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5章恋を成就させるのはどっちですか?食べられるクッキーvs食べられないクッキー
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まあ色々ある今日この頃。ルーベルトとルドルクは仕事中………いや、仕事をしているのはルドルクだけだろうか。ルーベルトは既に済んでいるようである。
そんなルーベルトが静かな空間で呟いた。
「最近思う。このクッキーが食べられればリンに認められるのではと」
その声は近くで仕事をするルドルクに届く。
「ルーベルトがネムリン嬢に認められたいことを考えるのは簡単だけど、意味がわからないから聞くね。何をネムリン嬢に認められたいのかな?」
書類を書く手を休めることなくその言葉に反応を返せば呆れたようにルーベルトがこちらを見る。そんなこともわからないのかと視線で訴えながら。少しイラッときたルドルクがそこはぐっと我慢してしまう優しき王と言うべきか。
「結婚相手としてだ。日が経つごとにこんな俺では振られるのではと不安なんだ」
「うん、わかってたけど、なんでクッキー?」
食べられないクッキーもクッキーだが、そんな食べられないようなクッキーを食べようとして食べられたら結婚が認められるなどおかしな話は誰も聞いたことがないだろう。
まだ好きすぎるが故に誰もがまずいと言うクッキーを美味しいと食べてくれる男性に惚れる女性の方がまだ納得がいくというもの。
食べられないクッキーを食べたところでなんだというのだ。とルドルクは思うわけである。
「もう時間がない!」
時間がないとはネムリンと婚約を結んで1年が経ちそうだということ。しかし、ルドルクはその言葉の意味を理解しながらも首を傾げる。
「ネムリン嬢は断れないだろう?」
ルーベルトの判断で決まる結婚だ。ルーベルトがよしとすれば必ず決まる結婚。振られるという言葉をあえてスルーしていたが、やはりルドルクにはよくわからない。
「それはそうだが、リンには幸せになってほしい………とも思う」
「へぇ?ネムリン嬢が違う人を好きになったら婚約破棄も覚悟なの?」
「………その男を殺してしまいそうだ」
「よく幸せになってほしいなんて言えたね」
「思うと言っただろう」
「思うだけかよ!と僕は突っ込んでいいのかな?」
言っていることがめちゃくちゃなルーベルト。とはいえ、最近のルーベルトのネムリンに対する独占欲はルドルクが一番感じているため手放すとは考えられない。
(最近二人が夫婦になったら恐ろしい気もするけど、ならなかったらそれはそれでなぁ)
なんて思うルドルクである。
「最近思ってしまう。リンを私と二人だけの空間に閉じ込めてしまえば全て解決するのではと」
「寧ろ事件が発生しないかな。君がいない時点で犯人丸わかりだけど」
言葉の意味は単純にルーベルトはネムリンを監禁する気であるということ。さすがのルドルクも呆れる………なんてことはなく、本当にしそうだと少しひやりとする。
(だけど何故だろう。ネムリン嬢はただでは監禁できない気がする)
ルドルクの頭の中では手錠を紙を破くように……
『ちちち、千切ってしまいました!』
と慌てるネムリンと意味のなさない手錠、そして
『て、鉄のドアが、へこ、へこんで、開いてっ』
と中から決して開かない扉をなんて力をいれることなく破壊してさらに慌てるネムリンが思い浮かんだ。
(いや………壁を壊すなんてこともネムリン嬢なら………)
つまりのところネムリンを監禁するにはそれこそ想像上のドラゴンのようなイメージを持ってそれを拘束する気で取りかからなければ難しいとルドルクは考えるわけである。
ネムリンのために言うが、ネムリンは女性である。貴族のか弱い令嬢の一人である。少しばかり力が強く、少しばかりお菓子づくりが苦手で、少しばかり投擲センスがあって、今はルーベルトの婚約者となっている普通の令嬢である。
「リンが俺だけを好きになるには俺だけを見ていれば………」
「うん、ごめん。結構追い詰められてたんだね」
何が何でも両想いになりたいというルーベルトの気持ちがひしひしとルドルクに伝わる。ルーベルトが恋愛結婚を望む日が来るとはネムリンとルーベルトが出会う日より前は思いもしなかったことだろう。
あくまでルドルクはルーベルトがよく眠れるようになればを第一にしていたのだから。ひそかにそういう幸せも得られればとは思っていたわけだが、ルーベルトは一生知らないことだろう。
「すまない。ルドルクも早く相手がいるだろうに」
「うーん、どちらにしろ僕が先に結婚しないと君たちが結婚式をできないよね」
「結婚式………!」
「あ、忘れてたの?」
意外だとばかりにルドルクは目を見開く。
「両想いで結婚ばかりを夢見すぎて………だな」
まるで乙女のようであるが、それだけルーベルトは必死なのである。
「まあ、協力はするよ」
「いや、その前にお前のことだ。気になるのはいないのか?リンはだめだが」
「さすがに命を捨てるようなことはしないよ………。好きなのはサギーシのはずだったんだけど、最近はアクニー嬢が気になるかな」
