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第二部 砂漠の国と星の魔神偏 第一章:ガラム帝国探訪編

第五十五話:砂漠の国を想う

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 六人も妻を娶り、好色一代勇者とか汚名を受けた。

 教皇国の大聖堂での挙式後は、ゴールドバーグ王国から順にアイゼン帝国を経てミズホ国と妻の出身地を巡り披露宴と手続きの旅に出ていた。

 嫁が王族や皇族なんで、各国の歴史書やら公文書に記録が取られる。

 こういう形で、自分が歴史に名を刻む事になろうとは思わなかったよ。

 本心はどうあれ、皆から祝福されたのはありがたかった。

 「まさか、三の兄貴もアイゼン帝国の皇室に婿入りしてたとはな」

 ミズホ国にあるネッケツジャー基地の自室で、日記を書きながら呟く。

 面倒だが、今後は前よりも王侯貴族とも付き合わねばならないのか。

 まあ、お姫様達に手を出した責任だから仕方ないが。

 日記を書き終えたと同時に、左の薬指に植え付けられた結婚指輪が輝く。

 妻達からの召喚の合図だ、俺は自室から転移した。

 翌日、ハードな夫婦生活を越えて迎える何度目かの朝。

 学校は夏休み。

 魔王軍との戦いが単位になったので、試験も補習もなしで突入してしまった。

 学校が休みでも、勇者の仕事は休みにならないのは辛い。

 「マッカ、今日も良い天気ね♪」
 「レオン、一応見回りなんだからな?」
 「良いじゃない、楽しく働きましょう♪」

 白ワンピを着た金髪ショートカットの巨乳美少女はレオンだ。

 俺は勇者の正装で。ケープとサーコート。

 二人で夏の王都でデートではなく見回りだ。

 「私達、王国の勇者でもあるし縄張りは守らないと♪」
 「まあ、理窟は通るな」
 「やっと女になれて結婚もできたんだもの、遠慮なくデートよ♪」
 「遊び気分じゃねえか!」
 
 レオンと夫婦漫才をしながら歩く。

 うん、俺は男だった親友を嫁にしたんだ。

 他にも五人の妻がいる。

 パーティーメンバーに手を出した好色勇者と言われても否定できない。

 手を出されたのは俺の方だ。

 うん、まあ責任は取ったし今後も取り続けて行くが。

 俺は嬉しそうにはしゃぐレオンに抱き着かれたまま冒険者ギルドの建物へと入る。

 右半分は役所、左半分はレストランと言う造りのギルド。

 ギルドも食堂もまだ利用している冒険者はいない。

 「いらっしゃいませ! ゆ、勇者様? あの、依頼は提供できませんよ?」

 銀行の事務員みたいな服のギルドの受付嬢さんが、おそるおそる俺達に告げる。

 勇者は正規の軍人扱いなので、半分傭兵の冒険者ギルドの依頼は受けられない。

 「ああ、わかってますって! 畏まらないで下さい」
 「それより、こちらが動くような情報はないかしら?」

 俺の代わりにレオンが受付嬢さんを睨みながら用件を聞く。

 「ご、ございません! 国内は現在、勇者様が出るほどの事件はないですから!」

 受付嬢さんが泣きそうな顔で告げる。

 黄緑色の髪でほんわかした印象の美人さんが台無しである。

 レオンは受付嬢さんが見目麗しいからって、警戒するなよ?

 「よし、睨みは利かせたわ♪」
 「いや、あの受付の人がむちゃくちゃ可哀想だろ?」
 「駄目よ、私達以外のマッカに絡みそうな女は警戒しないと!」
 「いや、可愛くむくれても駄目だろ!」

 勇者が一般人を脅すなよ。

 ギルドを出て溜息が出る。

 「これからはきちんと、正妻としてアピールしておかないと!」

 レオンが闘志を燃やす、何と戦ってるんだ!

