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ざらめ様は恋のキューピッド?~ラーダ視点~
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私は今ようやく初恋が巡りに巡って結ばれるチャンスだというのに、思わぬライバルの登場で苦戦している。これがそこらの男ならまだどれだけよかったか。そう思うほどの厄介な相手。
「にゃあ」
そう猫のざらめだ。
猫がライバルと笑うならそれはそれで構わない。猫を笑うものは猫に泣くとも聞くしね……え?聞かない?まあ、それはともかく、ラフィーナと婚約した時からざらめは強敵だ。
彼女に頭を撫でてもらい、彼女の膝の上に寝そべり、彼女と一緒に寝ても許される存在………羨ましい……。いや、頭はどちらかというと撫でてやりたいと思っているけどね?
さすがに撫でられるのは彼女より年上なのに気恥ずかしいし……うん。
しかも最近の彼女はあまり私と目を合わないどころか、以前より会話が続かず少し焦っているのもある。結婚が嫌だなんて言われた日には、二度目の失恋に立ち直れないだろう。しかも本人から振られたとなれば。
応援こそたくさんあるが、一番は彼女の心を掴むことにあるのだから。
そう私は焦ったが故に………色々間違った気がしてならない。
「あの、えー、ラーダ殿下?」
「…………」
ほら、ラフィーナも戸惑っているではないか。でも久々にこちらに目を向けてくれたのを嬉しく思う辺り、私のラフィーナへの想いは底知れない。
「にゃふっ」
しかし、最大のライバルざらめにも笑われる始末となればやはり羞恥が上回る。
「ら、ラーダ殿下、あの、頭に……」
「弁解させてください……」
もう十分だろうと頭の上につけていた猫耳をとるも、これで変な誤解をされては堪らない。決して私は父上みたいにそんな趣味はないのだから。
「えーっと……?」
「まず始めに言うけど、これは父上の私物であり、私のではないよ」
「えっ陛下の!?いや、あの、はい」
ああ、別の意味で驚かせてしまったかな。私も猫耳をつけた父を見たくはなかったよ……猫と遊ぶためとはいえね。母上の冷めた目には共感したものだ。
「話を続けるね?ラフィーナは猫が、好きだろう?」
「は、はい……」
「あまりにざらめばかり構うものだから……その……猫になれば構ってくれるかなと血迷ったんだ」
「え?」
「最近、君は私と目も合わせてくれないから……」
「あ、それは……」
ああ、もう……こんなことで好きな人を困らせたいわけじゃなかったのに、なんで私は……。
「できれば忘れてほしい……猫に嫉妬なんてさすがにバカみたいだろう?」
「そんなことはありません!わ、私、ざらめ様に嫉妬するラーダ殿下が可愛くて……その、最近はラーダ殿下を見てると緊張してしまうんです……。まさか傷つけてるとは思わなくて……」
「可愛いは喜ぶには複雑だけど……そうか、緊張か、なるほど……緊張ね」
私は意外と単純なお調子者だったのだろうか?ラフィーナの言葉に期待せずにはいられない。ざらめに嫉妬する私を見たことでそれを自覚しつつあるなら私はざらめをライバル以前に見直すべきだろう。
「にゃうん……」
「あ、ざらめ様?」
まるで、後はがんばりなさいとばかりにラフィーナの膝の上から降りて去っていくざらめ。
そうして二人きりになることでラフィーナの顔がひそかに赤くなっていくのがわかる。ああ、これは期待してもいいよね?ざらめ。思わず去ったざらめに心の中で問いかけてしまったくらいには気分が上がっている。
「ラフィーナ……」
「あ、あの、ラーダ殿下!もう一度猫耳をお願いします!そうすれば話せそうなんで!」
「え」
しかし、一瞬で雰囲気はぶち壊された。私の愛しき人の言葉によって。
結局距離が近づいたのか近づいていないのかわからないまま、とりあえず猫耳をつけている間だけはラフィーナと会話が前と同じようにできるようになったのは確かだ……。
しかし、結婚式までには是非とも猫耳なしで話せるくらいにはなりたいとより思った瞬間だった。
「にゃ……」
「わかってる……」
猫語はわからないが、ひとりになって落ち込んでいればざらめが傍に来てがんばれと慰めてくれるような気がして、自然とざらめ相手に言葉を返していた。
父上に猫耳をいつまで借りることになるのか……それだけがやたら恐ろしい。
おわり
あとがき
恋は発展してるのかしてないのか……陛下も不憫なら息子のラーダもやはり不憫なところが……?
