婚約破棄された悪役令嬢にはヤンデレ婚約者が宛がわれました

2章元婚約者と旦那様

その頃～王子視点～

「随分早い結婚だな」

あれだけルーチェ伯爵を嫌っていたのを知った上でルーチェ伯爵の提案に乗り、あの女と婚約破棄して少し。まさか私より先にしてしまうとはどれだけ伯爵があれに惹かれているのかがわかる。

随分前から用意しないことにはこうもスムーズには行かないだろう。なんだってあれに惚れたのか理解できかねるが、人には色んな好みがある。

最後くらい一泡吹かせたかったが最後まで生意気な様子に婚約破棄に後悔はない。全く不貞だなどとあんな周囲のいる前で言うことでもないだろうに。ああ……考えるだけでまたいらいらする。

「セイ様、私たちはご参加できないのですよね？ミリーナ様の結婚式」

「まあ、父上に言われたからな。行く必要もあるまい」

所詮父上があれを気にかけようと身分は伯爵。理由こそ聞いているが、何故王族のこちらが頭を下げる形になるのか。確かに手放すには惜しい男かもしれないがいなくとも国は成り立つだろうに。

あれを婚約者にしてやったときは傑作だったのを幼いながらに覚えている。父上はあまり挑発するなと言われ、それならば面白味がないとすぐ興味こそ失ったが。

あれとの婚約はすぐ認めたくせに何故私の愛しのものは拒否するのか。あれとの婚約破棄をあっさり許し、伯爵との婚約を決定したのだって結局は父上があの伯爵の言いなりだからに過ぎない。

たまには私の希望だって叶えてくれてもよいだろうに。

『ルーチェ伯爵があの女性を王妃にするのはよくないとあらかじめ言われている』

先手を打ったのは私への嫌がらせだろうか。あれを婚約者にしてやったことへの。昔からあれへの執着は目に見えていただけにありえる。

だが、今更ながらそこまで執着して何故今まであれを私の婚約者としていたのか。それだけが謎だった。伯爵は父上にたった一言言えばすぐ私から奪えただろうに。

「私たちも早く認められて結婚式をあげたいですね」

「王族の結婚式は高位の貴族たちすら盛り上げる大イベントだからな。世界一幸せな結婚式となるだろう」

「まあ、素敵！」

純粋に喜ぶ私の愛した人物の笑顔は私の心に刺さった刺を払ってくれる。その笑顔を守り続けるためにも早く父上を認めさせなければ。

まずはとくにかくにもルーチェ伯爵に盲信するのをやめさせねばなるまい。父上にしても母上にしても、宰相すら伯爵なしに国は成り立たないなど抜かす。まるでそれこそ神でも崇めるように。

「所詮は身分が伯爵だけのただの人間に変わりないと目を覚まさせる時だな」

「セイ様………？」

私のこれからの未来のためにも国のあり方を変えてやる。愛しきもののためにも。