上 下
19 / 55
番外編年齢制限なし

番外編~前編・南国の強制ラブの罠~

しおりを挟む
朝食を終え、トアと共に向かったのは海。前世でも弟のこともあり、俺にとって人生初の海!テレビで見たことくらいはあるけど。

でもゲーム仕様?って言いたいくらいに、下が透けて見えるし、海なのにピンク。透き通ったピンクの海だ。俺の知ってる海じゃない。綺麗というか可愛らしい?

この世界の絵でも海は青だって書いてあったはずなんだが……え?何これ。

「南国の海は他と違い境界線があって、別の海として有名なんです。ここからは見えませんが綺麗に青とピンクで分かれているようです。」

「へー」

南国のイメージ崩れるなぁ………。

「どうも愛の海として有名らしく、ここに来た恋人たちは自然と愛を育んで、愛を深め、生涯の幸せを誓い、仲良く暮らせているようで……」

なるほど、なんで急に南国で休暇なのかと思えばそういうことか。確かにスイレンや黒人にもいいかもしれない。でもトアはこういうのを信じるタイプだったのは驚きだ。

「これ以上深められる愛があるかわからないけど、とりあえず着替えて入ろうか」

「は、はい!」

遠回しの言い方にもならない言葉で、俺たちの愛は深まりあっていることを伝えれば嬉しそうにするトア。うん、可愛い。

誰もいない更衣室で水着になるべく着替えを済ませ、同じく着替えたトアと共に海に入る前に水のシャワーを浴び、ようやく海へ足を向けた。

それまでの間、水着姿を恥ずかしそうにするトアはやっぱり羞恥心がたまにズレている気がする。俺たちもっと色々してるだろ?ってなるけど、可愛いので見守るだけだ。何はともあれ、色はともかく、綺麗な海なので躊躇いなく俺もトアも海へざぶざぶと入っていく。

暑い日差しの中だからひんやりとした海は心地いい。トアも気持ちいいのか笑みが浮かんでいる。そんなトアに、パシャリと海の水をかけた。

「やりましたね、兄上!」

意外とトアのテンションがあがっていたようだ。ノリよく言葉を言ってはパシャリと俺にかけ返す。

「やったな!」

まあなんだかんだ俺もピンクとはいえ、初めての海にテンションがあがらないはずもなく、ただ海の水を掛け合う遊びを楽しむ。

それで気づいたが、この海の水、甘い。掛け合っていれば口にも入って、トアも同じなのかびっくりした様子だ。

「海って甘いんですね?」

「いや、青い海はしょっぱいって書いてあったよな?」

前世でも確かそんな知識だ。

「ジュースみたいで美味しいです」

「確かに。でも、体にいいとは限らないし、自ら飲むべきではないな」

「そうですね」

いくら飲んでも害がないなら普通に飲みたいくらいには甘さ加減もよく、変に後味が残らない感じがいい。多少口に入っただけで思った感想。がぶがぶ飲むのはどちらにしろ微妙だ。この海は俺たちだけが入る訳じゃないし。

「あー……せっかくだし、泳ぐか!」

「泳げますかね?」

「俺が教えるから」

「兄上、泳げるんですか?」

「行ける気がする」

海は初めてだが、前世ではプールの授業があったし、泳げてもいた。だからリーアベルがよっぽど金槌とかでなければ前世の感覚を思い出していける気がする。

バシャバシャ

「兄上、すごいです!」

なんとか泳げた。クロールができたわけでもないのに、興奮気味にトアに褒められるのはいい気分だ。ついやる気が出たのか身体も熱くなってくる。

「トア、やってみろ」

「はい!」

さすがと言うべきか、なんなく普通に泳げている。クロールはできないが、やり方を教えさえすればトアなら独自で綺麗なフォームを得て泳げそうだ。我が弟ながら万能過ぎる。

「上手く泳げすぎだ」

「ふふっそうですか?楽しくて身体熱くなってきました」

まあ泳ぐのも体力使うし、熱くもなる。あと少し泳いだら水分補給も忘れないようにしないと。そう思いながら泳ぎの競争や海の中での追いかけっこもしてあまりこれ以上熱が籠るのもよくはないとトアと二人であがろうとして気づく。

「出られない……?」

「出ようとすると海の流れが………」

どうなっているのか、浜辺に向かおうとすると逆らえない波に元の位置、身体の肩辺りが浸かるまでの位置に戻される。

身体も熱いし……で、さらに気づいた。暑さで熱中症に近い症状かと思っていれば違う。これは暑さでと言うより興奮でというのが正しい。

「ここでヤれって?」

「愛の海の正体……でしょうか」

こんなの自然じゃなくて強制な愛でしかない。いるだけで熱くなっていく身体を治める方法はひとつしかなさそうだと苦笑し、諦める。

とりあえずもじもじするトアが可愛くて思わずキスをしてしまったのは仕方がない。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。 これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って…… 「龍、そろそろ兄離れの時だ」 「………は?」 その日初めて弟が怖いと思いました。

兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m ■■■ 特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。 無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟 コメディーです。

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...