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30〜第二王子視点〜

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「以上がご報告になります」

「んー、危うい感じになっちゃったなあ」

最近シャロンに会える時間はないものの、シャロンの様子は随時報告させている。こちらは単に辛いことを隠すシャロンを見張るだけの心配あってこそだが、それとは違い公爵のことも密かに監視をつけていた。

その報告をたった今聞いていたんだけど、以前の公爵とはもはや別人である。とは言ってもシャロンに関わることに関してだけではあるけど。仕事に支障はないから放置しても……と思うにはあまりにもシャロンへの気持ちが暴走しているように思えた。

シャロンの気持ちが公爵に向いていなければ逃がしたいと思うくらいには執着心がどうにも見過ごせないように思う。見合い芝居を打つつもりはあったけどこれは危険な気しかしない。

側に置いていた執事にすら嫉妬を露わにするくらいだ。見合い相手というだけでシャロンの相手役は殺されそうである。正直シャロンへの贖罪がなければ、既に公爵が強行に及んでいた可能性すら……。

この際、実は離婚はしていないことをバラしてしまえば落ち着くだろうか?なんて思うものの、これは公爵への罰でもあるし、そうなったらすぐにでもシャロンを攫っていきそうである。代々守ってきた本邸である公爵家の屋敷を改装ではなく作り替えると聞いた辺りから割と危惧していたけど、シャロンの周りにいるものに危害がいく可能性すら出てくるとなると本格的にまずい気しかしない。

王族とは言えど、バンデージ公爵家の権力は簡単には見過ごせない位置であり、その当主であるジーン公爵が大きな問題を起こせば貴族社会を大きく揺らがすことになりかねないのだ。

そうなると頼みの綱がシャロンになるけど、さすがにシャロンには荷が重すぎるだろう。親友としても幸せになってほしいのにそんな重荷は背負わせられないし、まさかあの公爵がここまで人に執着するとは考えもしなかった。

公爵が人嫌いになった原因を知っているからこそその心を溶かすのは純粋なシャロンだろうと思っていたけど、無自覚に溶かし過ぎて自覚した公爵はシャロンが唯一の綺麗な存在に見えて仕方ないが故に暴走気味なのだと予測はしている。

身分が近しい存在としては正直理解できるから。

「シャロンへの気持ちを自覚したら狂ってしまうと……無意識に制御してたのかな」

ここまで壊れそうになるくらいシャロンに執着を見せるところを考えると、三年間それを自覚しなかったことが逆に不思議に思えて仕方ない。

だから……そういうことなのかもと考えてしまう。だからと言って三年間使用人のすることを見逃してたのは許さないけどね?とはいえ、これからシャロンのためにもだけど、王族としても今の公爵をどうしたものかしばらく悩むことになりそうである。

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