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元王妃の武勇伝物語

番外編~とある博士はやらかした(第二モブ視点)~

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我は国にも認められたとても偉大な研究者なんだな!多分。今日も世のため、自分のためにたくさんの研究をしてるんだな!・・・多分。

多分は口癖で、心の中でさえ出ちゃうんだな!多分。このせいで、自信あることを言っても不安がられちゃうんだな!多分。

そんな我は今、何故かひとりの女性に我の研究所を襲撃されたんだな、多分。気のせいか、この国の元王妃に似ている気がするんだな、多分。

元王妃シャルラッテ様の血筋は興味深いから、いつしか是非会って血をいただきたいのだな、多分。あの血筋で、もしそれを受け継いだならシャルラッテ様はお年だからと言って大人しいなんて噂流れるとは思えなかったんだな、多分。実際笑みをなくしていき、黙り王妃になったのはあの血筋を濃く受け継ぐならありえないんだな、多分。だから血筋が薄いなら研究には不要かもしれないんだな、多分。

その点、あの血筋を受け継ぐなら何かしら覚醒することで、これぐらいの派手な襲撃できるだろうな、多分。え、まさか、やっぱり元王妃様なのかな、多分。期待しちゃうんだな!多分。

「あら、頑丈そうなドアだったから強めにノックをしたら壊れてしまったわ。思ったより軽い扉だったのね」

女性どころか、男性のノックですら外れるようなドアではないんだな、多分。猪の突進ですら傷ひとつつかない扉のはずなんだな、多分。

ぐしゃりと変形すらしている扉にこればかりは多分と自信がなくなりそうなんだな、多分。その後ろに居る死にかけの老人は元国王に見えるけど、あの厳格さを持っていた人物がありえないんだな、多分。

でも、これがそうならこのおかしな女性も元王妃な可能性がやはり高いんだな、多分。

「急、に、すまない・・・多分、博士」

あ、今にも魂すら出そうな言葉を発するのはやはり国王のようなんだな、多分。多分博士なんて口癖を名前にするのやめてほしいんだな、多分。自信なさすぎる博士名でしかないんだな、多分。

にしても、なんで生きてるか不思議なくらいなんだな、多分。もう王ではないならその生きて歩いているのがありえないその身体の血をもらい受けたいんだな。多分。

なんなら、死体になったら解剖したいくらいに生きて歩いてるのが不思議なゾンビ・・・いや、人なんだな、多分。

そしてこれが元王ならやはりこの女性は、多分・・・!あ、口癖がいいようにはまったんだな、多分。

「何年と経つ内に変わりすぎなんだな、多分。シャルラッテ様、扉壊さなくても呼び鈴押し鳴らしてくれれば開けたんだな、多分」

「いんたーほん、でしたかしら?指でちょんと押したのだけど、壊れてしまったものだから」

やはりシャルラッテ様らしいんだな、多分。それにしても、指ちょんで壊れるとは、元王妃様用に猪の突進でも鳴らない頑丈なインターホンを作ってみるしかなさそうだな、多分。

「扉をもっと頑丈に作り直すいい機会なんだな、多分。それよりどうしてここにいるんだな、多分」

「山へ寄り道しようと思いまして。多分博士の研究所は山に近いですからせっかくだから寄らしていただいたの」

襲撃に来たわけじゃなくて安心したんだな、多分。今回はよかったものの、襲撃に対処する警備できるロボットを作るのもいいかもしれないんだな、多分。

いや、ロボットなんて生ぬるいんだな、多分。目の前にいい研究材料があるのだから。

「せっかく来たのだし、お茶くらい用意すんだな、多分」

「あら、ありがとう」

もう王族と縁を切り何者でもないこの二人なら、殺人さえ犯さなければ問題ない。・・・多分。睡眠薬を身体の影響がないくらいに調整して淹れたお茶を自然に慣れたように席つく元王族の前へ置く。

