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2章

スライムの大群と合体ボス

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「スライム発見だ!」

「こっちにもいるわ!」

「あちらにもいます」

「これは・・・囲まれてないか?」

これが神様の友達テレパシーで言っていたおまけだろうか?俺たちは大量のスライムによって囲まれていた。どう見ても初心者向けには思えない。俺が思うだけで初心者向けなんだろうか?

「尋常なスライムの大群・・・初心者には荷が思いです。初心者の森でこんなことあった試しが・・・」

「俺たちなら大丈夫だ!一斉にやるぞ!お前らも運が悪いな、助けてほしいか?」

「いや、君たちを見てるよ」

(せっかくだから神の創造、神の領域の合わせ技と行こうか)

合わせ技?一体どんな・・・

「よし、完成。椅子とテーブルとお茶、お菓子も用意しよう。好きなのを食べるといいよ、ユージン」

「???」

完成と言われても何も見えない。後々の言葉で、椅子とテーブルがひとつずつ出現し、紅茶やジュース、色んなお菓子がテーブルの上で溢れる。スライムの大群が押し寄せるのも気にせず、神様は俺を抱っこしたまま椅子に座り、俺の向きを変えて膝の上に乗せる。

美味しそうだけど、スライムが俺たちも襲おうと・・・あれ?

スライムは何か透明な壁にでも阻まれるようにして、一定の距離から体当たりを繰り返すも、俺と神様に近づけないようだ。

「僕たちは神の創造で作った透明なガラスの箱にいるみたいなものだ。そこに神の領域を纏わせることで僕の許可なしには誰も入れない空間になっている。防音にもできるし、視界も閉ざせるけど、あのパーティを見学の名目で来てるから、透明にさせてもらった。声も届く。こちらの声は僕の意思なく聞こえないけどね?」

「どういう魔法よ!」

「腹の立つ魔法だな!」

言いたいことはわかるかも。必死に減っている様子のないスライムと戦っているのに、俺たちは優雅にお茶会をしているわけだし。貴族のミリグラムさんからすれば余計腹が立つのかも。俺たち貴族でもないくせにって。うん、チョコレートもメロンソーダも美味しい。あの世界じゃ羨むだけで食べられなかったから、まさか異世界で食べられるなんて。

「僕は神様だから、なんでも生み出せる。これもユージンの記憶から作ったものだよ」

ケーキに、コーラに、スナック菓子に、オレンジジュース、一口ずつ味見して、戦いの場にいることを忘れてしまいそうなくらい口もお腹も満たされる。

「半熟の、オムライス」

オムライスは食べたことがある。けど、俺のだけ嫌がらせのように焼きすぎた卵の部分とべちょべちょなチキンライス。たまたま遠目で見たテレビの半熟オムライスを俺はいつか食べたくて仕方がなかった。

「好きなだけ食べるといいよ」

神様が、テーブルに手を翳せばお菓子は消え、夢にまで見た、テレビで見たままの半熟オムライス。スプーンをとって一口。もう、美味しすぎて思わず神様を見た。

「お、い・・・しい!」

「食べたい時はいつでも言って」

「うん」

ぱくぱくと食べるも、子供の身体だからか、前世でも食が細いせいか、お菓子を食べたせいもあって、半分でお腹がいっぱいになった。でもとても満ち足りた気分だ。
このまま寝てしまいそうなくらいに。

「くそ!減らない!どんだけいるんだ!」

その言葉に、すっかりここが魔物のいる森であることを忘れていた。

「うるさかったね。寝てもいいよ?」

「いい・・・」

一度気になると眠れない。神様の傍は安心できるけれど。

「ちょっと少しぐらい手伝いなさいよ!もうMPが!」

「助けてくれ!と言っても助けないと言ったのはそちらのリーダーだよ」

「手伝えと言ってるんだ!助けてくれとは言ってねぇ!」

ただの屁理屈だ。レベルがいくつかは知らないけど、減らない大群のスライムは助けを求めたくなるほど厄介なんだろう。

「素直に助けを求めればいいのに。まあ、助けないけど」

神様が最後の言葉に笑みを浮かべたとたん、大群のスライムが一匹のスライムに集まり、巨大化していく。

「これは、メガスライム!?」

メガスライム?大きいから?手生えてるけど。

「スライムには進化形態で、スライム、デカスライム、メガスライムとある。ユージンが思った手は触手で、いくつでも出せるから触手による攻撃で本体に中々近づけない上に物理は効きづらい。ランクはSの魔物だよ。Aにしてあげようと思ったけど一々勘に障る人たちだったから」

あの人たちどうするんだろう?

