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4章
異常事態
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「・・・おかしいな」
王都の入り口には誰もいない。事前にアカノ家から聞いた話では、兵士の検問があるはずなのだ。だからこそ、ギルドカードと共にアカノ家の身元安全証明書を受け取り、すんなり入れるよう手配してもらったと言うのに。
神様はそのまま入るが、もぬけの殻。王都はどこよりも賑やかであると聞いていたのだけど。でも仕方ないだろう。王都の露天は破壊されつくしていたのだから。
何かが侵入したのだろう。
「神様・・・」
「まさか、もう・・・早すぎる」
「神様・・・?」
何か心当たりが神様にはあるのだろうか。神様が緊張した表情で走り出す。するとすぐ騒ぐ声。神様は真っ直ぐとそこへ向かう。
「きゃあぁっ」
「た、助けてくれー!」
「足止めする!逃げろ!」
「くっ・・・攻撃が通らねぇ」
王都の中央だろう。アーカからも聞いた通りの噴水があった。すでに壊されているが。そこには、大きな毛深いうさぎのような耳をした怪物・・・魔物だろうか。興奮している様子で、額には赤と黒の混じったひし形の宝石が埋め込まれている。
「ラビラットだね」
「え?あれが?」
名前を聞いて驚く。だってラビラットという魔物はEランクの魔物。でも見るだけでもわかる戦い慣れている人だろう人たちが、束になっても止められないでいる。何より大きすぎる。
「あれは人間じゃ手に余る。ユージン、ここで待っていて」
「う、うん」
神様が俺を抱っこせず戦うなんて初めてじゃないだろうか?それだけあれは強いと言うこと?神様が僕を離さないといけないほどに。
神様が消えた。抱っこされてないからか、神様のスピードに目が追い付かないだけだ。
「ガァァァァ!!」
「な、なんだ?」
ラビラットが叫びながら傷つけられていく。どうやら誰も神様のしていることが見えてない。どうやって傷つけているかはわからないが、神様のことだから剣でもなんでもすぐ作れる。なんなら、素手さえも剣より鋭くできそうだ。
心配したが、大丈夫そうだと安心したとたん、ラビラットは逃げようとしたのだろう。俺に向かって来た。
「ユージン!逃げて!」
神様の声が聞こえた。焦った声だ。見えない速度で斬れるのに、ラビラットの走る勢いは止められないみたいだ。足がすくんで動かない。どうしたら・・・。
「にゃあぁぁっ!」
「ガァァァァ!?」
目の前に立つは猫、にゃあちゃんだ。
にゃあちゃんが氷の壁を作り、ラビラットは驚いて逃げ場所を変える。思わず腰が抜けた。
「にゃ?」
「ありが、とう、にゃあちゃん」
ラビラットには見えないが魔物が入ったということは今王都に結界はない。にゃあちゃんはだからこそここにいるんだろう。アカノ家と関わったあのときからしばらく見なかったけど、にゃあちゃんなりに俺と神様の二人目の友達が一緒に楽しめるよう気を遣っていたのかもしれない。次は紹介してあげなきゃななんて思う。
でも今は安心しきってる場合じゃない。確実に切り刻んでいるけど、神様がまだ倒せないのはさすがにおかしい。
「よくも、ユージンを!」
「ガァ・・・ウウッ」
神の怒り、だろうか。効いてはいる。けど、まだ倒れてない。一体あれはなんなんだ?
