人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました

荷居人(にいと)

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「公爵様って兄弟いたんですね」

いたら有名になりそうだけど今まで僕は知らなかった。名前が違うにしてもここまで顔が似てるのに……とは思うけど、ほぼ同じだからこそ公爵様に間違われていたとか?それでも噂くらい聞きそうだけど……。

「んー俺はあんま表に出ないからね。幼い頃から療養ってことで王都に来ること自体珍しいかも?」

そもそも表舞台に出ることがなくて知る人が少なかったってことかな?見た目からは健康そのものに見えるけど、人は見た目じゃわからないしね。

「今は大丈夫なんですか?」

「まあね。王都は空気が田舎ほどよくないから長期滞在は負担が出て無理ではあるんだけど」

空気……ってことは気管が弱いのかもしれない。でもそんな中この王都に来たってことはよっぽど気になることがあったのかな?今思ったら結婚式のときも紹介はなかったし……来てなかったってことだもんね。聞いてもなかったけど……うん。

「それでいつから来ていたんだ?」

「昨日着いたばかりだからそこまで経ってはないよ。薬もあるし、成人してからは多少なら走ることも許されたしね。でもちょうどよかった!俺兄様の結婚相手の写真に見覚えがあって来たんだよね」

「見覚え……?シャロンはバーン領に行ったことがあるのか?」

「い、いや、ないですけど」

公爵様に兄弟がいたのも初めて知ってその上で見覚えがあると言われたら、僕自身公爵様と勘違いしてどこかで会っていた可能性はある、のかな?でも公爵様と結婚前にまともに話したことすらあの日くらい、しか……ってまさか?

「あの、もしかして学園でいじめられていた男の子を助けてくれたことありましたか?」

「やっぱり!あの時の子だよね!家族以外でお話できたのあの日が初めてだったからずっと覚えてたんだ!それにあれ以来会えなくて心配だったしさ」

「あれはバーン伯爵……だったんですね」

ああ、今更僕は気づいてしまった。

「あの日はどうしても学園に行ってみたくて、調子も珍しくよかったから、こっそり風邪をひいて休んでた兄様の制服を勝手に着て学園に行った日でもあったんだよね」

「あの日は本当にありがとうございました」

僕が好きになった人は公爵様ではなくてバーン伯爵だったんだと。実は優しいとこもあるんだと、救われたこともあってあの日からずっと目で追いかけていたつもりだった。でもそれは別人で……僕を本当に救ってくれていた人はバーン伯爵。

「あの日とは何のことだ?いじめられていた男の子とはまさかシャロンなのか?」

「それは……」

公爵様は僕とバーン伯爵の話にどこか心配そうに僕を見て聞いてきた。でもなんとなく喉から声が詰まる気がするのは、好きだと思っていた人が似ていただけの違う人だったと気づいてしまっただろうか。

協力してくれたリードにはなんて言えばいいんだろう?僕は本当に公爵様が好きなんだろうか?

僕の頭と心の中は一気に混乱を極めた。
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