この二人の恋。ざらにゃんだけが頼りですね。
とりあえず猫耳ラーダはご想像にお任せします。
「にゃあ」
そう猫のざらめだ。
猫がライバルと笑うならそれはそれで構わない。猫を笑うものは猫に泣くとも聞くしね……え?聞かない?まあ、それはともかく、ラフィーナと婚約した時からざらめは強敵だ。
彼女に頭を撫でてもらい、彼女の膝の上に寝そべり、彼女と一緒に寝ても許される存在………羨ましい……。いや、頭はどちらかというと撫でてやりたいと思っているけどね?
さすがに撫でられるのは彼女より年上なのに気恥ずかしいし……うん。
しかも最近の彼女はあまり私と目を合わないどころか、以前より会話が続かず少し焦っているのもある。結婚が嫌だなんて言われた日には、二度目の失恋に立ち直れないだろう。しかも本人から振られたとなれば。
応援こそたくさんあるが、一番は彼女の心を掴むことにあるのだから。
そう私は焦ったが故に………色々間違った気がしてならない。
「あの、えー、ラーダ殿下?」
「…………」
ほら、ラフィーナも戸惑っているではないか。でも久々にこちらに目を向けてくれたのを嬉しく思う辺り、私のラフィーナへの想いは底知れない。
「にゃふっ」
しかし、最大のライバルざらめにも笑われる始末となればやはり羞恥が上回る。
「ら、ラーダ殿下、あの、頭に……」
「弁解させてください……」
もう十分だろうと頭の上につけていた猫耳をとるも、これで変な誤解をされては堪らない。決して私は父上みたいにそんな趣味はないのだから。
「えーっと……?」
「まず始めに言うけど、これは父上の私物であり、私のではないよ」
「えっ陛下の!?いや、あの、はい」
ああ、別の意味で驚かせてしまったかな。私も猫耳をつけた父を見たくはなかったよ……猫と遊ぶためとはいえね。母上の冷めた目には共感したものだ。
「話を続けるね?ラフィーナは猫が、好きだろう?」
「は、はい……」
「あまりにざらめばかり構うものだから……その……猫になれば構ってくれるかなと血迷ったんだ」
「え?」
「最近、君は私と目も合わせてくれないから……」
「あ、それは……」
ああ、もう……こんなことで好きな人を困らせたいわけじゃなかったのに、なんで私は……。
「できれば忘れてほしい……猫に嫉妬なんてさすがにバカみたいだろう?」
「そんなことはありません!わ、私、ざらめ様に嫉妬するラーダ殿下が可愛くて……その、最近はラーダ殿下を見てると緊張してしまうんです……。まさか傷つけてるとは思わなくて……」
「可愛いは喜ぶには複雑だけど……そうか、緊張か、なるほど……緊張ね」
私は意外と単純なお調子者だったのだろうか?ラフィーナの言葉に期待せずにはいられない。ざらめに嫉妬する私を見たことでそれを自覚しつつあるなら私はざらめをライバル以前に見直すべきだろう。
「にゃうん……」
「あ、ざらめ様?」
まるで、後はがんばりなさいとばかりにラフィーナの膝の上から降りて去っていくざらめ。
そうして二人きりになることでラフィーナの顔がひそかに赤くなっていくのがわかる。ああ、これは期待してもいいよね?ざらめ。思わず去ったざらめに心の中で問いかけてしまったくらいには気分が上がっている。
「ラフィーナ……」
「あ、あの、ラーダ殿下!もう一度猫耳をお願いします!そうすれば話せそうなんで!」
「え」
しかし、一瞬で雰囲気はぶち壊された。私の愛しき人の言葉によって。
結局距離が近づいたのか近づいていないのかわからないまま、とりあえず猫耳をつけている間だけはラフィーナと会話が前と同じようにできるようになったのは確かだ……。
しかし、結婚式までには是非とも猫耳なしで話せるくらいにはなりたいとより思った瞬間だった。
「にゃ……」
「わかってる……」
猫語はわからないが、ひとりになって落ち込んでいればざらめが傍に来てがんばれと慰めてくれるような気がして、自然とざらめ相手に言葉を返していた。
父上に猫耳をいつまで借りることになるのか……それだけがやたら恐ろしい。
おわり
あとがき
恋は発展してるのかしてないのか……陛下も不憫なら息子のラーダもやはり不憫なところが……?
この二人の恋。ざらにゃんだけが頼りですね。
とりあえず猫耳ラーダはご想像にお任せします。
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