人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました

荷居人(にいと)

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「まあ色々考えた結果シャロンの婚約が決定したよ~」

突然すぎる。何があったのか、説明もなしに急に呼ばれたかと思うと呼んだ人が集まったのか、僕の婚約が決定された。とはいえ、本来離婚してない状況だからこれも嘘なんだとは思うけど……。国王陛下に王太子殿下に公爵様や知らぬ間にお兄様まで呼んでリードが何を考えているのか本当にわからない。

「シャロンが……婚約だと?相手は誰だ……ですか」

「あー睨まなくても大丈夫だから安心して。相手は兄上……」

「王太子のクソ野郎が……」

「ではなくて、バンデージ公爵だよ。なんかとんでもない発言が聞こえた気がするけど~」

「気のせいかと。素晴らしい決断で」

絶対リード言い回しはわざとだし、公爵様は割と不敬な呼び方をしたのは僕にも聞こえたし、王太子殿下に聞こえなかったはずもないドスの効いた声だった。公爵様の視線は王太子殿下にあったのに背筋が凍るような殺気も感じた気もするし。

さらっとなかったことのように流そうとする公爵様のメンタルの強さがとんでもなさすぎる。でも、公爵ともなるとこのくらいのメンタルは必要なのかも……?

「うーんすごい変わりよう。今のはぼくも悪かったし、不敬は見逃してあげる。兄上も楽しそうだし」

「公爵に殺気を向けられる日が来ようとはね。中々ない経験で面白かったよ」

王族も王族である。殺気を向けられて楽しむ余裕があるのだから。身分的にも命が狙われる機会がやっぱり多いから殺気くらいは大したことじゃない、とか?それでも反逆罪に囚われかねないのにどっちも肝が据わっているというか……ついていけない。

「楽しんでいただけたようで何よりです。揶揄われたことは私も不問にします。それで嬉しい報告ではありますが急に何故婚約を?まだあの謁見の日から日が経ったとはいえ短くとも一年は許してもらえないと思っていたのですが」

揶揄われたことを言葉に出す辺り、公爵様は殺気を向けたことをどうとも思ってないように思える。悪いのはそちらだと言わんばかりに。権力が近しいからこそ許されるのかもしれないけど。

それはそれとして公爵様は一年覚悟で僕のところに通い詰める予定だったのだろうか。思ったよりも長く見積もっていた様子に、公爵様への気持ちが少し揺らぐ。最近はどうも公爵様が本気で僕を想い続けてくれそうだと信じてしまいそうになるから。

一途な想いが互いに続いていく保証などどこにもない上に、僕には公爵様のような魅力もないとわかっているというのに。

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