「それはいい!」
「え」
何故かルドルクの言葉に急に喜びを見せるルーベルト。一体何が彼をそうさせたのか。明らかにわかるのはアクニーという人物に反応したということである。
そんなルーベルトが静かな空間で呟いた。
「最近思う。このクッキーが食べられればリンに認められるのではと」
その声は近くで仕事をするルドルクに届く。
「ルーベルトがネムリン嬢に認められたいことを考えるのは簡単だけど、意味がわからないから聞くね。何をネムリン嬢に認められたいのかな?」
書類を書く手を休めることなくその言葉に反応を返せば呆れたようにルーベルトがこちらを見る。そんなこともわからないのかと視線で訴えながら。少しイラッときたルドルクがそこはぐっと我慢してしまう優しき王と言うべきか。
「結婚相手としてだ。日が経つごとにこんな俺では振られるのではと不安なんだ」
「うん、わかってたけど、なんでクッキー?」
食べられないクッキーもクッキーだが、そんな食べられないようなクッキーを食べようとして食べられたら結婚が認められるなどおかしな話は誰も聞いたことがないだろう。
まだ好きすぎるが故に誰もがまずいと言うクッキーを美味しいと食べてくれる男性に惚れる女性の方がまだ納得がいくというもの。
食べられないクッキーを食べたところでなんだというのだ。とルドルクは思うわけである。
「もう時間がない!」
時間がないとはネムリンと婚約を結んで1年が経ちそうだということ。しかし、ルドルクはその言葉の意味を理解しながらも首を傾げる。
「ネムリン嬢は断れないだろう?」
ルーベルトの判断で決まる結婚だ。ルーベルトがよしとすれば必ず決まる結婚。振られるという言葉をあえてスルーしていたが、やはりルドルクにはよくわからない。
「それはそうだが、リンには幸せになってほしい………とも思う」
「へぇ?ネムリン嬢が違う人を好きになったら婚約破棄も覚悟なの?」
「………その男を殺してしまいそうだ」
「よく幸せになってほしいなんて言えたね」
「思うと言っただろう」
「思うだけかよ!と僕は突っ込んでいいのかな?」
言っていることがめちゃくちゃなルーベルト。とはいえ、最近のルーベルトのネムリンに対する独占欲はルドルクが一番感じているため手放すとは考えられない。
(最近二人が夫婦になったら恐ろしい気もするけど、ならなかったらそれはそれでなぁ)
なんて思うルドルクである。
「最近思ってしまう。リンを私と二人だけの空間に閉じ込めてしまえば全て解決するのではと」
「寧ろ事件が発生しないかな。君がいない時点で犯人丸わかりだけど」
言葉の意味は単純にルーベルトはネムリンを監禁する気であるということ。さすがのルドルクも呆れる………なんてことはなく、本当にしそうだと少しひやりとする。
(だけど何故だろう。ネムリン嬢はただでは監禁できない気がする)
ルドルクの頭の中では手錠を紙を破くように……
『ちちち、千切ってしまいました!』
と慌てるネムリンと意味のなさない手錠、そして
『て、鉄のドアが、へこ、へこんで、開いてっ』
と中から決して開かない扉をなんて力をいれることなく破壊してさらに慌てるネムリンが思い浮かんだ。
(いや………壁を壊すなんてこともネムリン嬢なら………)
つまりのところネムリンを監禁するにはそれこそ想像上のドラゴンのようなイメージを持ってそれを拘束する気で取りかからなければ難しいとルドルクは考えるわけである。
ネムリンのために言うが、ネムリンは女性である。貴族のか弱い令嬢の一人である。少しばかり力が強く、少しばかりお菓子づくりが苦手で、少しばかり投擲センスがあって、今はルーベルトの婚約者となっている普通の令嬢である。
「リンが俺だけを好きになるには俺だけを見ていれば………」
「うん、ごめん。結構追い詰められてたんだね」
何が何でも両想いになりたいというルーベルトの気持ちがひしひしとルドルクに伝わる。ルーベルトが恋愛結婚を望む日が来るとはネムリンとルーベルトが出会う日より前は思いもしなかったことだろう。
あくまでルドルクはルーベルトがよく眠れるようになればを第一にしていたのだから。ひそかにそういう幸せも得られればとは思っていたわけだが、ルーベルトは一生知らないことだろう。
「すまない。ルドルクも早く相手がいるだろうに」
「うーん、どちらにしろ僕が先に結婚しないと君たちが結婚式をできないよね」
「結婚式………!」
「あ、忘れてたの?」
意外だとばかりにルドルクは目を見開く。
「両想いで結婚ばかりを夢見すぎて………だな」
まるで乙女のようであるが、それだけルーベルトは必死なのである。
「まあ、協力はするよ」
「いや、その前にお前のことだ。気になるのはいないのか?リンはだめだが」
「さすがに命を捨てるようなことはしないよ………。好きなのはサギーシのはずだったんだけど、最近はアクニー嬢が気になるかな」
「それはいい!」
「え」
何故かルドルクの言葉に急に喜びを見せるルーベルト。一体何が彼をそうさせたのか。明らかにわかるのはアクニーという人物に反応したということである。
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