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1章これがモブだと?

漫才がしたいわけじゃないの

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モブはモブでもストーカーの場合は事前の連絡なく会えることを私は失念していた。

あの場から去って私は自分の足音以外の音にまず気がついたものの王宮の使用人がまったくいないわけではないのでその足音が響くだけだと気にしなかったのだけど……。

視線がビシバシ感じるし、私が止まると止まる足音。そして何やら使用人たちの視線は気のせいか私の後ろに注がれている。

所詮モブ……わかりやすすぎか!とツッコミたくなる酷さ。いや、婚約者になるわけだから大胆になっている可能性もありそうだけど。これからのために確認しなくては……と思い怖さ半分、好奇心半分で後ろを振り向く。

「頭出てますよ」

「え」

なんかことわざであったな。頭隠して尻隠さずだっけ?いやこの場合逆か。とりあえず隠れたつもりのストーカーモブさんは存外近くにいすぎて驚いて思わず声が出た。

なんでこんなもの置いてるんだとばかりの不自然なおっさんの銅像に隠れるモブ。顔、姿形ひとつも知らないがこれが私の婚約者になる人だろうと確信している自分がいる。

「私、ミリーナ………なんだったかしら?」

乙女ゲームでわざわざ家名まで覚えてなかったにしても、今までミリーナがやらかしてきたことは私が忘れていたことすら記憶しているのに何故肝心の名前が。

「ま、まさか、わ、忘れたのですか?家名を?」

「家名を忘れてしまうなんて……やっぱりだめね」

正直に言って自虐的になれば慌てて銅像から出てくる人物は……え?これモブ?ってくらいにイケメン……。え、イケメンだよね?私の目おかしい?

「そそそんなことはありません!私が覚えてますから!イエメンホブヤファスイルですよ!」

「イケメンモブヤバスギル?」

「イエメンホブヤファスイルです!」

もはやそんな長ったらしい家名覚える気にすらならない。さすがはストーカーはよく覚えてるわね。うんうん。

「家名はもういいです。貴方がクリティカル・ヒット様ですね?」

「すみません、そ、それは誰でしょう?私はエドウィン・ルーチェと申します」

「確かそういう名前でもありましたね!」

「う、うーん……生まれたときからそういう名前でしかなかったですね」

「まあそれはそれとして貴方が私の婚約者になる方ですの?」

「え、あ、はい」

やっぱり間違えじゃないのか。なんでミリーナは嫌がったのか……やっぱ身分的なもの?好青年なイケメン嫌がるとか贅沢にしか思えない。

しかも私……というかミリーナのストーカーなら転生したばかりの私のフォローも完璧じゃ?私相手に気弱な感じもするし意外どころか王子様に感謝してもいいくらいかも!

ストーカーがなんだ!それくらい相手がわかった今では気にしない!

「うん、とりあえずすぐ結婚しましょう!」

「えぇぇ……っ?」

「家名を覚えやすいものに変えたいの!」

「そんな理由でいいんですか……?」

ストーカーをするくらい悪役令嬢を好きだろうになんで私はイケメンと言えどモブに……ストーカー婚約者に残念な目を向けられているのだろう?まぁいいけどね!

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