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出会いは幸か不幸か運命か
誕生と始まり
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命令を下された帝王がまず用意したのは皇子の部屋。連れられた部屋は布団の一式がひとつ。それだけであった。
「とりあえずここがお前の部屋だ。家具や家は借金の糧にさせてもらう。まあ必要なものくらいは・・・」
「ぱぱ」
「なんだ、拒否権はないからな」
「ぱぱは、ここにいる?」
「あ?俺には俺の部屋がある。一緒なわけ・・・」
「いっしょがいい!」
「ふざけるなっ!寝るまでくっつく気か!」
「い、いっしょがいい!まもる、いった!」
「俺に寝るなとでも言う気か!?」
「ち、ちが・・・ひとり、いや」
「我が儘にまで付き合う気はない。俺のいないここで寝ろ。」
「いや!」
「・・・俺はお前のぱぱでもなければ、そこまで付き合う気はない。」
「・・・いやだっ」
「仮にも成人してんだ、ひとりで寝るくらいしろ。それと嫌でも部屋の場所忘れるな。次はこの家の者に顔を覚えてもらう。ちびなのはお前くらいだからな、これに関してはすぐ終わるだろ」
「・・・・っ・・・」
固くなに許しはしない帝王に皇子はぐっと手を握りながらも、冷たくも部屋を出ていく帝王に慌てて追いかける皇子。
虐待やうつ病の両親にわがままどころか甘えられさえできなかった皇子が初めて人に反抗した言葉であったことを帝王は知るはずもない。なぜここまで反抗したのか、皇子自身も自身の抑えきれない気持ちが、知らぬ場所や知らぬ人々のいることの不安の叫びによるものとはわからず胸を押さえながらただただ帝王についていくのだった。
「集まってるか」
「うっす」
「あ・・・あ・・・!」
ついていって着いた場所、そこには移動中に帝王が電話で集まるよう伝え、大広間に集められた大勢の舎弟たちがおり、一気に真っ青になる皇子。
全員が帝王たちに気づき視線がそちらにいけば、汗すら出し始め、呼吸が辛くなるのを感じる。
「おい、どうした」
「あが・・・っはあっ」
人が、息が、と頭が混乱していく。座り込む皇子に舎弟のひとりと話していた帝王がようやく気づく。
「過呼吸っすね・・・!誰か袋もってねーか!」
「これでいいですか!町野さん!」
「おう」
「ふっはぁっ」
袋の口を皇子の口に持っていき二酸化炭素を体に取り入れさせる作業をする町野と呼ばれた帝王の舎弟。この舎弟こそ幹部にもあたる兄貴分町野正義、ヤクザになんとも合わない名前である。実は皇子の家に向かった際の運転手でもある。
「落ち着いてきましたね~」
「なら部屋に連れていく。顔を覚えさす目的は達成できただろ。」
「あ、若が抱っこしてやります?きっと緊張しすぎたんですよ。落ち着きはしましたが、気を失っちゃったみたいっす。」
「・・・面倒だな」
「組長から聞いてますよ。事情については俺から話しときますから」
「もう伝わってんのか」
「すぐ全員にも伝わりますよ。若、この子年齢は成人していてもあきらかに精神的にも大人とは思えません。成人してるからと否定ばかりせずわがままを聞いてあげてくださいっす。」
「・・・俺に命令か?珍しいな。殺されたくなったか」
「いいえ。ただこの子はどうも人が怖いようですから。信頼できるのが若だけなら、あまりにも危ういです。断ち切られたとき、この子は壊れてしまうのではないでしょうか。」
「俺には関係ない」
「借金返済させるんでしょう?」
「そのときは命を張って払ってもらうまでだ。連れていく。貸せ」
「・・・はい」
どことない正義感を発揮する正義に軽く睨んでは、気を失った皇子を受け取り、いわゆるお姫様抱っこをしながら部屋へ連れていく帝王。
「はぁ・・・調子が狂う」
「ぱ・・・ぱ・・・」
「皺になるだろうが」
無意識に、帝王を逃がすまいと帝王の服を掴む皇子。文句を言いつつも、それでも無理に外そうとしないのは・・・・。
「今日は仕方なくだ」
そう一言呟けば方向転換をし、自分の部屋へ招き入れ、一緒の布団で寝る。それはただの気まぐれか、帝王にしかわからない。