「ちょっとミリグラムさん、グラド前に出れないの!?」

「無茶言うな!寧ろ魔法で本体攻撃しろ!」

「触手を避けるので精一杯だ」

「一撃が重くてシールドもすぐ壊されます。」

「意外にがんばるなぁ」

向こうは必死だろうに、神様は余裕だ。まあ、触手がここまで来ても神の領域で弾かれるから確かに俺も怖くはない。

「背を向ければやられる・・・くそっ」

なるほど触手の多さで逃げる余裕もないのか。神様死なすつもりまではないみたいだけど、いつ助けるんだろう?

「きゃあっ」

「ユラさん!シールド!ヒール!シールド!シールド!シールド・・・っ」

「なんで追いかけてくるのよ!」

触手がユラさんを殴り付け、そのまま叩き潰そうとしたもののエナさんが間一髪シールドで塞ぎ、回復魔法をかける。だが、触手も執拗にユラさんを追い回し、触手を避けられないユラさんはエナさんによるシールドが命綱。

騎士、戦士の二人はユラを守る余裕なく他の触手を防ぐだけ。

「そろそろMP切れだね」

「もう、だめ・・・っう」

MPを使いきっただろうエナさんにもうシールドを作る余裕はないようだ。狙うかのようにユラさんを追いかける触手とは別の触手がエナさんに向かってエナさんを殴り付ける。その一撃でエナさんは気絶したようだ。

「エナっ!あ・・・ぐっ」

ユラさんはさらに酷く、触手が刃のようになり、お腹を突き抜ける。当然意識を失い、死んだのか生きているのかわからないが、触手が離れ倒れるユラさん。

「く、くそ!グラド、任せる!」

「なっ!ミリグラム殿!?」

リーダーがまさかの戦線離脱。神様を見れば呆れた表情。これはだめだ。貴族とかじゃなく、人として。

「た、助けてくれ!俺もその中に入れてくれ!俺は貴族なんだ!助けたら褒美をやろう!だから、な?平民は貴族に従えー!」

「醜いな」

あ、グラドさんが気絶した。さすがにもう放置するわけには行かないと思うけど・・・。

「神様、しん、じゃう」

「・・・いいこと考えた」

神様、顔が悪どいよ?

「ななな、出してくれー!」

「入れてくれと言ったのは貴族様だよね?従ったのに褒美もらえないみたいだし、従う義理もないよね」

「な、なんで、出れない!いやだ、死にたくない!」

神様がとった行動は狭い空間の神の領域にミリグラムさんとメガスライムを閉じ込めてしまうこと。確かにミリグラムさんに従ったわけだ。おまけもつけて。

気絶したもの、血を流す者の三人は神様の神の治癒で回復され、傷もなくなっていった。神様は満足そうだ。結局、最後まで神様は俺を離さなかった。

神様は片手で俺を抱き、もう片手で手を翳せばスキルを使えるようだ。神様いわく、神様だからスキルを使わずともできることだけど、スキルとして使うと負担が少ないらしい。さらにスキル使用後の若干な疲れは、俺で回復できるので、いくらでも使える。

