7 / 101
7
しおりを挟む
「シャロン……私は」
なんとなく期待してしまいそうになる自分から逃げたくて公爵様から目を逸らせば、公爵様が何かを言いかける。しかし、それは扉のノックの音によって遮られた。
「奥様お休みのところ申し訳ありません。こちらにジーン公爵閣下はおられますでしょうか?」
それはあまり聞き慣れない声によって。
「ツォンか。いるが、今は……」
名前を聞いて、その声がこの三年間公爵様以上に関わりを持てなかった執事長であると理解する。こう言ってはなんだが、公爵様との何とも言えない二人の時間を遮ってもらえて思わず感謝を述べたくなるタイミングだった。
「それが至急お伝えが必要なことでして」
公爵様が断りを入れようとしたのを察してか、その用事が緊急性のあるものだと伝えられる。そのせいか公爵様はさすがに後回しにできないと判断したのか僕を気まずそうに見て扉に自ら向かった。
「わかった。話は聞くが、私の部屋に移る。シャロンはまだ休みが必要だろうからな。シャロン話はまた後で……」
「いえ、奥様へのお気遣いはよろしいのですが、奥様にも関係があることでして」
そうして僕を気遣った言葉と共に開かれる扉。だが、公爵様の気遣いを他所に、それを聞いた執事長が申し訳なさそうな声と表情で僕にも関係あることだと伝えられ、思わず首を傾げる。公爵家関連で僕への用事など今までなかったので疑問がわくのは仕方がないと思う。
公爵様も怪訝な表情になっているし。
「実は王城からお二人宛に手紙が届いていまして、一人はお二人に宛てた国王陛下から、奥様には個人宛にも第二王子殿下からお手紙が来ております」
「陛下はともかく第二王子?」
「リード……殿下から手紙が!?」
思わず敬称を忘れかけつつも、僕は親友からの手紙と聞いて声を上げずにはいられなかった。この三年間結婚後いくら手紙を送っても返事がもらえなかったから、てっきり学園の時と違って元々の身分のせいで届かないのかもと思い、連絡をとるの諦めていたから。
「……親しいのか?名前呼びが許されるほどに」
「唯一の親友なんです。この三年間手紙の返事がなかったので向こうは今どう思っているか分かりませんけど」
「そうか、親友か」
なんとなくほっとした様子の公爵様を不思議に思いつつ、執事長に駆け寄って手紙を受け取ろうとすれば執事長が急に頭を下げた。
「奥様大変申し訳ありません。手紙についてなんですが、どうやら今回処分を下される使用人貴族たちによって処分されていたようでして、これまで気づかず申し訳ありません」
「え……」
まさかそんなことまでされていたとは随分悪質だなと思う。そりゃ手紙の返事が来ないのも仕方がない。でもそうなるとリードが手紙すら送らない薄情者と僕のことを思ってないか不安になった。この手紙も絶交するとかだったりしたらさすがに泣きそうだ。
「昨日はそんなこと一言も聞いていなかったが」
どうやら公爵様も今知ったようだ。なら執事長がそれを知ったのは何でなんだろう?
「公爵様宛のは私が最初に預かることを知ってか、恐れ多くも第二王子殿下より私宛にも手紙がありまして、王城の使者により先に読むように言われ読んだのですが、そこに手紙について書かれていまして……第二王子殿下がその環境下でご自身が送っていた手紙は奥様に届いていたのかと。まさかとは思ったのですが手紙を届ける前に確認してまいりました」
ん?それってもしかして……
「あの、もしかして処分していたのは僕の書いた手紙だけじゃないということですか?それに今回のことをリード殿下はお知りに……?」
「その通りです。まさか王城からの手紙すら勝手に処分するような者がいたとは思いもせず……。また、今回のことは大量の貴族使用人の解雇のため、周りの貴族が騒がしくする可能性を考え、予め国王陛下に事情をお伝えしておりますのでそれで知ったのかと」
「身分を気にする癖にとんでもないことをしでかしたものだ。第二王子のこともあって随分お怒りなのか陛下から私とシャロン、後シャロンに暴行したもの、手紙を処分したものたちを急ぎ連れてくるように書いてあるな」
いつの間にか手紙を受け取り読んでいる公爵様。僕のことでここまでのことになるとは思いもしなかった。でもリードに今回のことがバレているなら想定以上に大事になりそうだ。リードは怒ると手をつけられないところがあるから……。
「あの、使用人たちはすぐ連れていく準備ができるんでしょうか?」
「まだ処分を下してないからな。公爵家の地下の牢屋に男女別で入れている。さすがに人数が人数だから牢屋が足りなかったが、その分は団体でまとめて放り込んだ。一応現時点でわかっていることでの処分準備はあるが、何せ人数が多いのでな、さらなる余罪もないか細部まで確認して改めてその処分でいいか処分の決定を決める予定だった」
なるほど、まだ公爵家に留まっていたから執事長も手紙についてすぐ確認できたのか。でもそうなると、本当にすぐにでも出発できそうな雰囲気である。リードの怒りを時間を稼いである程度落ち着かせる作戦は普通に無理そうだ。
「罪人についてはこちらで手配いたします。とりあえず、奥様も第二王子殿下からのお手紙を読まれますか?もし手紙内容に他に指示があれば言っていただければと思いますので」
「あ、はい」
親友からの手紙に、嬉しさや不安など色々読むまでに思ったものだけど、今は正直嫌な予感をひしひしと感じている。これでリードの怒り具合がわかりそうではあるんだけど……。
恐る恐る手紙を開くとすごく可愛らしい文字で怖いことが書かれていた。
「あ、めっちゃ怒ってる」
思わずそう声に出てしまうくらいに怒ってると思うリードからの手紙の内容には……