「これで終わりだよ」
神の領域にラビラットが閉じ込められ、狭くなっていく空間にラビラットは押し込められていき、潰された。ようやく、やっと神様が倒したのだ。弱まったからできたこと、最初のままだったら神の領域も破壊されたのだろうか。
「よっしゃあ!倒したぞ!」
「あいつ誰だ?」
「誰でもいいじゃねぇか!救世主だ!」
「シャァァッ」
ラビラットはいなくなって騒いでいるというのに、にゃあちゃんの様子が変だ。神様も声援を気にせず、俺の元に戻ってきて、抱っこをする。余裕がある証拠だと安心感が湧いてくる。でも顔つきは来た俺らが方向を見ていた。理由はすぐわかる。結界がなくなって魔物が侵入したのだ。次は普通の魔物。神様なら余裕だろう。
「にゃあ、よくやったね。もうひと踏ん張りだよ」
「にゃあ!」
「ま、魔物の大群だ!まだ終われねぇ!戦えるやつは戦い、ランクの低いやつは避難誘導!結界魔法ができるやつは入り口部分だけでもいい、できる範囲で結界をつくれ!」
にゃあちゃん久々でやる気満々だ。神様に声援を送っていた人たちも気づき、各自に動こうとする。結界とは作るのが大変なんだろう。王都全体に結界を張れと言わない辺り、街を囲む結界は相当な人数、もしくはかなりの実力者が必要なんだろうな。
2ヶ月近く、戦えない代わりに神様にたくさんのことを教えてもらい、考える力もつけた。だからといって、何ができるわけでもないけど。
入り口を塞ぐだけでも楽にはなる。気を付けるべきなのは空から来る魔物だけになるのだから。でも入り口こそ魔物の侵入経路、結界を張る間守らなくてはならないし、入り口まで魔物の大群が来る道を開ける必要もある。神様はどうするつもりだろう。
なんて思っていれば既に神様は走りだし、スキルをうまく使いながら魔物をひとりで片付けていく。そして、小さな手のひらの箱のような神の領域を少しずつ大きく広げ、王都に侵入する魔物だけを押し退けて神の領域で王都を包んだ。
これは結界よりも安全に違いない。にゃあちゃんももちろん神の領域内にいる。
ラビラットを倒した時は騒いだのに、この出来事には動こうとしていた人たちは立ち止まり、呆然としていた。ラビラットは神様も簡単には倒せなかったみたいだけど、普通の魔物相手なら神様は楽勝だ。
でもあのラビラットは一体・・・ふとラビラットの死体に目を向ければ宝石は消え、ラビラットはEランク用の通常モンスターに戻っていた。額にあった宝石のせいで神様は簡単に倒せなかったのだろうか。
「ユージン、ごめん。にゃあがいなきゃ守れなかった」
「きに、しないで」
あのラビラットは神様が簡単に倒せないなら神様にしか倒せない魔物だったんだ。その魔物を倒し、結果生きていたならそれでいい。
俺は守られてばかりだな・・・。逃げることもできないからこそ、神様を心配させてしまう。
「僕が守りたいんだ。早く、世界を直さないと・・・」
「神様・・・?」
焦りを見せる神様にまたひとつ不安の一滴が俺の心の中で積もった。
神様のやらなくちゃいけないことは世界をも巻き込むことなんだろうか?
王都の入り口には誰もいない。事前にアカノ家から聞いた話では、兵士の検問があるはずなのだ。だからこそ、ギルドカードと共にアカノ家の身元安全証明書を受け取り、すんなり入れるよう手配してもらったと言うのに。
神様はそのまま入るが、もぬけの殻。王都はどこよりも賑やかであると聞いていたのだけど。でも仕方ないだろう。王都の露天は破壊されつくしていたのだから。
何かが侵入したのだろう。
「神様・・・」
「まさか、もう・・・早すぎる」
「神様・・・?」
何か心当たりが神様にはあるのだろうか。神様が緊張した表情で走り出す。するとすぐ騒ぐ声。神様は真っ直ぐとそこへ向かう。
「きゃあぁっ」
「た、助けてくれー!」
「足止めする!逃げろ!」
「くっ・・・攻撃が通らねぇ」
王都の中央だろう。アーカからも聞いた通りの噴水があった。すでに壊されているが。そこには、大きな毛深いうさぎのような耳をした怪物・・・魔物だろうか。興奮している様子で、額には赤と黒の混じったひし形の宝石が埋め込まれている。
「ラビラットだね」
「え?あれが?」
名前を聞いて驚く。だってラビラットという魔物はEランクの魔物。でも見るだけでもわかる戦い慣れている人だろう人たちが、束になっても止められないでいる。何より大きすぎる。
「あれは人間じゃ手に余る。ユージン、ここで待っていて」
「う、うん」
神様が俺を抱っこせず戦うなんて初めてじゃないだろうか?それだけあれは強いと言うこと?神様が僕を離さないといけないほどに。
神様が消えた。抱っこされてないからか、神様のスピードに目が追い付かないだけだ。
「ガァァァァ!!」
「な、なんだ?」
ラビラットが叫びながら傷つけられていく。どうやら誰も神様のしていることが見えてない。どうやって傷つけているかはわからないが、神様のことだから剣でもなんでもすぐ作れる。なんなら、素手さえも剣より鋭くできそうだ。
心配したが、大丈夫そうだと安心したとたん、ラビラットは逃げようとしたのだろう。俺に向かって来た。
「ユージン!逃げて!」
神様の声が聞こえた。焦った声だ。見えない速度で斬れるのに、ラビラットの走る勢いは止められないみたいだ。足がすくんで動かない。どうしたら・・・。
「にゃあぁぁっ!」
「ガァァァァ!?」
目の前に立つは猫、にゃあちゃんだ。
にゃあちゃんが氷の壁を作り、ラビラットは驚いて逃げ場所を変える。思わず腰が抜けた。
「にゃ?」
「ありが、とう、にゃあちゃん」
ラビラットには見えないが魔物が入ったということは今王都に結界はない。にゃあちゃんはだからこそここにいるんだろう。アカノ家と関わったあのときからしばらく見なかったけど、にゃあちゃんなりに俺と神様の二人目の友達が一緒に楽しめるよう気を遣っていたのかもしれない。次は紹介してあげなきゃななんて思う。
でも今は安心しきってる場合じゃない。確実に切り刻んでいるけど、神様がまだ倒せないのはさすがにおかしい。
「よくも、ユージンを!」
「ガァ・・・ウウッ」
神の怒り、だろうか。効いてはいる。けど、まだ倒れてない。一体あれはなんなんだ?
