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ロジータ、隣国を目指す
第46話 怒りのロジータと、ベントリーさん
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思わず、は? となりました。
「おいおい、リンダ、このお嬢さんはいいのかい」
「ええ、終わりましたわ」
「終わってません!」
おじさんは気の毒そうな声で言いましたが、女の人はにこやかにそう言い切りました。
勝手に終わらされて頭にきた私は、思わず大きな声を出してしまいました。
「いやぁねぇ。これだから獣人は」
蔑むような声に、思わずカッとなった私は勢いよく立ち上がると、ガタンッと椅子を倒してしまいます。
その音に、他のお客さんや商人ギルドの人達の視線が集中します。
「ここの商人ギルドは獣人を馬鹿にするんですか!」
「お、お嬢さん、落ち着いて」
「ベントリーさん、いいんですよ。こんな獣人の子供のことなんて気にせず、どうぞ」
「しかしな」
後ろにいたおじさんはいい人のようで、オロオロしていますが、女の人は相変わらず、我関せずと言う感じです。
そして、誰も女の人のことを注意しようともしません。
「ほら、さっさとその席からどきなさい」
女の人が私の肩をつかもうとしたので、パシンっと手を払いました。
「痛いっ! 何するのっ!」
「触らないでください」
「ちょっと! ジャック! 追い出してっ!」
甲高い女の人の声に、カウンターの中にいた男の人が嫌々立ち上がってこちらに来ます。
「はぁ……おら、面倒かけんなよ」
「やめてください。もうここでは、頼まれても売りませんから」
「はいはい、出てって、出てって~」
男の人が近寄ってきたので、私はさっさと商人ギルドの建物から飛び出しました。
「なんなの、ここ」
思わず、商人ギルドのドアを睨みます。
アーカンスの商人ギルドの人達はとってもいい感じだったし、冒険者ギルドでも獣人だからといってこんな扱いを受けたことはありませんでした。
この街に入っても嫌な感じがなかったのに、最悪な気分です。
――こうなったら、本当に冒険者ギルドに持ち込まないとダメかしら。
この街の冒険者ギルドが、アーカンスの冒険者ギルドとどう繋がっているかわかりません。領が違うので、あまり関係は近くないかもしれない、と期待したいところですが、不安なことには変わりありません。
面倒だな、と思いながら車庫から馬車を出そうとしました。
「お、お嬢さん、お嬢さん」
はぁはぁと肩で息をしながら声をかけてきたのは、『ベントリーさん』と呼ばれていたおじさんでした。そのおじさんの背後には、強そうな護衛が二人に、ひょろりとした若者がついてきています。
「……なんなんです」
思わずジロリと目を向けます。
ベントリーさんが悪いわけではないのですが、どうしても苛立ちを隠すことはできません。
なぜか、もじもじしだしたベントリーさん。
「あ、うん、いや、あの、き、君がどんな素材を売りたかったのか知りたくてね」
「……なぜです? あなたには関係ないですよね?」
冷ややかに言うと、ベントリーさんは、しょぼーん、という音が聞こえそうなくらいしょげてしまいました。
「だ・ん・な・さ・ま。お急ぎください。次のお約束が迫ってます」
ひょろりとした若者が促すように声をかけます。
「わ、わかってる」
はぁ、と大きくため息をつくと気合の入った顔で、私を見ます。
「お、お嬢さんは、もしかしてエルフの冒険者のミリアの知り合いかい?」
「えっ?」
思わぬところで、母の名前が出てきました。
「おいおい、リンダ、このお嬢さんはいいのかい」
「ええ、終わりましたわ」
「終わってません!」
おじさんは気の毒そうな声で言いましたが、女の人はにこやかにそう言い切りました。
勝手に終わらされて頭にきた私は、思わず大きな声を出してしまいました。
「いやぁねぇ。これだから獣人は」
蔑むような声に、思わずカッとなった私は勢いよく立ち上がると、ガタンッと椅子を倒してしまいます。
その音に、他のお客さんや商人ギルドの人達の視線が集中します。
「ここの商人ギルドは獣人を馬鹿にするんですか!」
「お、お嬢さん、落ち着いて」
「ベントリーさん、いいんですよ。こんな獣人の子供のことなんて気にせず、どうぞ」
「しかしな」
後ろにいたおじさんはいい人のようで、オロオロしていますが、女の人は相変わらず、我関せずと言う感じです。
そして、誰も女の人のことを注意しようともしません。
「ほら、さっさとその席からどきなさい」
女の人が私の肩をつかもうとしたので、パシンっと手を払いました。
「痛いっ! 何するのっ!」
「触らないでください」
「ちょっと! ジャック! 追い出してっ!」
甲高い女の人の声に、カウンターの中にいた男の人が嫌々立ち上がってこちらに来ます。
「はぁ……おら、面倒かけんなよ」
「やめてください。もうここでは、頼まれても売りませんから」
「はいはい、出てって、出てって~」
男の人が近寄ってきたので、私はさっさと商人ギルドの建物から飛び出しました。
「なんなの、ここ」
思わず、商人ギルドのドアを睨みます。
アーカンスの商人ギルドの人達はとってもいい感じだったし、冒険者ギルドでも獣人だからといってこんな扱いを受けたことはありませんでした。
この街に入っても嫌な感じがなかったのに、最悪な気分です。
――こうなったら、本当に冒険者ギルドに持ち込まないとダメかしら。
この街の冒険者ギルドが、アーカンスの冒険者ギルドとどう繋がっているかわかりません。領が違うので、あまり関係は近くないかもしれない、と期待したいところですが、不安なことには変わりありません。
面倒だな、と思いながら車庫から馬車を出そうとしました。
「お、お嬢さん、お嬢さん」
はぁはぁと肩で息をしながら声をかけてきたのは、『ベントリーさん』と呼ばれていたおじさんでした。そのおじさんの背後には、強そうな護衛が二人に、ひょろりとした若者がついてきています。
「……なんなんです」
思わずジロリと目を向けます。
ベントリーさんが悪いわけではないのですが、どうしても苛立ちを隠すことはできません。
なぜか、もじもじしだしたベントリーさん。
「あ、うん、いや、あの、き、君がどんな素材を売りたかったのか知りたくてね」
「……なぜです? あなたには関係ないですよね?」
冷ややかに言うと、ベントリーさんは、しょぼーん、という音が聞こえそうなくらいしょげてしまいました。
「だ・ん・な・さ・ま。お急ぎください。次のお約束が迫ってます」
ひょろりとした若者が促すように声をかけます。
「わ、わかってる」
はぁ、と大きくため息をつくと気合の入った顔で、私を見ます。
「お、お嬢さんは、もしかしてエルフの冒険者のミリアの知り合いかい?」
「えっ?」
思わぬところで、母の名前が出てきました。
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