俺は特に疲れは感じない。スキル使用は、神様本来の力を使うよりマシでも、疲れはあると神様は言うけども。

「称号効果かもしれないね」

「称号、効果?」

「僕の称号でユージンを回復させているか、疲れさせない効果があるのかもしれない。ユージン自身の称号での効果の可能性もあるけど」

「あの、助けていただいてありがとうございます」

「礼を言う」

「ろくでもないリーダーにお仕置きしてくれているみたいだし、感謝しかないわ」

「出してくれー!」

狭い空間でメガスライムと戦うのは辛いだろう。逃げ場が狭まり、避けるのも一苦労。神様が言うには騎士だから防御面に優れている分、当分は大丈夫らしい。

「仲間を守る立場にある騎士が仲間を置いて逃げ出すのには呆れた。こんなパーティに入りたいとは思わないな」

「でもミリグラムさんはしつこいですよ」

「さすがに懲りるでしょ」

「貴族で少しイケメンだからって威張る報いよ!」

「あまり調子に乗らないでね。ユージンをバカにした君が僕は嫌いだから」

「あ、えっと・・・申し訳ありません」

「気に、しない、よ」

ユラさんがしおらしくなっちゃった。あの神の領域に同じように閉じ込められると思ったのかな?神様ならしそうだ。

「だずげでぇー!」

イケメン?が台無しになるくらいの泣き顔と立派な装備服はボロボロになり、メガスライムはまだまだ余裕そうで、神様は飽きてきたと一言もらし、神の領域をなくしたようで、いきなりなくなった壁に無様に転けるミリグラムさん。

メガスライムが来ると他三人は顔をひきつらせるが、神様は余裕の表情で、俺をまた片手で抱き直し、もう片方の手をあげて振り下ろす。

「神の鉄槌」

小さく呟いた言葉で、大きなハンマーのようなものがメガスライム本体を叩き潰し、メガスライムは戦闘不能になり、どうゆう仕組みかメガスライムが消え、宝箱が出現する。

「メガスライムの宝箱!」

メガスライムが消えた安心感もあるのか、興奮したようにユラさんが宝箱に目を輝かす。

「僕が倒したんだからあげないよ?パーティ登録もしてないし」

「そんな!」

当たり前だと思う。だってただ攻撃を避けるか、塞ぐだけでこの人たちは精一杯だったわけだし。何を驚いているんだろう。

「メガスライムを倒した攻撃受けたいなら構わないけど」

「ユラ、今回は諦めろ」

「命が助かっただけよかったのですから」

「死にかけただけなんて・・・!」

「ヴぅ・・・っ」

神様の脅しに逆らえるわけもなく、相変わらず騎士ミリグラムさんはあまりの恐怖に目から鼻から色々垂れ流している。

「さて何が入ってるかな」

ペシンと宝箱を神様が叩けば簡単に開いた宝箱。中には・・・猫?

「にゃあ」

「幻獣の神からの贈り物かな」

「魔物は神様が生み出したんだよね?」

「宝箱までは設定してなかったから」

宝箱にも設定があるんだ・・・。

「か、可愛い・・・ほら、おいで~」

「シャアァァッ」

「きゃあぁっ!」

「ユラ!」

え、槍が空から降って・・・?

「自分より格下の癖に生意気なってとこかな」

「か、格下!?」

「レベル1の初心者でも倒せるメガスライム倒せなかったんだから格下でしょ」

「にゃっ」

猫が頷いた気がする。意思疏通できてるのかな。

「レベル1だと?」

「初心者ならレベル1からの始まりですからおかしくはありませんが、あの強さでですか?」

神様だからレベル1でも最強なんだよ。・・・言葉には出ないけど。

「答える義務はないね。猫、君名前は」

「にゃあ」

「にゃあ、ね。行こうか、にゃあ、ユージン」

神様、猫だからにゃあか、威嚇のシャアァァッしか言えないと思う。わざと?

(名前なんてなんでもいいよ)

神様名前決める時もそうだけど、結構適当。

「よろしく、にゃあちゃん」

「にゃ!」

よかった。格下だけど、威嚇されないみたい。

(僕と友達な時点で格下とかないから)

そういうものなのか。友達ってまだまだ奥が深いと思いながら神様の走りで気がつけばギルドの店前。日は既に夕暮れだったので、神様がいつ集めていたのか、スライム討伐で手に入るアイテムをギルドに換金し、そのお金で近くの宿屋に泊まることになった。

その頃、初心者の森では

「スライム討伐アイテムがないだと!?依頼達成できないじゃないか!」

泣き止んで本調子になった騎士と

「Bランクのパーティがスライム討伐依頼に一日かけるとか笑い種よね」

このパーティは終わりだと理解しつつある三人の暗い表情。

なんとか必要討伐し、アイテムも拾ってギルドに報告、換金するも、初心者でもないパーティでスライム討伐に1日かけた弱小パーティとしてそのパーティ名が世に広まったことを俺と神様は知らない。
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