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5章
さらなる章へ(神様視点)
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まだ意識はある。視界も耳も口すら閉ざされて、ただただ意識だけがまだ残る。ユージンの魂は輪廻に引き寄せられていった。もう、僕の記憶は消えてしまっているだろう。
「はい、消えてますよ。それにしてもさすが全の神ですね。力を魂に作り替えるのにもう少しかかります。」
声は出せない。でも意識を読み取っているんだろう。輪廻の意識ならば会話は可能みたいだ。
だから質問する。僕もユージンを忘れてしまうだろうか?と。初めての経験だけど忘れる気がしない。
「忘れないでしょう。転生する度に前世の記憶は薄まるでしょうが、魂の存在になっても元は神、それも全の神となれば、一度の輪廻の流れで浄化は難しいですから。悲しい話ですが、全ての悪い欲を浄化するのには時間がかかります。それこそ、何度転生を必要とするかわかりません。悪い欲は溢れすぎて神の力と絡み合っています。でもだからこそ、悪い欲についた神の力で記憶は維持されます。悪い欲が消えたときこそ、貴方は本当の人間と変わらない転生を迎えます」
悪い欲があっての記憶でもあるけど、神の力なしには悪い欲を抑えられないということでもあるのかな。本来なら神の力は全て魂に変換すべきだと思ったのだけど。
「神を完全な人間にするにはそれが確実ですからね。転生する度に生きやすくはなると思いますが、それまでは生きにくい世界となるでしょう。天才を越えた存在は異質でしかありませんから」
異質・・・ね。それでもユージンがいるなら、大丈夫。縁結びのおかげで必ず会える確証ができてるだけにどう扱われようと切り抜けるよ。
「異質とはいえ、持つ力を振り回さず制御すれば問題はありませんよ。バレなければいいのです。ただ、悪い欲に囚われた神の力がどう作用して転生で受け継ぐかわかりません。力を理解できず、ユージンを傷つける可能性すらあります。」
それは避けたいな・・・。転生の度に何が異質かわからないわけ?
「そうですね。ですが、確実に異質から遠ざかるのは確かです。少なからず知識に関しては薄まりはしますが、最初こそ膨大な知識量ですから異質に他なりません。それに関しては記憶と関係するだけに悪い欲がなくなるまであると思いますよ。悪い欲が薄まっていけば最低限になっては来るでしょうが」
知識・・・その世界に合わせるしかないね。他に何に影響するかはランダム。それがユージンのためになる力であることを願うしかないね。
神でありながら願うなんて変な話だけれど。
「・・・いいじゃないですか。神の力が多少残ろうと人間には間違いなくなるのですから。これからは願う側ですよ」
それもそうだね。ああ、もうそろそろ意識も途切れそうだ。
「どうかよい転生を」
その言葉でようやく輪廻に引き寄せられていく感覚が伝わる。これでようやくユージンの元へ行けるみたいだ。願ってもいいなら、どうか誰よりユージンの近い場所に転生ができることを祈りたい。
ユージン、今いくよ。
僕を忘れただろうユージンの魂を感じた気がした。すでに僕の意識は閉ざしつつある。
転生先はユージンの魂であってユージンじゃない。それでも僕は違った君でいいからまた会いたい。この世界のユージンに未練を残したくない僕は、この世界のユージンにさようならと決別する。僕を忘れた君を悲しませないために。
『神様さようなら』
そんな声がユージンから聞こえた気がした。
END
「はい、消えてますよ。それにしてもさすが全の神ですね。力を魂に作り替えるのにもう少しかかります。」
声は出せない。でも意識を読み取っているんだろう。輪廻の意識ならば会話は可能みたいだ。
だから質問する。僕もユージンを忘れてしまうだろうか?と。初めての経験だけど忘れる気がしない。
「忘れないでしょう。転生する度に前世の記憶は薄まるでしょうが、魂の存在になっても元は神、それも全の神となれば、一度の輪廻の流れで浄化は難しいですから。悲しい話ですが、全ての悪い欲を浄化するのには時間がかかります。それこそ、何度転生を必要とするかわかりません。悪い欲は溢れすぎて神の力と絡み合っています。でもだからこそ、悪い欲についた神の力で記憶は維持されます。悪い欲が消えたときこそ、貴方は本当の人間と変わらない転生を迎えます」
悪い欲があっての記憶でもあるけど、神の力なしには悪い欲を抑えられないということでもあるのかな。本来なら神の力は全て魂に変換すべきだと思ったのだけど。
「神を完全な人間にするにはそれが確実ですからね。転生する度に生きやすくはなると思いますが、それまでは生きにくい世界となるでしょう。天才を越えた存在は異質でしかありませんから」
異質・・・ね。それでもユージンがいるなら、大丈夫。縁結びのおかげで必ず会える確証ができてるだけにどう扱われようと切り抜けるよ。
「異質とはいえ、持つ力を振り回さず制御すれば問題はありませんよ。バレなければいいのです。ただ、悪い欲に囚われた神の力がどう作用して転生で受け継ぐかわかりません。力を理解できず、ユージンを傷つける可能性すらあります。」
それは避けたいな・・・。転生の度に何が異質かわからないわけ?
「そうですね。ですが、確実に異質から遠ざかるのは確かです。少なからず知識に関しては薄まりはしますが、最初こそ膨大な知識量ですから異質に他なりません。それに関しては記憶と関係するだけに悪い欲がなくなるまであると思いますよ。悪い欲が薄まっていけば最低限になっては来るでしょうが」
知識・・・その世界に合わせるしかないね。他に何に影響するかはランダム。それがユージンのためになる力であることを願うしかないね。
神でありながら願うなんて変な話だけれど。
「・・・いいじゃないですか。神の力が多少残ろうと人間には間違いなくなるのですから。これからは願う側ですよ」
それもそうだね。ああ、もうそろそろ意識も途切れそうだ。
「どうかよい転生を」
その言葉でようやく輪廻に引き寄せられていく感覚が伝わる。これでようやくユージンの元へ行けるみたいだ。願ってもいいなら、どうか誰よりユージンの近い場所に転生ができることを祈りたい。
ユージン、今いくよ。
僕を忘れただろうユージンの魂を感じた気がした。すでに僕の意識は閉ざしつつある。
転生先はユージンの魂であってユージンじゃない。それでも僕は違った君でいいからまた会いたい。この世界のユージンに未練を残したくない僕は、この世界のユージンにさようならと決別する。僕を忘れた君を悲しませないために。
『神様さようなら』
そんな声がユージンから聞こえた気がした。
END
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