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「さて、誤解が解けたところで改めて私の妹との婚約破棄についてですが」

調子に乗り出したミニ殿下を咎めることなくさらに話を巻き戻そうとするお兄様に、今更何をと思う。しかし、それを見極める前に調子を取り戻したミニ殿下はあろうことかお兄様の会話を無視してルルー様とルーン様に近づいて見比べる。

「どちらがルルーだ?」

「……私です」

確かに鏡のように似た二人とはいえ、失礼な発言をするミニ殿下にルルー様は返事をしつつも嫌がる表情を隠さない。まあ、失礼な発言以前に近寄られるのが嫌なようだけど……。

「ではルルー改めて私と」

「お断りします」

「こん……」

「お断りします」

「婚約をして……っ」

「お断りします」

「けっこ……」

「死んでも嫌です」

もはや聞きたくもないとばかりに断りを入れる辺り、あの兄あっての妹という感じがする。それでも最後まで言おうとするミニ殿下の度胸はある意味すごい。……涙目だけど。

「そ、そんなに嫌がらなくても……」

「嫌です。殿下と婚約するくらいなら兄と一緒に不敬罪で処罰を受ける覚悟です」

「そこまでか!?」

まあ兄に入れ替わりを頼む時点でよっぽどストレス溜めていたのはわかるけど、そこまでの覚悟があるのはヒロインのなせる技だろうか?ルーン様はヒロインの身内故にその恩恵にあやかったみたいな……恩恵……恩恵かなぁ……?

「しかし、先程は君の兄君の暴行を庇っていましたよね?」

なんて考えていればミニ殿下に無視されたことを然程気にしてないのか……いや、すごく気にしてるのがわかるくらいに笑いながら青筋立てているお兄様が何故かミニ殿下をフォローする物言い。

「ち……っ」

余計なことをとばかりに舌打ちしたのはルルー様。もはやヒロインの表情でもなければ態度でもない。

「そうなのか!なんだ、照れていたのだな!」

だが、恋は盲目というべきか。ミニ殿下の頭のネジが色々とあった屈辱のせいで数本抜けてしまったのかルルー様の舌打ちや表情、態度を気にすることなく機嫌よく自分のいいように解釈する。こんなのが未来の王だなんて私の処刑よりも世界の終わりを気にするべきかもしれない。

「何故……そうなるんですかね?殿下、あなたは身分だけの女ってどう思われますか?」

ルルー様は調子づくミニ殿下に苛立ちを隠せないとばかりにお兄様に負けずとこめかみに青筋を立てながらミニ殿下に問う。

「身分だけの女は見ていられないな。貴族の生まれならばそれなりのことはしてもらわねば」

「へぇ、そうですか。なら殿下は何をなされてるんですか?」

「わ、私は勉強や……」

「へぇ、勉強……殿下はテストの順位は毎回下から数えた方が早いのに?」

「なんで知って……い、いや、勉強だけが貴族の勤めとは言わない!そ、そうだな、だ、ダンスなんかは得意だぞ!」

「そういえば、私何度か足を踏まれましたね」

「ああ、ルルーもか、私もです」

ルルー様はともかく、男のルーン様が女性パートを踊れる驚き。ルルー様の変装にそこまでしたのかと思わなくもない。もしかしなくてもルルー様はルルー様で男性パートを踊れるとか……?いやいや、今考えることじゃないよね!
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