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ロジータ、隣の領を目指す
第41話 船に乗る
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続々と人々や馬車が乗船していきます。
私たちも16時に出る船に乗るために、大きな馬車が乗り込んだ後を、うちの小さい馬車でついていきます。
「嬢ちゃん、券を見せてくれるか? うん、よし、じゃあ、こっちおいで」
腕に腕章がついているおじさんが、優しく声をかけてくれました。
「ありがとうございます」
私はできるだけ他の馬車にぶつからないように、隅の方へといれました。
「うまいもんだ」
おじさんは感心したように言いました。
そのおじさんから聞くところによると、私たちが向かうカジャダインは川上にあるそうで、戻ってくる船よりも時間がかかるのだそうです。
「普通なら、だいたい1時間くらいなんだが、今日は馬車が多いんで、もう少し時間がかかるかもしれん」
そういえば、乗船する人も多かった気がします。
「せっかくだ、甲板のほうに行って川を見てきな。馬車は、俺が見ててやるけ」
最初は馬車に乗ったままでいいかと思ったのですが、時間がかかりそうなことと、おじさんの勧めもあり、双子たちを馬車から下ろしました。
「ありがとうございます。あ、この馬車には防犯の魔道具がついてるので、触らないようにしてください」
「おお、わかった、わかった。ちびっ子たち、走るんじゃねーぞ」
おじさんの声に頭を下げながら、私たちは甲板に向かいました。
――うわ、やっぱり川幅、広い。
双子の手を握りながら、甲板の縁まで近寄ります。
「みず~?」
「いっぱい」
「これが川よ」
アーカンスには大きな川などなかったので、双子も興味津々です。
手すりの隙間に頭を突っ込みそうになっているのを、慌てて引っ張ろうとしますが、二人がかりでは、私の方が負けそうになります。
「おいおい、危ないぞ」
いきなり男の人の声が聞こえたかと思ったら、ひょいっと双子の襟首を引っ張られました。
「うわー」
「きゃー」
「えぇぇ!?」
双子の叫び声に、周囲の視線がこちらに向きます。男の人は慌てて、襟首から手を離しました。
「ああ、すまん、すまん」
30代くらいの男性でしょうか。格好からして、どこかの馬車の護衛に雇われた冒険者でしょうか。
見知らぬ人に摑まれたので、双子も驚いたのでしょう。涙目になりながら私に抱きついてきました。
「でも、もし落ちたら、姉ちゃんを困らせることになったんだぞ?」
男性は双子に諭すように注意してくれました。その声色が荒っぽい冒険者に似合わず、優しい感じだったせいでしょうか、双子は大人しく頷きました。
「ありがとうございます」
「いやいや。大変だね、二人の面倒を見るんじゃ」
おじさんにも小さい子供がいるそうで、甲板に現れた私と双子が気になったそうです。
「おい、カーティス、旦那が呼んでるぞ」
「わかった。お前ら、姉ちゃんの言うこと聞くんだぞ?」
似たような冒険者の格好をした男性に声をかけられて、カーティスと呼ばれたおじさんは私たちに手を振って船内に戻っていきました。
「ふね、うごいてる?」
「あ、本当だ」
ダニーの言葉に、私も景色が動き出していたことに気が付きました。
+ + + + + + + +
やっと『黄金の獅子』がダンジョンから抜け出しました。
この時点で、アマンダ&ギルマスは、査察官によって捕縛されています。
私たちも16時に出る船に乗るために、大きな馬車が乗り込んだ後を、うちの小さい馬車でついていきます。
「嬢ちゃん、券を見せてくれるか? うん、よし、じゃあ、こっちおいで」
腕に腕章がついているおじさんが、優しく声をかけてくれました。
「ありがとうございます」
私はできるだけ他の馬車にぶつからないように、隅の方へといれました。
「うまいもんだ」
おじさんは感心したように言いました。
そのおじさんから聞くところによると、私たちが向かうカジャダインは川上にあるそうで、戻ってくる船よりも時間がかかるのだそうです。
「普通なら、だいたい1時間くらいなんだが、今日は馬車が多いんで、もう少し時間がかかるかもしれん」
そういえば、乗船する人も多かった気がします。
「せっかくだ、甲板のほうに行って川を見てきな。馬車は、俺が見ててやるけ」
最初は馬車に乗ったままでいいかと思ったのですが、時間がかかりそうなことと、おじさんの勧めもあり、双子たちを馬車から下ろしました。
「ありがとうございます。あ、この馬車には防犯の魔道具がついてるので、触らないようにしてください」
「おお、わかった、わかった。ちびっ子たち、走るんじゃねーぞ」
おじさんの声に頭を下げながら、私たちは甲板に向かいました。
――うわ、やっぱり川幅、広い。
双子の手を握りながら、甲板の縁まで近寄ります。
「みず~?」
「いっぱい」
「これが川よ」
アーカンスには大きな川などなかったので、双子も興味津々です。
手すりの隙間に頭を突っ込みそうになっているのを、慌てて引っ張ろうとしますが、二人がかりでは、私の方が負けそうになります。
「おいおい、危ないぞ」
いきなり男の人の声が聞こえたかと思ったら、ひょいっと双子の襟首を引っ張られました。
「うわー」
「きゃー」
「えぇぇ!?」
双子の叫び声に、周囲の視線がこちらに向きます。男の人は慌てて、襟首から手を離しました。
「ああ、すまん、すまん」
30代くらいの男性でしょうか。格好からして、どこかの馬車の護衛に雇われた冒険者でしょうか。
見知らぬ人に摑まれたので、双子も驚いたのでしょう。涙目になりながら私に抱きついてきました。
「でも、もし落ちたら、姉ちゃんを困らせることになったんだぞ?」
男性は双子に諭すように注意してくれました。その声色が荒っぽい冒険者に似合わず、優しい感じだったせいでしょうか、双子は大人しく頷きました。
「ありがとうございます」
「いやいや。大変だね、二人の面倒を見るんじゃ」
おじさんにも小さい子供がいるそうで、甲板に現れた私と双子が気になったそうです。
「おい、カーティス、旦那が呼んでるぞ」
「わかった。お前ら、姉ちゃんの言うこと聞くんだぞ?」
似たような冒険者の格好をした男性に声をかけられて、カーティスと呼ばれたおじさんは私たちに手を振って船内に戻っていきました。
「ふね、うごいてる?」
「あ、本当だ」
ダニーの言葉に、私も景色が動き出していたことに気が付きました。
+ + + + + + + +
やっと『黄金の獅子』がダンジョンから抜け出しました。
この時点で、アマンダ&ギルマスは、査察官によって捕縛されています。
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