「お茶はやっぱり美味しいわね」

「・・・」

布一枚を巻く二人は、お茶よりも川に顔を突っ込んで川の水を飲む方がお似合いだが、お茶を飲む動作はやはり元王族なだけに無駄に綺麗だった。多分。

寝ている間にちょーっと血をいただくだけなのだな、多分。珍しい遺伝子は時に素晴らしい研究成果を与えてくれるのだから!多分。

即効性のある睡眠薬に先に落ちたのは元国王。まあ、そんな感じはしたんだな、多分。

「あら、疲れていたのかしら?」

疲れるって言うより死にかけていたが正しいんだな、多分。

シャルラッテ様には元国王がどう見えているのかな、多分。まるで死んだように眠る元国王の名前を正直言おう、覚えてないのだな、多分。

ゾンビでいいかな、多分。だって我を多分博士なんて変なあだ名をつけてくれたのだから見た目通りいいんじゃないかな、多分。

一口、二口、三口と飲まれ、空になり、二杯目の獣さえも眠る睡眠茶に変更。今だ眠らないこの元王妃、あの血族にしろ、これはもう先祖反りと言っていいくらい血の才能を持ってるとしか思えない。多分。

ああ!なんて素晴らしい研究材料だろうか!多分!我の心は『未知の生物』に歓喜でいっぱいだ!多分!

「シャルラッテ様!是非とも血を提供してほしいんだな、多分!」

未知の生物相手には直球以外血をとる方法なんてできはしない。多分。もし、シャルラッテ様が先祖反りならば、王族を影から支えた影の王、本来軟弱で滅びかけていたクレット国をその血を持ってして人々の魔力を覚醒させ、魔法を当たり前にさせた人物。

その力でクレット国は支配しようと襲い来る他国からの攻撃に快勝を与えた。しかし、それに追い討ちをかけるような大将を見つけた獣の大群が襲ってくれば、残り少ない魔力を身体にまとい、影の王はその身を持ってただ一人で薙ぎ払った。人類最強と言われた伝説のそれは他国への牽制となり、恐怖政治になることを考え、己の血の繋がりがあるためか、自らの弟に血を与えたことで高い魔力を露にしたその弟に王位を譲った。

長い年月はそれを物語とし、影の王はいつしかただの縁遠い血の繋がりがあるただの身内となった。その中で影の王の血を引き継ぐような才能を、優秀さを、小さいながらも尚引き継ぎ続けるのがシャルラッテの生まれた家、シーザー家。

ずっと我は研究したかった!多分。だが、相手は高位の貴族ばかりで、唯一この研究所に来るシーザー家の血縁は王妃だったのだ。多分。

それが今王族を追放され、貴族でもなんでもない元シーザー家の血を持つ者がいるのだ!多分!遠慮などする気はないのだ!多分!

「血くらい、いいわよ」

いびつなナイフでざっくりと・・・・たたたたたたたぶーん!?

「貴重な血が垂れ流しなのだたぶーん!」

慌てて吹き出る血を、床に落としたものは諦めて採取していく、我。多分。血が、遺伝子の宝が!もう興奮で頭おかしくなりそうなのである!多分!

後日、その最強の血と最後に眠るゾンビから採血したゾンビ並の生命力ある血を慎重に混ぜ、人造人間を我は作り上げた。多分。

元はシャルラッテ様の血を基本とし、傷を治療した際に得た皮膚や抜けた髪を、人工的に類似品を作り出すことに成功し、コピーしたかのようにした皮膚等を使って、早く作りあげることを優先した結果、幼女姿のシャルラッテ様みたいなのができちゃったんだな。多分。

心臓部分に埋め込まれた魔石に魔力を溜め、魔力を全体に通すことで動くようにした我は天才だな、多分。さらに、自ら魔力を回復できるよう、限度設定して人から魔力を自然に吸収できるようにしたんだな、多分。

「ご主人様、ドア壊れちゃいました・・・これ、拾ったんですけど、飼っていいですか?」

性格は悪くないが、どうもそれに反してやることは問題だらけなんだな、多分。とりあえず、暴れ狂う狼どうやって押さえてるか不思議すぎるんだな、多分。

君は無事でも、我殺されちゃいそうだから返してきなさいとしか言えないんだな、多分。

増える請求書にいつまで国が許してくれるか未来が不安なんだな、多分。この人造人間、今の王様の妹として献上しちゃだめかな、多分。飼えないとわかると狼を殺して研究所を血で汚すミニシャルラッテちゃんに我の目は遠くを見るしかできないんだな、多分。

後に現王のセトアに会うことになり、影の王の唯一綴られている容姿、黒の髪と赤い目を持ち、シャルラッテに負けない才能を持つことを確信した我が、さらにミニシャルラッテを成長させ、唯一マシだった性格すら歪め、『悪魔の幼女ゴーレム』と呼ばれるのは我のせいではないと思うんだな、多分。
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