしくはない。それは伝えてないと一緒だ。

「ああ、遅くなってごめんな。俺も龍を愛してる。兄弟としても、それ以上としても……こんな情けない兄ちゃんだけど俺でいいのか?」

「うん……!兄さんがいい!兄さんじゃなきゃ嫌だ!」

ロマンも何もない母のいる車の中だけど龍は満面の笑みで嬉しそうに笑うので照れ臭さよりも嬉しさが勝る。自分の気持ちを伝えただけでここまで喜ばれる俺は世界一の幸せ者だろう。

「まあまあまあ!見せつけてくれるわね!というかまだ恋人同士じゃなかったの?パパにも報告して二人で喜んでたのに」

きっとキスの場面を見られた日からそういう風に思われていたのかもしれない。俺たちの関係を受け入れてくれる母に感謝と知らないうちに父にも報告されていた驚きと、母の言い分から父にも受け入れられている安心感にこの家族の一員でよかったと心底思った。
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