なんとなく期待してしまいそうになる自分から逃げたくて公爵様から目を逸らせば、公爵様が何かを言いかける。しかし、それは扉のノックの音によって遮られた。
「奥様お休みのところ申し訳ありません。こちらにジーン公爵閣下はおられますでしょうか?」
それはあまり聞き慣れない声によって。
「ツォンか。いるが、今は……」
名前を聞いて、その声がこの三年間公爵様以上に関わりを持てなかった執事長であると理解する。こう言ってはなんだが、公爵様との何とも言えない二人の時間を遮ってもらえて思わず感謝を述べたくなるタイミングだった。
「それが至急お伝えが必要なことでして」
公爵様が断りを入れようとしたのを察してか、その用事が緊急性のあるものだと伝えられる。そのせいか公爵様はさすがに後回しにできないと判断したのか僕を気まずそうに見て扉に自ら向かった。
「わかった。話は聞くが、私の部屋に移る。シャロンはまだ休みが必要だろうからな。シャロン話はまた後で……」
「いえ、奥様へのお気遣いはよろしいのですが、奥様にも関係があることでして」
そうして僕を気遣った言葉と共に開かれる扉。だが、公爵様の気遣いを他所に、それを聞いた執事長が申し訳なさそうな声と表情で僕にも関係あることだと伝えられ、思わず首を傾げる。公爵家関連で僕への用事など今までなかったので疑問がわくのは仕方がないと思う。
公爵様も怪訝な表情になっているし。
「実は王城からお二人宛に手紙が届いていまして、一人はお二人に宛てた国王陛下から、奥様には個人宛にも第二王子殿下からお手紙が来ております」
「陛下はともかく第二王子?」
「リード……殿下から手紙が!?」
思わず敬称を忘れかけつつも、僕は親友からの手紙と聞いて声を上げずにはいられなかった。この三年間結婚後いくら手紙を送っても返事がもらえなかったから、てっきり学園の時と違って元々の身分のせいで届かないのかもと思い、連絡をとるの諦めていたから。
「……親しいのか?名前呼びが許されるほどに」
「唯一の親友なんです。この三年間手紙の返事がなかったので向こうは今どう思っているか分かりませんけど」
「そうか、親友か」
なんとなくほっとした様子の公爵様を不思議に思いつつ、執事長に駆け寄って手紙を受け取ろうとすれば執事長が急に頭を下げた。
「奥様大変申し訳ありません。手紙についてなんですが、どうやら今回処分を下される使用人貴族たちによって処分されていたようでして、これまで気づかず申し訳ありません」
「え……」
まさかそんなことまでされていたとは随分悪質だなと思う。そりゃ手紙の返事が来ないのも仕方がない。でもそうなるとリードが手紙すら送らない薄情者と僕のことを思ってないか不安になった。この手紙も絶交するとかだったりしたらさすがに泣きそうだ。
「昨日はそんなこと一言も聞いていなかったが」
どうやら公爵様も今知ったようだ。なら執事長がそれを知ったのは何でなんだろう?
「公爵様宛のは私が最初に預かることを知ってか、恐れ多くも第二王子殿下より私宛にも手紙がありまして、王城の使者により先に読むように言われ読んだのですが、そこに手紙について書かれていまして……第二王子殿下がその環境下でご自身が送っていた手紙は奥様に届いていたのかと。まさかとは思ったのですが手紙を届ける前に確認してまいりました」
ん?それってもしかして……
「あの、もしかして処分していたのは僕の書いた手紙だけじゃないということですか?それに今回のことをリード殿下はお知りに……?」
「その通りです。まさか王城からの手紙すら勝手に処分するような者がいたとは思いもせず……。また、今回のことは大量の貴族使用人の解雇のため、周りの貴族が騒がしくする可能性を考え、予め国王陛下に事情をお伝えしておりますのでそれで知ったのかと」
「身分を気にする癖にとんでもないことをしでかしたものだ。第二王子のこともあって随分お怒りなのか陛下から私とシャロン、後シャロンに暴行したもの、手紙を処分したものたちを急ぎ連れてくるように書いてあるな」
いつの間にか手紙を受け取り読んでいる公爵様。僕のことでここまでのことになるとは思いもしなかった。でもリードに今回のことがバレているなら想定以上に大事になりそうだ。リードは怒ると手をつけられないところがあるから……。
「あの、使用人たちはすぐ連れていく準備ができるんでしょうか?」
「まだ処分を下してないからな。公爵家の地下の牢屋に男女別で入れている。さすがに人数が人数だから牢屋が足りなかったが、その分は団体でまとめて放り込んだ。一応現時点でわかっていることでの処分準備はあるが、何せ人数が多いのでな、さらなる余罪もないか細部まで確認して改めてその処分でいいか処分の決定を決める予定だった」
なるほど、まだ公爵家に留まっていたから執事長も手紙についてすぐ確認できたのか。でもそうなると、本当にすぐにでも出発できそうな雰囲気である。リードの怒りを時間を稼いである程度落ち着かせる作戦は普通に無理そうだ。
「罪人についてはこちらで手配いたします。とりあえず、奥様も第二王子殿下からのお手紙を読まれますか?もし手紙内容に他に指示があれば言っていただければと思いますので」
「あ、はい」
親友からの手紙に、嬉しさや不安など色々読むまでに思ったものだけど、今は正直嫌な予感をひしひしと感じている。これでリードの怒り具合がわかりそうではあるんだけど……。
恐る恐る手紙を開くとすごく可愛らしい文字で怖いことが書かれていた。
「あ、めっちゃ怒ってる」
思わずそう声に出てしまうくらいに怒ってると思うリードからの手紙の内容には……
636
お気に入りに追加
2,352
あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる