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「まあそういうわけでゴリラダ嬢と幸せにな」

「いやいやいや!納得いきま……」

「わんっ!」

「おお、寂しくて来たのかイヌよ」

王子様がみっともなく否定を繰り返そうとすれば私の弟であったイヌが会場に入ってきました。とたんに陛下はデレデレで、駆け寄ってきたイヌを嬉しそうに抱き上げます。

え?犬にイヌと名付けたのかって?ゴリラダの名付けしたのも私ですわ。ネーミングセンスに自信はないので単純なのにいたしましたの。

「ゴリラダにイヌ……センスなさすぎ……」

はーい、ヒロインウーラさん?聞こえてますからね?まさか会場でこれだけの騒ぎ起こしといて無事帰れるなんて思ってませんよね?

「ひ、酷いわ……ウーラ様!私のつけた名前をダサイだなんて……っ」

聞こえて傷つきましたとばかりに涙を浮かべれば、周囲の視線はたちまち私たちとなる。

「正直に言って何が……わる……ぃ」

「ウ~ホ~?」

「言いました!よ、よくよく考えたらとってもいいお名前でしたわ!」

私の後ろで檻の中からゴリラダが脅しかけたのか、ウーラはすぐに生意気な態度を改めました。まあゴリラダに怒りをぶつけられたいとは誰も思わないわよね。

しかし、数々の無礼は許しがたいです。まだ婚約者だから王太子妃ではなくとも私にも生まれたときからの身分がありますからね。未来の王妃なんて不確定なものではなく、確実なものとして。

「わん!ぐるる……」

「なんとなんと姉をいじめたのが許せぬと……ならば、二人は罰として処刑にでもしようか」

「「え?」」

なーんて考えていれば……ふふふ、何かおかしなことが聞こえた気がしますが……気のせいですよね?凄く重いことが軽く決められたような……。

「わんわん!」

「なるほど、すぐ死んでは罰にならないと」

「きゃんきゃんわぉーん」

「ほうほう、なるほど……奴隷か。確かにその方が身を持った仕置きになるな……さすがイヌだ!」

「わんっ」

はて、おかしいですね。陛下が犬と会話されています。うちのはテレパシーが使えたかしら?なんて思ってしまうほどに、陛下はうんうんとイヌと会話していました。

私が下すまでもなく陛下直々に罪を負わせてくださるなら文句はありません。若干やりそこねた気分はありますが……いや、別にいいんですけどね?

「ち、父上、奴隷などさすがに……嘘ですよね?」

「イヌがそうしてほしいと頼んだからには断れんだろう」

「実の息子大事にしてくださいよ!」

「せっかくこの機会だから言うが、キザとは血繋がっとらんよ?」

「は?」

「え?」

「ええー……」

あまりに軽くぶっちゃけられた陛下の言葉に、私たちと周りの人たちは騒然となった。乙女ゲームをしていた時はそんな事実は公開されずヒロインと王子はそんな生涯なく結ばれるわけだが……。

まさか全クリしたつもりが、隠しルートでも逃したか?と私の思考回路はあっという間にそちらへいった。予定にない展開は自分がどうなるかわからなくなるから怖い。本来未来がわかってたことこそが異常だったとわかりながらも。
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