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番外編年齢制限なし

番外編~誕生日プレゼント~

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俺は悩んでいる。恐らく人生の中で一番悩んでいる。もうすぐで愛しのトアが9歳になるからだ。最近の可愛かったエピソードは身長が伸びたとぴょんぴょん跳ねる姿。なぜこの世界にはカメラがないのか。動画撮りたかった……!

話が脱線した。つまりは誕生日が近い。今でこそ常に一緒で周囲も慣れたのか視線が減っているも、前まではほぼというか全然会わなかったために誕生日プレゼントを4歳から渡していない。王族だからパーティは開かれるが、寂しい思いをさせたのは間違いない。

先日のトアの言葉を思い出す。

『兄上、学園内なのでパーティはないですが、その、誕生日の日一緒にお祝いしてくれますか?』

不安げな表情をするトアの顔が忘れられない。当たり前だ、祝うに決まっていると答えてやりたかったがいかんせん、5年間も祝いに出てなかったのだ。信じられるはずもない。ようやく出た言葉はもちろんの一言。なんとも情けない返事。

それでもほっとして嬉しそうなトア。最近はずっと一緒なのに5年と、学園での半年ちょっと会えなかった不安がまだなくなりきっていないんだろう。今回の誕生日で不安が吹き飛ぶくらいに喜ばせたい。

ついでにいえば何もしなかった5年間分も祝いたい。つまりは誕生日プレゼントに迷っている。正直何をあげてもトアは喜ぶに違いない。トアが俺を好きすぎるのは今の俺にはよーく、わかっている。

しかし、だからと言って適当に選びたくはない。本気でいくなら俺をあげると言えばトアは目を輝かせて学園の授業すら俺を傍につかせ、寮でも俺との二人部屋を申請するだろう。まあそれは既にしているけど、父上の妨害か、できそうにないわけだが。悔しそうにしていたトアの表情もまた珍しかった。

「ピアス……いや、子供には早いし、トアの体にピアスとはいえ傷つけたくない。どろどろに甘やかすのもいいが、形の残るものを与えたいしなぁ」

ぶつぶつと言いながら町中を歩いているためか、周囲の視線が痛いが、まあ、気にしない。ちなみに今日は王宮から呼び寄せた王宮教師に出張稽古をつけられてトアと会えない。下手にいると、父上に報告されて学園内とはいえ、なんとかトアと離そうとするかもしれないし、また婚約者を作られても困る。

ヒロインの一件で、下手に俺に婚約者をつけると面倒だと感じたのだろう。あれでもモテていたヒロインは悲劇のヒロインとして『婚約者に愛されず、次期王に愛を囁いてもらい立ち直ったのに裏切られ狂ってしまった』と噂が流れ、王族は人をたぶらかすのかと何の意味もない抗議はヒロインの勘違いだと言い、『ヒロインが他の男に目を向ける浮気性だったために腹を立てた第一王子が嫌がらせを行った』ということになった。

元々俺が嫌がらせをしていた噂も俺が流していたため、その原因をヒロインに押し付けた形だ。

何より、愛のない婚約はたくさんあるだろうに。それに婚約者がいる状況で他の男に目がいっていることを前者の噂で匂わされているので、結局ヒロインの自業自得となったわけで、無駄な抗議をしてきた者たちは王族に楯突いたと貴族名から外す、多額の罰金などで父上は腹いせを行ったようだが。噂で王族を落とせるなんて思う貴族はこの国にいらないと即判断し、すがりつく貴族を容赦なく平民に落とすのだから潔い。

ちなみにヒロインに惚れている平民が多額の罰金であり、生活が困難になるのは見えている。しかもまだ成人してないと言うのに、『親に対しては子の縁を切ることを許す』つまりは、子に離縁すれば払えない罰金は全て子だけのものとなる。生活できなくなるのは目に見えるため離縁し、子供ながらに自立せざる終えなくなった者たちは、まあ後先考えなかったのだから自業自得だろう。

貴族の大人もいたからなんとかなるとでも自信がついちゃったのかな?なんてことをいつの間にか思考していれば、ふとひとつの店で足を止める。

『オーダーメイド宝石店!どんなアクセサリーもすぐ作れます!』

オーダーメイド……うん、いいかもしれない。中に入ってみれば、なるほど中々にいい品揃えだ。王族ならば偽物を買わされるなと宝石の偽物、本物を見分けることも教育の内で、贋作など見極めるのが苦手なものもあるが、宝石は得意だからこれが本物なのがわかる。値段もその価値に合っているのでいい店にたどり着けたようだ。

