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結果を言えばエミィは無事であったが、情けなくも冷静さが人一倍ある宰相のカーンが俺を叱って動いてくれたお陰だった。医療の知識があるカーンがいなければエミィはエミィの望み通り死ねたことだろう。考えただけでも恐ろしい。
そして、その日をきっかけにどれほどエミィを追い詰めていたのかようやく自覚した俺は後悔と共に一命を取りとめたエミィが目覚めるまでの間にすべてを片付けた。女のことも、噂のことも。もっと早くそうしていればエミィが自ら命を断とうだなんてしなかった。
だから俺は本来片付けるべきことを片付けることで不貞を働く前に戻れると馬鹿馬鹿しくも信じていたのだ。
その希望が絶望に変わったのはようやく目覚めたエミィの行動によるもの。
「皇后様!おやめください!」
それはエミィが目覚めたと聞いて慌てて駆け付た時のこと。エミィがいる部屋は騒がしく悲鳴が飛んでいた。一体何がと思えばエミィは窓から飛び降りようとしており、下手に傷つけないようにと使用人たちが止めているところだった。
「エミィ!やめろ!もう誰もお前を責めるようなことは言わない!それにあの女とはもう………!」
「……………」
「エミィ………?」
俺もエミィが飛び降りようとするのをすぐに加勢して全てを片付けたことを伝えるも、エミィは飛び降りようとするのを止め、あの時と同じ虚ろな目で俺を見ては口をぱくぱくとさせるだけ。何をしているのか?本人もおかしいと思ったのかゆっくりと首をかしげた。
そして感じることはひとつ。まさか………声が出ないのか?
「……………」
しかし、疑問に感じた様子も一瞬でもはや気にもならないのかエミィはみんなが驚いた様子で手を緩めた隙に三階の窓から躊躇いもなく飛び降りた。
「エミィ!?」
二度目は叱るカーンが近くにおらずも叫びながらもなんとかすぐ一度目よりも冷静になるよう勤めることができ、エミィの無事を確認するため駆け付けると同時にエミィが目覚めたと聞いてこちらに向かっている医師にはすぐにエミィが飛び降りた場所に来るようにと言いつけた。
その間俺は冷静に冷静にと自分を落ち着かせながらも一度感じた絶望感が希望になることはなかった。
あの時確かにエミィはこちらに反応していて、声は出ずとも耳は聞こえていたのは確か。だからこそ全て片付けたことを理解しながらも死ぬことを選んだ意味は俺の信じていた未来を打ち砕くには十分だった。
それにあの時声は出ずとも口の動きはあったわけで、死のうとせずともショックは隠せなかっただろう。
『どうでもいい』
確かにエミィの口はそう動いていたのだから。
そして、その日をきっかけにどれほどエミィを追い詰めていたのかようやく自覚した俺は後悔と共に一命を取りとめたエミィが目覚めるまでの間にすべてを片付けた。女のことも、噂のことも。もっと早くそうしていればエミィが自ら命を断とうだなんてしなかった。
だから俺は本来片付けるべきことを片付けることで不貞を働く前に戻れると馬鹿馬鹿しくも信じていたのだ。
その希望が絶望に変わったのはようやく目覚めたエミィの行動によるもの。
「皇后様!おやめください!」
それはエミィが目覚めたと聞いて慌てて駆け付た時のこと。エミィがいる部屋は騒がしく悲鳴が飛んでいた。一体何がと思えばエミィは窓から飛び降りようとしており、下手に傷つけないようにと使用人たちが止めているところだった。
「エミィ!やめろ!もう誰もお前を責めるようなことは言わない!それにあの女とはもう………!」
「……………」
「エミィ………?」
俺もエミィが飛び降りようとするのをすぐに加勢して全てを片付けたことを伝えるも、エミィは飛び降りようとするのを止め、あの時と同じ虚ろな目で俺を見ては口をぱくぱくとさせるだけ。何をしているのか?本人もおかしいと思ったのかゆっくりと首をかしげた。
そして感じることはひとつ。まさか………声が出ないのか?
「……………」
しかし、疑問に感じた様子も一瞬でもはや気にもならないのかエミィはみんなが驚いた様子で手を緩めた隙に三階の窓から躊躇いもなく飛び降りた。
「エミィ!?」
二度目は叱るカーンが近くにおらずも叫びながらもなんとかすぐ一度目よりも冷静になるよう勤めることができ、エミィの無事を確認するため駆け付けると同時にエミィが目覚めたと聞いてこちらに向かっている医師にはすぐにエミィが飛び降りた場所に来るようにと言いつけた。
その間俺は冷静に冷静にと自分を落ち着かせながらも一度感じた絶望感が希望になることはなかった。
あの時確かにエミィはこちらに反応していて、声は出ずとも耳は聞こえていたのは確か。だからこそ全て片付けたことを理解しながらも死ぬことを選んだ意味は俺の信じていた未来を打ち砕くには十分だった。
それにあの時声は出ずとも口の動きはあったわけで、死のうとせずともショックは隠せなかっただろう。
『どうでもいい』
確かにエミィの口はそう動いていたのだから。
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