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心の準備だとか緊張とかが邪魔して眠れないものだとばかり思っていたのに、いざ兄と寝ると驚くほどによく眠れた。

寧ろ一人寝のときより眠ったし、不思議と身体も軽い気がする。人と一緒に寝るのって案外身体にもよかったりするんだろうか?

「目が覚めたか?」

「あ……兄上、おはようございます」

既に日は昇っているので朝なのは確実。兄が起きていてもおかしくはない。ただよく眠れたことに驚いていて兄が起きているかどうか確認もせずに思考を巡らせていたようだ。

「おはよう。………はぁ、それにしてもフィーネは抱き心地がいいな」

よく寝れた。よく寝れはしたが、改めて強く抱き締められれば緊張してしまうのは仕方ない。もしかしたら昨日は疲れていてあまり気にならなかったのかもしれないとすら思い始めるくらいには、兄に抱き締められることに慣れたわけではなさそうだ。

嫌なわけでもないけど……。

「あ、兄上、僕お腹空いたなあ……?」

でもやっぱり気恥ずかしくてついこの空間から抜け出したくなる。落ち着くためにも。

まあ、起きてすぐお腹が空いているのは嘘じゃないし……。

「まあ、もう昼だしな」

「え、昼?」

「フィーネ、よく眠っていたからな」

「そ、そんなに………?」

さすがに驚きが過ぎた。まさか昼まで寝ていたなんて………。外が明るいとはいえ、ちょっと遅い朝とくらいしか……。

「疲れていたんだろう。動き回ったからな」

「動き………回った………?」

確かに疲れていたかもとは思うものの動き回るほど自分で動いた記憶がない。ご飯もお風呂も全部兄が世話を焼いて僕は口を動かしたくらいじゃ……?

…………あれ、僕、全然動いてないな?

まあ、多分、兄との変化に疲れたのはあるかもしれない。身体的ではなく、精神的に。

うん、そう考えれば疲れた原因はありすぎるぐらいにあるというものだ。

そう思うと納得もできる。寝る前のことをよく覚えてないことが。多分色々な変化についていけないことに疲れて、そのまま寝ちゃったんだろうなと。

「今日も色々回ることになるだろうから疲れたら言うといい」

色々また思考の海に呑まれていると、兄から意外な言葉が。もしかして今日は兄に抱えられながらの移動はないのかもしれないと思わせる言葉だったのだ。

「今日は自分で動いていいの?」

「ああ、俺が抱えるから好きなとこに行けばいい」

「えっと……?」

おかしいな。僕にはまるで僕が兄を連れ回せと遠回しに言われているように感じるぞ……?

「フィーネは俺を好きに使えるからな」

「いや、あの、兄上?」

兄としてもだけど皇帝を使うだなんてさすがに荷が重すぎやしないだろうか?冗談……だよね?
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