22 / 30
4章
限界、溢れる欲
しおりを挟む
しゃがみこみ、頭を抱えながら神様が口を開く。
「僕は・・・ユージンといたい」
「うん」
ひとつ
「でも神として全の神としての仕事を放棄したいわけじゃないっ」
「うん」
ふたつ
「苦しいよ、ユージン・・・欲が渦巻いて気持ち悪いんだ」
「うん」
みっつ
「溜まるばかりで飲み込まれそうで」
「うん」
よっつ
「どうしていいかわからない」
「うん、神様いっぱい頑張ったんだね」
いつつ
神様がひとつひとつの素直な気持ちが紡がれる。神様は万能じゃない。神様は優しい。けど、悪い欲に飲み込まれつつあるのだろう。だから逃げたい気持ちが俺と二人の世界をつくるきっかけになったのかもしれない。
なら、考えを改める必要がある。
神様は逃げたくなるほどに悪い欲に囚われつつある。でも神として逃げ出すことでどうなってしまうかを理解している。だからこそ、逃げることを止めてほしいけど、逃げたいとも思っている。
神様としての逃げ出したくない責任。神様自身の逃げ出したい気持ち。事が重大なだけに励ますことしか俺にはできない。
「! あ・・・っう」
「神様?」
「離れて・・・っユージン!」
「ユージン!」
「あれはなに・・・」
苦しげにする神様に突き飛ばされてアーカが受け止めてくれる。お礼を言うよりも神様から出てくる黒いもやのようなものに目が向く。
「嫌な感じがする」
その黒いもやが徐々に俺たちに近づいてきたため、アーカは恐る恐る俺ごと離れようとする。このままじゃ神様から遠退くだけだ。
「神様が苦しんでる!行かないと!」
「だめだ。あの黒いもやが何かわからないことには危険だ。カミサマも離れろって言ったのはこの黒いもやに触れるのがよくないって意味だろ」
「でもこのままじゃ広がるばかりだよ!」
「どうすれば・・・」
黒いもやで神様が見えなくなる。ゆっくりと広がりつつあるもや。今だに嵐が吹き荒れる外にだんだんと近づく。
「神の領域」
ふと聞こえる背後からの声に、俺とアーカが振り向く。
「規則の神?」
「異変を感じとるのが遅れたよ。これはだめだ」
「貴方も神か。これはなんなんだ?」
「悪い欲だね。まさか全の神が抑えられなくなっていたとは誰も気づかなかったんだ。神が欲を持ち、世界の崩壊を自らなそうとしていることには気がついたのに。全の神が、ユージンを殺した時点で気づくべきだったね。この欲に全の神が振り回されている可能性があると。」
「じゃあ、これがなんとかできれば・・・」
「世界の崩壊は免れるかもしれない。災害で戦争の発端になりそうなものは神の力をもってすれば再生することは可能だからね。ただし、まずはこの欲をなんとかして、嵐を全の神自身が止める必要がある」
規則の神の神の領域のおかげで黒いもやが広がることはない。でもずっとこうしている訳にはいかない。どうすれば神様を助けられる?
「悪い欲を消すことはできないのか?」
「わからない。私たち神は悪い欲は全て全の神に流していた。その全の神が抑えきれないほどに溜め込むとなると、消す方法はないとしか言い様がない。ないからこそ、全の神に流すしかなかったのかもしれない。全の神は誰よりも力ある存在。全の神すら抑えられないとなれば、私たちが背負えば全員が簡単に振り回されることだろう。」
「そんな・・・」
「くそ・・・っ」
神様の姿も声も聞こえず、今神様がどうなっているかもわからない。
「神様・・・」
「いちかばちかスキル使ってみろよ、ユージンちゃん」
「だ、誰?」
急に知らない声に言われ、見れば顔から服からすべてがハデな人。
「遊びの神、何をしにきたんだい?」
「こ、こいつも神なのか」
アーカが言いたいことはわかる。神様や規則の神とは違ってあまり神らしくない。ただのチャラ男だ。
「んー、どうしようもねぇかもしんねーけど、ユージンのこの世界で持つスキルならなんとかなるんじゃねぇかなとアドバイスにな」
「俺のスキル?」
「お前ちゃんは神様専用の治癒者なんだから神様に関したことなら助けられるかもだろ?」
「でも彼は人間だよ。神にもどうしようもないことを・・・」
「だが神を追い詰めたのも人間による欲だ。おれちゃんたちは間違えたんだよ。全の神を頼りすぎた。全の神が人間を嫌い始めている時点で、苦しんでいることに気づいてやるべきだったんだよ。」
「それは・・・」
「よくわからないけど、できるならするよ。神様助けたいから!」
「大丈夫だ。おれちゃんも力を貸すからな」
「私も手伝えないか!私はカミサマは友達なんだ!ユージンに任せて見るだけなんてことする気はない」
「アーカ・・・」
「遊びの神、私はこのもやを止めるので精一杯だ」
「大丈夫、おれちゃんに任せなさい!」
今はこの遊びの神の考えに託すしかない。神様絶対に助けるから!