 「それはいいから、今日は王立天文台へ行くんだろ?」

 俺は今日の予定を思い出して尋ねる。

 「ええ、魔王軍で世界の脅威は終わりじゃないしね」

 レオンが答える。

 そう、邪神と魔王具の脅威からは救われたが他にも脅威の種は尽きない。

 天文台に行くのは、外宇宙お呼び異次元からの侵略者の警戒の為だ。

 次元を超えて宇宙から来る敵を星の世界の魔物、星魔せいまと規定。

 星魔は流星となって侵入して来る。

 ゆえに、天体観測は各国で国境警備と同じ程の重要な任務となっていた。

 通りで馬車を拾って乗り込み、王都の郊外へと向かった。

 「はい、マッカの好きなおにぎりどうぞ♪」
 「ああ、ありがとう♪」
 「は~~~~♪ 幸せ~~~♪」
 「いや、叫ぶなよ」
 「良いじゃない、やっとマッカとイチャイチャできるのよ♪」

 馬車の中で弁当を食うと、レオンが悶えだした。

 男の時はある程度距離があったが、結婚したらゼロ距離になったよ。

 「今日は私とマッカのおにぎり記念日♪ 日記に書かなきゃ♪」
 「それ、公式文書にするなよ?」
 「え、きちんと文章にして出版するわよ?」
 「後世に残すなよ!」
 「いいえ、後世ではきっと大ヒット作になるわ♪」

 未来が不安になって来た。

 金も力もある嫁達を俺がどうにか暴走しないように抑えて、後世の人達に迷惑を掛けぬようにせねば。

 俺や仲間達の所為で、乙女ゲームの世界がドンドンカオスな方向に向かうのを止めて少しでも乙女ゲームの世界に戻して行きたい。

 俺らは、世界を面白おかしくするために地球から転生して来たんじゃないんだ。

 いや、乙女ゲームも色々あるからと言われそうだがカオス過ぎるのは駄目だろう。

 勇者とか神とかヒーローの力は、世界を守る為に振るわねば。

 新たな敵だけでなく、仲間の動向も注意せねば。

 「月の基地も交代制で見張らないとね」

 レオンが月に行ったムーントータスの事を告げる。

 邪神討伐の後、ムーントータスは新たな月のコアとして眠りについた。

 とはいえ、宇宙船の機能は使えるようにしてくれたので俺達の月面基地として転移魔法で行き来して利用させてもらっていた。

 各国の天文台と月の基地で、敵の侵入の監視体制を構築している。

 「つくづく、平和って準備期間だな」
 「そうね、平和を欲するならば戦に備えよだもん」

 レオンも戦士の顔になる。

 俺達は馬車から降りてドーム屋根で望遠鏡が突き出た天文台へ入る。

 「お待ちしておりました、勇者様」

 白いローブの小人族の老博士が出迎えてくれる。

 観測室に行き研究員の皆さんが動きまわる中で話を聞く。

 「それで、最近の観測結果はどうかしら?」

 レオンが尋ねる。

 「はい、国内では勇者様レベルの星魔は出ておりません」

 老博士が答える、つまり軍隊や冒険者で倒せる程度のは来てると。

 月面からの迎撃で撃ち漏らした奴かな?

 「ありがとう、星魔研究所にも顔を出すわ」
 「他の国ではどうなってます?」

 レオンが答え、次に俺が尋ねる。

 「五ヶ国では、先ほどお伝えした通りです」
 「と言う事は、ガラムや鍋王朝に関しては政治の仕事だな」

 俺はそう呟いてから礼を言う。

 ガラム帝国や鍋王朝にも、星魔が落ちて来てないわけがない。

 縁が薄い外国に行くには、政治の手続きがいる。

 天文台を出た俺達は、変身して空を飛び王都の中心部へと戻った。

 「ガラム帝国か、どんな所かわからん」
 「地理のお勉強しましょうね、家の国の東よサンサーラ砂漠の先♪」
 「いや、宗教とか法律とか文化とかだよ!」
 「カレーは、こっちだとガラム由来とかかしら♪」
 「転生者ジョークは良いから、出向く必要がありそうだな」

 魔王軍との戦いの時は、何者かにより存在はしているけど隔離されていた国。

 主神であるハレール様が隔離したとかじゃないらしい。

 翌日、ゴールドバーグ王国の王宮に呼び出された俺。

 「勇者マッカよ、呼びたてて申し訳ない」
 「いえ、王国の臣でもありますのでお気遣いなく」

 俺は片膝ついて礼をしたままの姿勢で国王陛下に答えた。

 「実は三日前に、ガラム帝国から使者を寄こすと文が届いたのだ」
 「わかりました、ではサンサーラ砂漠へ出迎えに参ります」
 「頼んだぞ、勇者よ」

 俺は国王陛下に頷き退室。

 基地へと帰り仲間達に陛下からの依頼を告げる。

 「では、私がお供いたしますわ♪」
 「拙者もお供するでござる♪」

 フローラとアオイ、イエローとブルーが名乗り出た。

 他の仲間は出動中なので、赤青黄色の三色チームでロボに乗り出撃した。
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