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「まあ幼い時の話だし、あまり思い出したくない話だとは思うから兄様も知らなかったんだろうね。結婚……してるわけじゃないなら今は婚約者なのかな?未来の公爵夫人って言ってたし」

「ああ、そうだ。私は間違いをしでかして今償っているところでもある」

「兄様の言うことが俺にはわかんないけど、まあ償いにしても婚約者の辛い過去をほじくるもんじゃないよ~。あ、でも俺に会ったせいで思い出させたから俺が悪いのか」

「そんなことは!あの日は本当に救われたんです!親友に心配かけたくなくて我慢ばかりしてたけど、それも限界でいっそ死んでしまいたいと……そう思っていた時だったので本当に本当に救われたんです!」

混乱して言葉が詰まっていたものの、自分を責めるようなバーン伯爵様に僕はこう言わずにはいられなかった。人違いだったとしてもあの日のことを忘れたことはないし、だからこそ一途な想いを僕は持ち続けた。感謝の気持ちとその想いに嘘はない。

その相手が違っていたから今は混乱しているけど、ずっと言いたかったことを今なら言える。忘れられて言えないと思っていたあの日のことを。

「あの日救っていただきありがとうございました。あの日、僕は身体だけでなく心も救われて……一日たりともあの日を忘れたことはありません」

「実は俺もあの日のことはずっと忘れていなかったんだ。君は救われたというけど、俺の方こそ君に救われたから。それにお礼は何度も聞いたよ?」

「え、あれ、あの時お礼も言えずにいたと思ってて……」

それに僕が救ったって何のこと……?忘れたことないと言いながらお礼言ったことすら忘れて言ってること矛盾だらけでは……?恥ずかしい……!

「あの時君はボロボロで頭も朦朧としてたでしょ?途中気絶したように眠った時は本当に焦ったんだから」

そうだ……それで起きたら保健室で、バーン伯爵様の姿はもうなくてお礼を言いそびれたとずっと思ってて……。気絶する前の記憶はあまりなかったかも?何か話したような記憶は確かにあるのに救われた時の記憶ばかりが鮮明で。

「その節はご迷惑を……」

「気にしないで!でもまさか王命で二人が結婚になるとはびっくりだったなあ!でも兄様が何かはわからないけど償っていることを原因に結婚から婚約になってるってことは一回離婚してるってことだよね?俺にもまだチャンスはあるってことか」

「何を言っている?」

つい公爵様を除け者にしたように会話を進めてしまっていたと気づくも、急にバーン伯爵様が言い出したことに僕の意識はまたバーン伯爵に向く。流石のことに公爵様も声を上げずにはいられなかったようだが……。

「兄様には感謝も尊敬もあるけど、周りを遠ざけるばかりだった兄様にシャロンさんを幸せにできるとは思わない。この身体のせいで随分遅れたけどタイミングはよかったみたいだね。俺は昔ほとんど外にも出れなかったけど、今は無理をしない限りは常人と変わらない。男同士の結婚が許された今その代表は俺とシャロンさんでもいいはずだよね?男同士の結婚を広めるのに大々的なものが必要なら最悪田舎から王都に住む場所を移ってもいいと俺は考えてるよ」

「私はシャロンを幸せにするためなら何だってするつもりだ。それに婚約者を奪おうとするその言動はいただけないな」

と、とんでもないことになった。初恋の人に僕は今告白でもされているのだろうか?急にバチバチと互いを睨み合う二人に、もはや僕の方が入る隙間がなくなってしまったようである。

それに何より本当の初恋の人を前に僕の心は揺れ動いてしまっているから公爵様への罪悪感もわいて何も言えない。僕はどうしてこうも優柔不断なんだろう……。
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