「僕は・・・ユージンといたい」
「うん」
ひとつ
「でも神として全の神としての仕事を放棄したいわけじゃないっ」
「うん」
ふたつ
「苦しいよ、ユージン・・・欲が渦巻いて気持ち悪いんだ」
「うん」
みっつ
「溜まるばかりで飲み込まれそうで」
「うん」
よっつ
「どうしていいかわからない」
「うん、神様いっぱい頑張ったんだね」
いつつ
神様がひとつひとつの素直な気持ちが紡がれる。神様は万能じゃない。神様は優しい。けど、悪い欲に飲み込まれつつあるのだろう。だから逃げたい気持ちが俺と二人の世界をつくるきっかけになったのかもしれない。
なら、考えを改める必要がある。
神様は逃げたくなるほどに悪い欲に囚われつつある。でも神として逃げ出すことでどうなってしまうかを理解している。だからこそ、逃げることを止めてほしいけど、逃げたいとも思っている。
神様としての逃げ出したくない責任。神様自身の逃げ出したい気持ち。事が重大なだけに励ますことしか俺にはできない。
「! あ・・・っう」
「神様?」
「離れて・・・っユージン!」
「ユージン!」
「あれはなに・・・」
苦しげにする神様に突き飛ばされてアーカが受け止めてくれる。お礼を言うよりも神様から出てくる黒いもやのようなものに目が向く。
「嫌な感じがする」
その黒いもやが徐々に俺たちに近づいてきたため、アーカは恐る恐る俺ごと離れようとする。このままじゃ神様から遠退くだけだ。
「神様が苦しんでる!行かないと!」
「だめだ。あの黒いもやが何かわからないことには危険だ。カミサマも離れろって言ったのはこの黒いもやに触れるのがよくないって意味だろ」
「でもこのままじゃ広がるばかりだよ!」
「どうすれば・・・」
黒いもやで神様が見えなくなる。ゆっくりと広がりつつあるもや。今だに嵐が吹き荒れる外にだんだんと近づく。
「神の領域」
ふと聞こえる背後からの声に、俺とアーカが振り向く。
「規則の神?」
「異変を感じとるのが遅れたよ。これはだめだ」
「貴方も神か。これはなんなんだ?」
「悪い欲だね。まさか全の神が抑えられなくなっていたとは誰も気づかなかったんだ。神が欲を持ち、世界の崩壊を自らなそうとしていることには気がついたのに。全の神が、ユージンを殺した時点で気づくべきだったね。この欲に全の神が振り回されている可能性があると。」
「じゃあ、これがなんとかできれば・・・」
「世界の崩壊は免れるかもしれない。災害で戦争の発端になりそうなものは神の力をもってすれば再生することは可能だからね。ただし、まずはこの欲をなんとかして、嵐を全の神自身が止める必要がある」
規則の神の神の領域のおかげで黒いもやが広がることはない。でもずっとこうしている訳にはいかない。どうすれば神様を助けられる?
「悪い欲を消すことはできないのか?」
「わからない。私たち神は悪い欲は全て全の神に流していた。その全の神が抑えきれないほどに溜め込むとなると、消す方法はないとしか言い様がない。ないからこそ、全の神に流すしかなかったのかもしれない。全の神は誰よりも力ある存在。全の神すら抑えられないとなれば、私たちが背負えば全員が簡単に振り回されることだろう。」
「そんな・・・」
「くそ・・・っ」
神様の姿も声も聞こえず、今神様がどうなっているかもわからない。
「神様・・・」
「いちかばちかスキル使ってみろよ、ユージンちゃん」
「だ、誰?」
急に知らない声に言われ、見れば顔から服からすべてがハデな人。
「遊びの神、何をしにきたんだい?」
「こ、こいつも神なのか」
アーカが言いたいことはわかる。神様や規則の神とは違ってあまり神らしくない。ただのチャラ男だ。
「んー、どうしようもねぇかもしんねーけど、ユージンのこの世界で持つスキルならなんとかなるんじゃねぇかなとアドバイスにな」
「俺のスキル?」
「お前ちゃんは神様専用の治癒者なんだから神様に関したことなら助けられるかもだろ?」
「でも彼は人間だよ。神にもどうしようもないことを・・・」
「だが神を追い詰めたのも人間による欲だ。おれちゃんたちは間違えたんだよ。全の神を頼りすぎた。全の神が人間を嫌い始めている時点で、苦しんでいることに気づいてやるべきだったんだよ。」
「それは・・・」
「よくわからないけど、できるならするよ。神様助けたいから!」
「大丈夫だ。おれちゃんも力を貸すからな」
「私も手伝えないか!私はカミサマは友達なんだ!ユージンに任せて見るだけなんてことする気はない」
「アーカ・・・」
「遊びの神、私はこのもやを止めるので精一杯だ」
「大丈夫、おれちゃんに任せなさい!」
今はこの遊びの神の考えに託すしかない。神様絶対に助けるから!
3
お気に入りに追加
821
あなたにおすすめの小説
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
僕のユニークスキルはお菓子を出すことです
野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。
あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは??
お菓子無双を夢見る主人公です。
********
小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。
基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。
ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ
本編完結しました〜
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
猫の王様の、なんでもない話
木兎ゆう
BL
大学に入って一ヶ月、俺は友人を作ることは諦めた。そんなある日、大学に向かう途中で土砂降りに遭った俺は、自転車の前に飛び出してきた子猫を避けようとして、植え込みに突っ込んだ。新しいシャツは泥だらけになって破れ、気に入っていた自転車も壊れたけれど、涙は出てこなかった。けれど、全身に響く痛みと、チェーンの外れた自転車を引きずりながら歩いていたとき、俺に傘を差しかけてくれた人がいた……。
★『猫の王様』の外伝ですが、本編未読でも大丈夫です。
九条くんの視点による猫の王様との出会い、定番イベントなど、日常エピソードの短編集です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる