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「シャドウ、これからは俺がフィーネの面倒を見る」

「かしこまりました。私では力不足でしたこと申し訳ありません」

「シャドウは何も……」

「いえ、殿下を危ない目に合わせたのは、私が目を離したばかりに起こったことですから」

焦りすぎていたことを度々実感する。もし僕が死んだらシャドウすらも責任に問われる可能性を僕は忘れていた。なのにシャドウは僕を責めはしない。立場上仕方ないとはいえ、僕が悪いのは確かなのに。

「フィーネが気にすることはない。シャドウの責任と言いたいが、そもそもシャドウ以外に任せられる者がいない無能たちが悪い。シャドウはただでさえ仕事が多いというのに」

「……そんなことは」

まさかのあらぬ方向への責任転換。シャドウが間を空けて否定はしているけど、気のせいか兄に少し呆れている様子が……。あ、仕事………兄が増やしているのか。つい察してしまった。

シャドウが兄の信頼をそれだけされているということだけど……これに関しては一度目も同じだ。ただ、兄が人を無能扱いしてシャドウばかりに仕事を割り振るのは変化と言えるだろう。

一度目はもっと色んな人を従えていたような……。でもそもそも一度目は僕に冷たかったし、僕の知らないところでは人に厳しかったのかもしれない。

「まあ、責任の話はいい。フィーネは無事だったからな。まず、面倒を見るにあたって療養の場所を変える」

なんとなくそうなるだろうとは思っていた。また同じようなことをするつもりはなくとも兄が信じるとも思えないし………。1階に、移される……とか?

「寝室は俺の部屋だ」

「皇帝陛下の部屋、ですか………?」

「あ、兄上、さすがにそれは………」

まさかの兄の部屋。それは場所が場所だけに許されるものではない。何よりそうなると兄はどこで寝るというのか。シャドウも難しい顔をしているし……。

「別に俺が移動するわけじゃない。フィーネと一緒にベッドを使うつもりだ。二人でも問題ない大きさだろう」

「兄上と一緒に寝るんですか?ぼ、僕が?」

そ、そんなこと一度目で一回も経験がない。そもそもここまで会話することすらほぼなかったのに一緒に寝る?だって一緒のベッドってそういうこと……だよね……?

「そういうことだ。フィーネ以外を隣に寝かせる気はない」

いや、そういう問題じゃない。僕の気持ちの問題だ。嫌ではないけど、嫌ではないんだけど……!

「ご兄弟とはいえ、お二人は成人しております。周りがどう思うか………」

「言わせておけ。そんな噂をする暇があるならたんまりある仕事をやるよう言えばいい。結婚もする気はないと言ってるから何の問題もないだろう」

「兄上は結婚、しないんですか……」

ふと、結婚という言葉に気を取られる。だって兄は結婚に反対するようなこと一度目は……。

いや、そもそも兄は、一度目との違いがありすぎる気がするのは僕の気のせい………?

そんなはずはないか……僕をここまで気にかける時点で。どうにもあまりの変わりように逃げる気はもうなくとも、気持ちがまだ追い付いてないみたいだ。

せめて少しずつ変化してくれたなら……。一体何が兄をここまで変えたのか。聞けばいいんだろうけど、なんとなく聞くタイミングというか、聞いていいものか迷いがある。

「しない。それと先程からその話し方はなんだ?もっと砕けた話し方でいい。その話し方は気に入らん」

「けど、兄上は……」 

「皇帝として命令をしてでもその話し方をするつもりか」

「兄上が、そういうなら………」

やっぱりおかしい。言葉遣いを気にするような人ではなかったけれど、命令してまで強制するような人じゃなかったから。

「それでいい。それと、今からフィーネは俺から離れられないと思え」

「え?」

「皇帝陛下、それはどういう……」

まさかそのままの意味だということを、今の僕とシャドウは理解できるはずもなかった。
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