上 下
10 / 11

10

しおりを挟む
「さて、変態王子の心はともかく、リーナ様……殿下と婚約するのはいかがですか?」

「え?イーサ様?」

愛を通した私に感動したと言ってタース様を諦めたイーサ様の突然の言葉にぽかんとする私。いや、まあ、実際はタース様のことが大嫌いだったという発言もありましたが。

「まあ突然言われても困惑するでしょう。まずタース様のいいところは身体が異常に丈夫の一点だけです」

「いや、もう少し何かあるだろう!?」

きっぱり言い放つイーサ様に、タース様が聞き捨てならないとばかりに反論する。

「………?言葉の通じる人間であるということでしょうか?」

「もっと!他に!ないのか!」

「うるさいですわ」

「ぎゃあああああっ」

「あら、足が滑りました」

喚くタース様の足を踏んづけるイーサ様は足が滑ったと言いながらぐりぐりと踏む。確かその足は私が折った……タース様大丈夫かしら?

助けに入りたいが手錠に足枷をされた私が入ればより酷くなりそうな結果に邪魔できない。

「ふむ、中々君も私の性癖を刺激……」

「さて、リーナ様先程の話の続きですが」

「あ、はい」

殿下の言葉にすぐ反応して痛がるタース様の足から足をどけたイーサ様。なんだかさっきからだんだんイーサ様の本性が出てきたように思えるのは私だけでしょうか……?もはや私は逆らえる気がしません。

「タース様に比べ、殿下は変態の中の変態ですが、変態だからこそリーナ様のコンプレックスにもなりうる拳も喜んで受ける包容力があります。変態ならではの。殿下ならこんな人前で婚約破棄というクズな選択はなさらないでしょう」

「うぐ……っ」

足の痛みか、精神的な意味か、ぴくぴくとひそかに動くタース様から何かが突き刺さったような声があがる。

「それに殿下は変態と知れましたが、普段は完璧な方なのは誰もが知ってます。私は常々完璧な人間はいないと疑っていましたが変態と知れた今納得しました。変態ですが、タース様みたいな侯爵という身分でありながら欠点だらけな人間よりよっぽどいい優良な物件ですよ」

「がは……っ」

イーサ様の言葉の所々にタース様をつつくような言葉に、ついにタース様が血を吐く。まあ、タース様が血を吐くのは今日に限ったことではないので大丈夫でしょう。

それよりもイーサ様、変態を連呼しすぎて他の言葉が頭に入りづらいし、最後は殿下は物扱い……!命は惜しくないんですか!どう考えても不敬きまわりない!

「私を物扱い……ふふ、中々にいいね……。やはり割って入ったかいがあった」

あ、大丈夫そうです。寧ろ喜んでます。………ここまで来てそれなら私じゃなくてもお似合いなんじゃないですかね?お二人とも。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢が聖女になってもおかしくはないでしょう?~えーと?誰が聖女に間違いないんでしたっけ?にやにや~

荷居人(にいと)
恋愛
「お前みたいなのが聖女なはずがない!お前とは婚約破棄だ!聖女は神の声を聞いたリアンに違いない!」 自信満々に言ってのけたこの国の王子様はまだ聖女が決まる一週間前に私と婚約破棄されました。リアンとやらをいじめたからと。 私は正しいことをしただけですから罪を認めるものですか。そう言っていたら檻に入れられて聖女が決まる神様からの認定式の日が過ぎれば処刑だなんて随分陛下が外交で不在だからとやりたい放題。 でもね、残念。私聖女に選ばれちゃいました。復縁なんてバカなこと許しませんからね? 最近の聖女婚約破棄ブームにのっかりました。 婚約破棄シリーズ記念すべき第一段!只今第五弾まで完結!婚約破棄シリーズは荷居人タグでまとめておりますので荷居人ファン様、荷居人ファンなりかけ様、荷居人ファン……かもしれない?様は是非シリーズ全て読んでいただければと思います!

婚約破棄されているん……ですよね?

荷居人(にいと)
恋愛
「キサマトハコンヤクハキダ」 「え?」 これは卒業パーティーの日に婚約者によって叫ばれた棒読みの何かだった。棒読みすぎて内容が頭に入らないのは後にも先にもこの時だけだろう。 「ふん!ショックか?ショックだろう!だ、ダガ、コンヤクハキハケッテイジコウダ」 「申し訳ありませんがもう一回お願いします!」 「もう一回……だと!?」 「内容が頭に入らなかったので」 「し、仕方ない後一回だけだぞ!キサマトハコンヤクハキダ!」 「そう、ですか」 やはり肝心なとこだけ何度聞いても棒読み。大変なことのはずなのに棒読みが気になりすぎてまともに話せるか心配です。 作者の息抜き作品です。機種変もして最近全く書いてないので練習作品でもあります。 ふっと笑えるような作品を今回目指します。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

【短編完結】婚約破棄なら私の呪いを解いてからにしてください

未知香
恋愛
婚約破棄を告げられたミレーナは、冷静にそれを受け入れた。 「ただ、正式な婚約破棄は呪いを解いてからにしてもらえますか」 婚約破棄から始まる自由と新たな恋の予感を手に入れる話。 全4話で短いお話です!

【完結】極妻の悪役令嬢転生~あんたに払う安い命はひとつもないよ~

荷居人(にいと)
恋愛
「へぇ、それで悪役令嬢ってなんだい?」 「もうお母さん!話がさっきからループしてるんだけど!?」 「仕方ないだろう。げーむ?とやらがよくわからないんだから」 組同士の抗争に巻き込まれ、娘ともども亡くなったかと思えば違う人物として生まれ変わった私。しかも前世の娘が私の母になるんだから世の中何があるかわからないってもんだ。 娘が……ああ、今は母なわけだが、ここはおとめげぇむ?の世界で私は悪いやつらしい。ストーリー通り進めば処刑ということだけは理解したけど、私は私の道を進むだけさ。 けど、最高の夫がいた私に、この世界の婚約者はあまりにも気が合わないようだ。 「貴様とは婚約破棄だ!」 とはいえ娘の言う通り、本当に破棄されちまうとは。死ぬ覚悟はいつだってできているけど、こんな若造のために死ぬ安い命ではないよ。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!

ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。 気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。

処理中です...