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3章

神様ぼっこぼこにします~決闘編~(神様視点)

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「面倒だなぁ」

思わず呟いたのは僕であり、自業自得とも言えるそれは決闘日開始前に出た言葉。宣伝は瞬く間に広まり、その数1000人を越えた。明らかにアカノ家を狙うつもりもなかった貴族すら交じっている。面倒事を増やした腹いせに神の運命操作を一緒に巻き込んでしまおうかとすら思う。まあ、自分で巻いた種なのでこの者たちくらいは見逃すつもりだ。

あまりやり過ぎるとこの世界全体を混乱させてしまう事態になる。それはそれで面倒だ。

「神様、だい、じょうぶ?」

ああ、ユージンが心配してくれている。それだけで1000人ずつ殲滅くらいできる。あ、殲滅はユージンが怖がるかな?

「大丈夫。簡単な方法はあるんだけど、さすがに卑怯だからね。闘うよ」

神の絶対命令で敗けを宣言しろと言えばそれでここにいる全員が負けを認める。子供でもできる簡単なゲームだ。

それがあればアカノ家の狙うものたちにアカノ家を狙わないよう絶対命令すればいい話だが、欲深い人間は矛先を変えるだけに過ぎない。だからこそ、醜い人間を落とすための運命操作であり、僕に怯えればいいと思う。

代理に相手させるような人間をどう怯えさせるか、そんなの勝った後、舞台から脅すだけ。簡単だ。

さあ、決闘が始まる。わからない人はすぐにわかるその意味が。

「記念すべき決闘、アカノ家の権利を守る守護者は代理人カミサマとユージン!そして、それに挑む第一人貴族はミリグラム家は代理人センチ、メートル!次の挑戦者はすぐに入れる準備を!では両者闘い、始め!」

どこかで聞いたことある名前が・・・気のせいかな?なんて思っていれば、先ほどの紹介された人物が突っ走ってくる。うん、動きとしてはいいだろう。動きはね。

「神の領域」

「ぐへっ」

「ぶへっ」

無様だ。透明の壁に二人が激突。動きはよくても所詮神の領域は破られない。ユージンを抱っこしているのに危険を犯す気はない。

「神の破壊」

「ぶ、武器が!」

「な、なんなんだ!?」

初戦は中々楽だ。相手がどちらも戦士。武器さえ破壊してしまえば戦えはしない。あ、もしかして素手ででも戦えるタイプかな?神の領域があるから意味ないだろうけど・・・いや。これじゃあ意味ないか。

「卑怯だぞ!」

「何をした!」

神に卑怯とは・・・いや、確かに人間相手に神の力は卑怯に写ってもおかしくはない。仕方ない、ユージンが怖がるかもしれないけど、戦うか。

「神の創造・・・はい、剣」

「え?」

「は?」

なくされた武器を返されて意味がわからないと言った表情だ。神の領域は解除した。自分の剣も出した後は力で勝つだけ。

「楽に勝っても意味ないことを思い出したんだよ。ほら、来なよ」

「はっなんだか知らねぇけど後悔すんなよ」

「ガキ抱えたままで怪我しても知らねぇぞ」

「君らなんてユージン抱えながらで十分」

「てめぇ・・・」

「舐めんな!」

どうやら怒らしたみたいだ。一撃でやってもいいけど、それじゃあ、また卑怯やらなんやらで意味がなさそうだ。人間に見える速度で、余裕さを見せた上で余裕に勝たなければ。

二人同時に来る。ユージンを片手で抱え、もう片手の剣で二つの剣をかわしたり、剣で受けたりしながらも、僕は最初の場所から動かない。でも守るばかりでもない。少しずつ二人に同じ場所に傷を作っていっている。

「なんで、当たらねぇ!」

「余裕こきやがって!」

そりゃ余裕だよ。僕から見たら君らの動き、スローだから。

「レベル1の僕に攻撃ひとつ当てられない君らが弱すぎるんだよ」

「は?レベル」

「1・・・?」

攻撃が弱まったところで、一気につく。容赦なく剣を刺す。周囲が怯えた様子を見せたのがわかる。二人が血だらけになって倒れれば、辺りはしーんとなる。

まあこれだけ刺されて、血だらけで倒れれば殺したと思うだろう。でも死んではいない。僕は開始前、ひそかに神の贈り物を使った。別にスキルなんて声を出す必要はないが、余計罠を使うなんて卑怯だと勘違いされるから口に出したまでだ。

