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10~死神視点~

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死神とは死を司る神であり、人も動物も、植物も生命の宿るすべての命をどう扱おうが許される存在。時に気まぐれに命を奪えばそれを悲しむ姿やざまぁみろと笑う姿の人間を眺め、気まぐれに命を救ってみれば奇跡だと喜ぶ姿や死ねばよかったのにと悔しがる姿の人間がいる。

何百年、何千年と繰り返せばそれも飽きてくるものの、することもないためその日も気まぐれに熱で死にかけていた子供の命を救った。

「おにいさん、だれ……?」

そして熱が無事下がり、命の危機を脱したとも知らない子供が俺に話しかけたために、俺は久々に驚くという感情を得る。

本来死神は生きた人間に見えることはない。死にかけの人間が稀に見えることはあれど。しかし、理由はすぐにわかる。俺が助けたにも関わらず既に助けた命は時間があるとはいえ死にかけの命となっているせいだった。それもそのはず子供の魂はすでに死ねば転生も厳しいほどに弱りきっていたせいだ。

魂なくして転生は叶わない。この子供は今世が本当に人生の最後であり、魂がここまで弱るということは今までの転生に幸福を得られなかったということ。幸福を得すぎても魂が破裂しかねないが、幸福を得ないのは魂にエネルギーが行き届かないことを意味する。

さらに不幸は魂を削りとるもの。本来なら幸福を得すぎて破裂しかかる魂を助けるための機能。しかし、それが不幸だけとなると削られるばかり。結果、転生するために必要な魂のエネルギーがなくなるわけである。

さらに言えば魂が弱りすぎれば命を削ってエネルギーを得ようとするため、魂がなくなるまでなんとか転生しても早死にをする結果になるだけ。だが、本来そんな魂が弱まることは滅多にない。

『俺は死神だ』

だからこそその子供は俺の退屈しのぎにいいと観察対象になった。まさかだんだんとその子供に情が生まれて、他の命や魂のエネルギーを使ってまでその子供を生かそうとするなんてその時は思いもせずに。

死神だからこそできる荒業。しかし、日に日に子供は成長はするものの、成長すればするほどに死人しびとに近づいていった。

無理に魂に他人のエネルギーを注入し、死神の力だけでは足りない部分を他の命で代用するがために死神としてできる命の使い方を遥かに越えた行いのせいで子供の身体の方が限界を迎えたのだ。

それでも動き、自身を保つのは死にながらも命があるから。俺が集めた命がいくつも。それでもその子供の命を危うくする存在は消しておかないといけないくらいには危ぶまれる存在。普通に暮らす分には問題ない。

だが、本来なら命を奪いかねないものは魂のダメージ消費が激しく下手をすれば一瞬にしてこの世から消えてもおかしくない。身体だけを残して。

どれだけエネルギーを魂に注いでも、今の命の消費がやわらぐだけで、この子供に転生ができないことに変わりはない。転生は他人のエネルギーではできるものではないから。

だからこそ例え、子供が今更ながらに恐怖を覚えようとも死なせる気はない。もし自殺なんてものを考えようなら自殺に耐えられるほどの魂と命を先に用意するまで。

俺は死神であり、命に関する未来は特に鮮明にわかるのだから。

ああ、次にこの子供が死ぬ時期にまで誰の魂と命を奪うか愚か者を吟味しなくては。綺麗な魂はエネルギーとして極上だからこの子供にうるさくする刑事とやらでもいいだろう。

俺はこの執着が死神を司るものとしてよくないと知りながらももはやその執着を取り除けそうにはない。あの日、あの子供を助けるために勝手に身体が動いて子供の母を魂ごと無意識に殺して消した日から俺はもう手遅れなのだ。
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