帝王の普段にない行動、皇子の帝王だけに対する態度、それは不幸となりえる道へと繋がるのか否か。知る者はいない。
「とりあえずここがお前の部屋だ。家具や家は借金の糧にさせてもらう。まあ必要なものくらいは・・・」
「ぱぱ」
「なんだ、拒否権はないからな」
「ぱぱは、ここにいる?」
「あ?俺には俺の部屋がある。一緒なわけ・・・」
「いっしょがいい!」
「ふざけるなっ!寝るまでくっつく気か!」
「い、いっしょがいい!まもる、いった!」
「俺に寝るなとでも言う気か!?」
「ち、ちが・・・ひとり、いや」
「我が儘にまで付き合う気はない。俺のいないここで寝ろ。」
「いや!」
「・・・俺はお前のぱぱでもなければ、そこまで付き合う気はない。」
「・・・いやだっ」
「仮にも成人してんだ、ひとりで寝るくらいしろ。それと嫌でも部屋の場所忘れるな。次はこの家の者に顔を覚えてもらう。ちびなのはお前くらいだからな、これに関してはすぐ終わるだろ」
「・・・・っ・・・」
固くなに許しはしない帝王に皇子はぐっと手を握りながらも、冷たくも部屋を出ていく帝王に慌てて追いかける皇子。
虐待やうつ病の両親にわがままどころか甘えられさえできなかった皇子が初めて人に反抗した言葉であったことを帝王は知るはずもない。なぜここまで反抗したのか、皇子自身も自身の抑えきれない気持ちが、知らぬ場所や知らぬ人々のいることの不安の叫びによるものとはわからず胸を押さえながらただただ帝王についていくのだった。
「集まってるか」
「うっす」
「あ・・・あ・・・!」
ついていって着いた場所、そこには移動中に帝王が電話で集まるよう伝え、大広間に集められた大勢の舎弟たちがおり、一気に真っ青になる皇子。
全員が帝王たちに気づき視線がそちらにいけば、汗すら出し始め、呼吸が辛くなるのを感じる。
「おい、どうした」
「あが・・・っはあっ」
人が、息が、と頭が混乱していく。座り込む皇子に舎弟のひとりと話していた帝王がようやく気づく。
「過呼吸っすね・・・!誰か袋もってねーか!」
「これでいいですか!町野さん!」
「おう」
「ふっはぁっ」
袋の口を皇子の口に持っていき二酸化炭素を体に取り入れさせる作業をする町野と呼ばれた帝王の舎弟。この舎弟こそ幹部にもあたる兄貴分町野正義、ヤクザになんとも合わない名前である。実は皇子の家に向かった際の運転手でもある。
「落ち着いてきましたね~」
「なら部屋に連れていく。顔を覚えさす目的は達成できただろ。」
「あ、若が抱っこしてやります?きっと緊張しすぎたんですよ。落ち着きはしましたが、気を失っちゃったみたいっす。」
「・・・面倒だな」
「組長から聞いてますよ。事情については俺から話しときますから」
「もう伝わってんのか」
「すぐ全員にも伝わりますよ。若、この子年齢は成人していてもあきらかに精神的にも大人とは思えません。成人してるからと否定ばかりせずわがままを聞いてあげてくださいっす。」
「・・・俺に命令か?珍しいな。殺されたくなったか」
「いいえ。ただこの子はどうも人が怖いようですから。信頼できるのが若だけなら、あまりにも危ういです。断ち切られたとき、この子は壊れてしまうのではないでしょうか。」
「俺には関係ない」
「借金返済させるんでしょう?」
「そのときは命を張って払ってもらうまでだ。連れていく。貸せ」
「・・・はい」
どことない正義感を発揮する正義に軽く睨んでは、気を失った皇子を受け取り、いわゆるお姫様抱っこをしながら部屋へ連れていく帝王。
「はぁ・・・調子が狂う」
「ぱ・・・ぱ・・・」
「皺になるだろうが」
無意識に、帝王を逃がすまいと帝王の服を掴む皇子。文句を言いつつも、それでも無理に外そうとしないのは・・・・。
「今日は仕方なくだ」
そう一言呟けば方向転換をし、自分の部屋へ招き入れ、一緒の布団で寝る。それはただの気まぐれか、帝王にしかわからない。
帝王の普段にない行動、皇子の帝王だけに対する態度、それは不幸となりえる道へと繋がるのか否か。知る者はいない。
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