「いらっしゃいませ。今回は宝石目的ですか?それともオーダーメイドでしょうか?」

宝石単体でも買えるのかと知るが、単体で買っても小物入れに入れたらそれまでだ。恐らくは大半オーダーメイドだろう。

「オーダーメイドで」

「ネックレス、ブレスレット、指輪、腕輪、ピアス、ブローチ、手錠、首輪、足枷などありますが、どういったものをご希望ですか?」

手錠、首輪、足枷は果たしてアクセサリーなのだろうか。

『兄上………っ?』

ついトアで想像してしまった。悲愴感漂うトアは可愛いというより、切なく綺麗だ。8歳で可愛いならともかく、綺麗さも持ち合わせているトアはどこまでも完璧だ。

少し揺らいでしまったが、これは誕生日プレゼント。でも首輪くらい……いや、王族が首輪してたらえらい勘違いをさせそうだ。首輪程度ならトア自体は喜んでつけそうだから余計に……。うわ、俺のモノ感が半端ない。しかし、トアを物扱いしたいわけじゃないからやはり却下。

ピアスは元々却下だし、ネックレスは令嬢がつけるイメージだが、令嬢以上にトアの方が絶対似合う。指輪は誤解を招きそうだが………お、いいこと思い付いた。

「ネックレスはチェーンだけを二つで。その上でシンプルに指定した宝石を埋め込んだだけの指輪を二つ用意してもらいたい」

「指輪ならば裏側に名前と簡単なメッセージを添えられますよ」

「ならセトアとリーアベル永久の愛を、で」

「え、貴方様もしかしてクレット殿下?」

「そうだ。第一王子になる。」

「あの、指輪に永久の愛をと刻む意味をご存じで?」

「結婚指輪になることか?」

「わかってて王太子様の名を?」

「誕生日が近くてな。まさか結婚指輪をもらうとは思わないだろ?真っ赤に照れる様子が思い浮かぶ。トアは可愛いからな」

「? 王太子様は表情がなく、冷たい方と聞いているのですが……」

「まあ、そうだな」

俺以外の前ならそうだろう。よくわからないといった店主を無視して、指輪に何の宝石を埋め込もうかと眺め、結果、宝石は俺とトアの目の色に合わせた蒼と赤の宝石。指輪自体の色も金、銀、黒、銅ならば変えられるようなので、蒼の宝石は金の指輪に、赤の宝石は黒の指輪に埋め込んでもらった。うまいこと髪の色にも合わせれたので満足だ。

後はチェーンに指輪を通せば終わり。繊細な魔法技術らしいがやることはシンプルだからと、店外に書かれた文字通りすぐにできた。お代を払えば、ひとつ目から満足が行き過ぎた品物な気がした。

この際身に付ける物から探すのがいいかもしれないと次は衣装を探しに。露出は避けるべきなので、それ以外ついつい似合いそうだと買いすぎた。王族が着るに相応しい高級店なので値段は前世の俺なら気絶しただろう。ちなみにトアのサイズは普段からトアに負けずベタベタと触る俺には簡単にわかります。トアだからこそ発揮される能力ですが。他のやつをベタベタ触る気はない。ちなみに衣装は多すぎたので、後日寮に送ってもらうことにした。

次に香水。なくてもトアはいい匂いだけど、あえて買う。最近お年頃な俺は気に入った香水があり、ひそかにつけている。トアにいい匂いだと、俺の匂いは安心すると言われたので変える予定はない。俺は、あえて自分のつけている香水を買ってプレゼントしようと考えた。

俺の普段の香水の匂いで満たされ、嬉しそうに笑うトアとか可愛いだろ?ただそれだけ。自己満足なプレゼント、上等じゃないか!

さて、これで三つなわけだが、衣装が多すぎるので、あえて消耗品の香水も取り入れたわけだし、後二つもそれでいいだろう。

結局買ったのはテディベアと俺が描かれた前世で言う写真サイズの絵である。消耗品じゃないじゃないかと言う苦情は受け付けない。

テディベアとかトアが持ったら絶対可愛いし、なんだかんだ考えて俺に関したプレゼントがやはりトアは喜ぶんじゃないかと最初の考えに戻った結果が俺の絵。あまりトアは絶対飾ると思うから、大きいのは恥ずかしく小さいサイズで描いてもらった。なんとも気恥ずかしいプレゼントである。

自己満足なものが大半だけど、喜んでくれるだろうと誕生日まで会えないトアを想像して、にんまりと笑いながら学園へ戻る俺が周囲の視線を気にしないのは言うまでもない。
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