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26〜執事長視点〜

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「ツォン、は進んでいるか?」

「はい、時間は掛かりますが、抜かりなく」

「早いことに越したことはないが、手を抜いてシャロンに危害が加わってはいけない。再婚してまた同じ屋敷で暮らすことになった時、建て付けが悪い、防犯の脆さが見えるなんてことがあれば……しっかり伝えとくように。もちろん丁寧な仕事にはそれだけのお金は用意させる」

「かしこまりました」

最近主人の様子がどうも危うい気がしている。元奥様と離婚が成立したと聞いた辺りから、元奥様と再婚のことばかりを口にして、元奥様が嫌なことを思い出さないようにと、代々受け継いできた公爵家の本邸を作り替えることから、元奥様のための部屋をいくつも希望する始末。

それはいいとしても、まるで屋敷から出さなくても済むようにとありとあらゆる部屋の設置は異常に思う。あらゆる本を集めた図書館とも言える部屋から娯楽をかき集めた部屋、1日歩き回れる散歩コースと言う名の歩きやすい道を用意した広い庭に、言えばいくらだって望みが叶いそうな部屋の数々。

これもあれもとまた思いついたらすぐできるようにと余分な部屋も建築中で、本邸の作り替えとしても予定以上の多額の金額が予想されている。公爵家なら痛くもかゆくもない金額なのはわかっていても、やりすぎなのは感じているところだ。

だからこそ、もし元奥様との再婚が叶わなかった場合を考えると恐ろしく思う。元奥様へのプレゼントの量もだが、元奥様の肖像画を暇な時間帯に書いては絵師顔負けの絵を完成させて飾るのが日課になっているため、数日で溢れつつある絵は公爵家の別邸に丁重に閉まってある。

見るからに元奥様への執着が強くなっていっているのが側から見てもわかるのだ。

常に側に仕えてきた私からすると、初恋を拗らせた結果なのではと分析するが、拗らせ方があまりよくなかったと言える。これは私の反省点でもあるが、初恋に気づいて間もなく、公爵家に嫌な思い出ばかり残した状態で離婚を強制的に成立させられたことが主な原因と考えられる。

とはいえ、その思い出を作り直すとばかりに本邸を迷わず解体し、元奥様を閉じ込めようとばかりの屋敷に作り替えようとしてるのは如何かと思うが、主人本人が無意識にしている様子なのでどうしようもない。

「そうだツォン。王太子は殺せるか?」

「!? それはさすがに反逆罪に捉えられますので発言自体注意すべきかと」

「そうか、そうだな。シャロンが奪われないならいいんだが……つい不安になってしまったみたいだ」

あげくにこれである。元奥様が他に奪われることを怖がっているのかもし元奥様に手を出そうとした人がいれば殺してしまいそうな様子を度々見せるのだ。それも元奥様に今仕える王城のメイドや執事にまで目を光らせるほどに。

「大丈夫ですよ。きっとその想いがあればすぐ再婚できますから」

「ああ、そうだな。そのための準備だってしてるんだからな」

今までにない様子とはいえ、結局今の私には主人を応援することしかできない。もし再婚を否定しようものなら本当に主人は…………。
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