神の僕が殺してしまっては1つ望みを叶える必要が出てくる。それは面倒だし、疲れる。だからこの決闘場の場に贈り物をした『この範囲で死人は出ない』そのための贈り物。この範囲内ではいくら死に至る攻撃でも死ねない。かと言って傷も痛みもなくなるわけじゃないからある意味生き地獄。

「神の治癒」

すぐ刺し傷は消える。流れ出た血も元通り。でも痛みと恐怖で気絶している様子だ。

「生きてるから確認して次だよ。」

「は、はい!」

審判が慌てたように確認しにくる。

「い、生きてます!勝者カミサマ、ユージン!敗者が退き次第、次の挑戦者はすぐ出てきてください。」

気絶した二人を運びに、アカノ家の使用人が協力しあって退ける。次の挑戦者も特に先ほどと代わりない強さ。あの二人の実力を知っていながらも、貴族に逆らえなかったのだろう。既に涙目だ。

決闘の合図で、相手が泣きながら叫んで向かってくる。なんとも隙だらけ。可哀想にも思えたので剣を指で止め、横腹を斬る前に気絶したので寸止め。さすがにそれくらいの慈悲はある。

そんなのが続いて一方的な闘い。代理を出して負けた貴族はご立腹で負けた者を罵る。帰ったら貴族に戻れないことも知らずに。

そんなに罵って恨みで復讐でもされて殺されても知らないよ?そこは相手の運次第ではあるけど。

何百と連戦をし、周囲があっと驚く声。なるほど、連戦で相手にしてきた強さとは違う圧倒的な人で有名なようだ。

「実力はあるようだけど、SSSランクの俺たちにゃあ勝てねぇよ」

「余裕な表情も終わりです」

最上級ランクが出るとは、一体いくら積んだのか。でもこれで勝てば諦める貴族が増えるかもしれない。正直飽きてきたんだよね。

開始と同時に二人が容赦なく来る。両者共僕が抱えるユージンを狙う。

「子供でも容赦しないぜ?」

「二人タッグ、ひとりになれば参加は不可です」

なるほど、あくまでユージンを狙う気か。今までで一番許せない。

「神様・・・」

さすがに連戦でも今だ怖がるユージンをさらに怖がらせるなんて・・・いや、僕のせいでもあるけど、余計に怖がらせるのが許せない。

「ユージン狙ったこと後悔するといい」

そこからは容赦ない。同じ場所から動かなかった僕から動くことで周囲の声が上がる。二人は慌てることなく剣を構えるが、僕から見れば隙だらけ。二人の足を狙う。

「ぐっ」

「やられました・・・っ」

片足の神経を切ったため、二人はもうその場から動けない。周囲の恐怖心が渦巻く。それはそうだろう。僕はユージンを怖がらせた二人に怒っているのだから。

「せめてユージンを狙わなければ職を失わなかったのにね?」

「「ぎゃああぁぁっ」」

もう片方の神経も切り、他の者たちと同じように刺す、刺す、刺す・・・SSSなだけあって一番意識の保ちが長かったけど、血の出しすぎか失神。

「神の治癒」

傷は癒すが、足は治さない。逆恨みされても足があれじゃあ無理だろう。

しかし、SSSランクすら倒した僕に周囲の視線が余計に怯えた視線になってしまったようだ。ユージンはほっとした表情。ああ、可愛いなぁ。

それからは簡単だった。何故なら降参する者が相次いだからだ。貴族にそれでもと言われ出るには出るがすぐ降参。僕を相手にするくらいなら貴族に怒りを買う方がマシということ。

今だに返り血すら浴びない僕に勝てるはずないと諦めて帰る貴族もいる。決闘は特に闘うこともなく終わり、その後『子連れの悪魔』として僕の名は広まった。

子はユージンだろうけど、僕の子じゃないし、僕は悪魔じゃなく神だ。このネーミングセンス誰?と納得はいかないけど、広まったものはどうでもいい。

ちなみに決闘後没落した貴族が大多数いたことで『悪魔の決闘』と歴史に残ってしまう結果にもなった。ここまで大事にするつもりはなかったのだけど。

しかし、意外にも決闘終了後、僕を勧誘するようなバカな貴族はいなかったので、奴隷になる運命操作をする必要もなくなったので、ユージンを狙ったあの二人組とそれを雇った貴族をその運命操作にしてあげた。

別にもう怒ってない。怒ってないよ?許せないだけで。

そんな色々なことがあった間、僕らはアカノ家に滞在し、アーカも参加する形で、ランクを一気にあげていくのだった。
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