「これで終わりだよ」
神の領域にラビラットが閉じ込められ、狭くなっていく空間にラビラットは押し込められていき、潰された。ようやく、やっと神様が倒したのだ。弱まったからできたこと、最初のままだったら神の領域も破壊されたのだろうか。
「よっしゃあ!倒したぞ!」
「あいつ誰だ?」
「誰でもいいじゃねぇか!救世主だ!」
「シャァァッ」
ラビラットはいなくなって騒いでいるというのに、にゃあちゃんの様子が変だ。神様も声援を気にせず、俺の元に戻ってきて、抱っこをする。余裕がある証拠だと安心感が湧いてくる。でも顔つきは来た俺らが方向を見ていた。理由はすぐわかる。結界がなくなって魔物が侵入したのだ。次は普通の魔物。神様なら余裕だろう。
「にゃあ、よくやったね。もうひと踏ん張りだよ」
「にゃあ!」
「ま、魔物の大群だ!まだ終われねぇ!戦えるやつは戦い、ランクの低いやつは避難誘導!結界魔法ができるやつは入り口部分だけでもいい、できる範囲で結界をつくれ!」
にゃあちゃん久々でやる気満々だ。神様に声援を送っていた人たちも気づき、各自に動こうとする。結界とは作るのが大変なんだろう。王都全体に結界を張れと言わない辺り、街を囲む結界は相当な人数、もしくはかなりの実力者が必要なんだろうな。
2ヶ月近く、戦えない代わりに神様にたくさんのことを教えてもらい、考える力もつけた。だからといって、何ができるわけでもないけど。
入り口を塞ぐだけでも楽にはなる。気を付けるべきなのは空から来る魔物だけになるのだから。でも入り口こそ魔物の侵入経路、結界を張る間守らなくてはならないし、入り口まで魔物の大群が来る道を開ける必要もある。神様はどうするつもりだろう。
なんて思っていれば既に神様は走りだし、スキルをうまく使いながら魔物をひとりで片付けていく。そして、小さな手のひらの箱のような神の領域を少しずつ大きく広げ、王都に侵入する魔物だけを押し退けて神の領域で王都を包んだ。
これは結界よりも安全に違いない。にゃあちゃんももちろん神の領域内にいる。
ラビラットを倒した時は騒いだのに、この出来事には動こうとしていた人たちは立ち止まり、呆然としていた。ラビラットは神様も簡単には倒せなかったみたいだけど、普通の魔物相手なら神様は楽勝だ。
でもあのラビラットは一体・・・ふとラビラットの死体に目を向ければ宝石は消え、ラビラットはEランク用の通常モンスターに戻っていた。額にあった宝石のせいで神様は簡単に倒せなかったのだろうか。
「ユージン、ごめん。にゃあがいなきゃ守れなかった」
「きに、しないで」
あのラビラットは神様が簡単に倒せないなら神様にしか倒せない魔物だったんだ。その魔物を倒し、結果生きていたならそれでいい。
俺は守られてばかりだな・・・。逃げることもできないからこそ、神様を心配させてしまう。
「僕が守りたいんだ。早く、世界を直さないと・・・」
「神様・・・?」
焦りを見せる神様にまたひとつ不安の一滴が俺の心の中で積もった。
神様のやらなくちゃいけないことは世界をも巻き込むことなんだろうか?
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