男色官能小説短編集

明治通りの民

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写経と煩悩

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「小三郎、まだ終わらないのか」
 じわりと湿った手拭いを首に巻きつけ、先生は扇子と股下を広げた。精悍な肉付きには艶やかな汗が滲んでいた。先生はいつものようにおどけた眩しそうな目を小三郎に向けた。扇子のそよ風が小三郎に向けられる度に、不道徳な夏の香りがした。小三郎は顔の火照りが夏のせいなのか、その妖艶な香りのせいなのか、まだ気付いていなかった。小三郎の手は相変わらず墨だらけなのであった。
「小三郎、もう長月が来てしまうぞ。頭で覚えぬのなら、いっそのこと身体に書き込んでしまえばよかろう」
 剛毛の眉毛と精悍な顔つきに、口元だけ微笑んだ先生の表情は、怒っているのか、呆れているのか、冗談を言っているのか、小三郎には分かりづらかった。そんな先生の表情に、小三郎の忠誠心は磨かれてきたのかもしれない。
 先生は思い立ったかのように立ち上がり、正座している小三郎のあごを足先で小突いた。
「埒(らち)があかぬ。もうよい。袴を脱げ。身体に刻めば覚えてしまうはずだ。筆を渡せ。わしが写経してやろう」
「それは誠にお手数なのでございます」先生の言葉を理解できないまま、小三郎は袴を上半身だけ脱ぎ、先生の足元にひれ伏した。元服が近づく大人になりだした小三郎の肌は、日々の武道で鍛えられた胸筋と背筋により、いっそう輝きを増していた。汗の匂いでさえも漢の匂いが溢れ出していく。先生もまだ気付いていなかった。着実に成長していた小三郎の身体を。
 先生はすずりの先に墨を浸し、日焼けと汗ばんだ小三郎の背中に写経を始めた。おどけた先生と何も理解していない小三郎のやりとりは、筆が進むごとに変わっていった。
 最初はくすぐったいと話していた小三郎も、ひんやりとした筆先、先生の滑らかな筆使いに、小三郎は思わず声をもらした。
「ん、、」
 筆が進む度に、小三郎の背筋がぴくと動き、吐息が漏れる。くすぐったい筆先で、小三郎の体勢が次第に崩れ、盛り上がった臀部が突き出されていく。ひざまずく小三郎の背後で、先生もまた背徳感と緊張感を覚えた。先生の股間もまた次第に無意識に膨張していく。背中一面に書かれた般若心経は、こげた肌と汗ばんだ背中に漆黒の文字が黒光りしていた。先生は自身の思いもよらぬ心の動揺と背徳感、あってはならぬという思いと煩悩との間を行き来していた。
 先生は己の不道徳を隠しつつ、腰で止まった小三郎の袴をずらし、臀部を露出させた。小三郎の背後で頬を紅潮させ、そのまま写経を続けていく。臀部を巡回するように穴に筆が向かっていく。艶やかな臀部の筋肉と、上下する玉。漢になっていく小三郎の卍の匂い。小三郎の性の香りを間近で感じながら、先生の今にも突出しそうな逸物が、ある瞬間に爆発した。先生が写経から小三郎の陰茎に目を向けた時、先端から透明な液体が床下に垂れていたのである。
 ほとんど穴の周辺まで筆が進み、ひくつく小三郎のけつ卍(まんじ)。先生は筆の毛元からじっくりと軸まで挿入した。次第に小三郎は墨ではない何かが、熱い太筆の墨のような、だが硬くて大きなものがゆっくり擦り付けられていることに気がついた。先生はまた、自身の液体で小三郎の卍と周りの墨を溶かしほぐしていた。小三郎は臀部を突き出しては引き締め、自身の亀頭から出る汁を意識すればするほど、意図せず卍が広がって行くのであった。隆起した先生のほぼ直角にいきり立った男根が、突き出された穴にゆっくりと挿入されていった。小三郎は不埒な己の身体を恥じた。
「先生、、このような不道徳があっては、、」先生はゆっくりと竿を動かし、完全に挿入されると、今度は肛門の中を探索するかのごとく竿を上下に動かした。その度に小三郎の肉棒から透明な液体と吐息が溢れ出した。もう小三郎には、身体をどうにかする意識は残っていなかった。先生が小三郎の亀頭を、後ろから、その透明な液体を確認している時、蝉の声は止んだ。
「あ、、」
 思わず小三郎は先生の分厚い手の中で射精した。真っ白く濃厚な精液と真っ赤な小三郎の肉棒。先生の手の中で、ゆっくりそれが何であるか確かめられた。先生がそれを認識した時、先生の、汗ではない熱くぬるぬるとしたものが、小三郎の穴の中でどくどくと漏れ出した。先生は射精後も膨張したままの肉棒を慎重に抜いた。先生はずっと無言のままだった。
 蝉の音がまたとどろきだし、汗で溶け出した墨と白濁色の粘液が小三郎の卍から垂れていた。
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