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第13章 娘と私と人気俳優のパパ
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寺沢さんが車から出て、小一時間ほどたったころ、外が騒がしくなった。
後部座席の窓のスモークガラス越しに、少しずつ人の塊が移動してきているのがわかる。その先頭に立ってるのが、荷物を持った寺沢さんと、遼ちゃんだ。
彼らの後ろには、マスコミ関係なのか、スーツを着た男女や、カメラを持った人がいる。
私は慌てて、バンの後ろの方の座席に移動して、ドアが開いても見えそうにない場所に隠れた。
ダンッ!
勢いよく後ろのドアが開いて、荷物を載せる寺沢さん。
うわ、まさか、そっちが開くとは思わなかった。慌てて、身を伏せる。
座席の方のドアも開いて、無言で乗り込んできたのは遼ちゃんで、顔つきが固いせいか、一年前に比べて、少し精悍になったような気がする。
マイクを差し込んでこようとした取材陣を無視して、遼ちゃんはドアを無理やり閉じた。
「はぁぁぁっ」
遼ちゃんの疲れたような大きなため息。
「なんなんだよ。まさか、こんなにいると思わなかったよ」
ボソッと呟いて、頭を抱え込む遼ちゃん。
運転席に回り込んだ寺沢さんは、無言で車を発進させた。
「寺沢さん、まっすぐ美輪の実家だよね」
「ああ。でも、その前に」
「あ?」
「後ろ」
「後ろ? 何……っ!?」
しかめっ面の遼ちゃんが振り向いた。バッチリ目が合う。
「よっ」
思わず右手をあげて、挨拶してしまった。
「み、美輪っ!?」
イケメンが台無しになるような驚いた顔。
やばい。面白すぎる。
「うん。お帰り」
「た、ただいま」
「で。これ、碧」
ママコートから、少しだけ顔をのぞかせた碧は、眠そうな顔をしたまま、遼ちゃんのほうを見た。けっこう煩かったはずなのに、泣きもしなかった我が娘。けっこう図太い神経の持ち主かもしれない。
「う、うわ~っ」
今度は、デレデレな顔。これ、ファンが見たら減滅されちゃわないだろうか?
「寺沢さんっ、なんで言ってくれなかったの!」
「あの状況じゃ、言えないでしょうが」
車は移動中だったのに、遼ちゃんはわざわざ私の隣に移ってきた。
ママコートの端を下して、碧の顔を見ようとする。
「か、かわいい。それとこの甘い匂いは、ミルクの匂い?」
「碧~、パパが帰ってきたよ。お帰り~って」
不思議そうに遼ちゃんを見つめる碧に、顔を真っ赤にして見つめる遼ちゃん。さっきまでの渋い顔はどこえやら、である。
「早く抱っこしたい……」
「ダメ。うちについたらね。移動中は危ないから」
「うん」
少し残念そうな顔をするから、思わず頬にキスをした。
「本当におかえりなさい」
私の言葉に、遼ちゃんは少し照れたような、嬉しそうな顔で微笑んだ。
後部座席の窓のスモークガラス越しに、少しずつ人の塊が移動してきているのがわかる。その先頭に立ってるのが、荷物を持った寺沢さんと、遼ちゃんだ。
彼らの後ろには、マスコミ関係なのか、スーツを着た男女や、カメラを持った人がいる。
私は慌てて、バンの後ろの方の座席に移動して、ドアが開いても見えそうにない場所に隠れた。
ダンッ!
勢いよく後ろのドアが開いて、荷物を載せる寺沢さん。
うわ、まさか、そっちが開くとは思わなかった。慌てて、身を伏せる。
座席の方のドアも開いて、無言で乗り込んできたのは遼ちゃんで、顔つきが固いせいか、一年前に比べて、少し精悍になったような気がする。
マイクを差し込んでこようとした取材陣を無視して、遼ちゃんはドアを無理やり閉じた。
「はぁぁぁっ」
遼ちゃんの疲れたような大きなため息。
「なんなんだよ。まさか、こんなにいると思わなかったよ」
ボソッと呟いて、頭を抱え込む遼ちゃん。
運転席に回り込んだ寺沢さんは、無言で車を発進させた。
「寺沢さん、まっすぐ美輪の実家だよね」
「ああ。でも、その前に」
「あ?」
「後ろ」
「後ろ? 何……っ!?」
しかめっ面の遼ちゃんが振り向いた。バッチリ目が合う。
「よっ」
思わず右手をあげて、挨拶してしまった。
「み、美輪っ!?」
イケメンが台無しになるような驚いた顔。
やばい。面白すぎる。
「うん。お帰り」
「た、ただいま」
「で。これ、碧」
ママコートから、少しだけ顔をのぞかせた碧は、眠そうな顔をしたまま、遼ちゃんのほうを見た。けっこう煩かったはずなのに、泣きもしなかった我が娘。けっこう図太い神経の持ち主かもしれない。
「う、うわ~っ」
今度は、デレデレな顔。これ、ファンが見たら減滅されちゃわないだろうか?
「寺沢さんっ、なんで言ってくれなかったの!」
「あの状況じゃ、言えないでしょうが」
車は移動中だったのに、遼ちゃんはわざわざ私の隣に移ってきた。
ママコートの端を下して、碧の顔を見ようとする。
「か、かわいい。それとこの甘い匂いは、ミルクの匂い?」
「碧~、パパが帰ってきたよ。お帰り~って」
不思議そうに遼ちゃんを見つめる碧に、顔を真っ赤にして見つめる遼ちゃん。さっきまでの渋い顔はどこえやら、である。
「早く抱っこしたい……」
「ダメ。うちについたらね。移動中は危ないから」
「うん」
少し残念そうな顔をするから、思わず頬にキスをした。
「本当におかえりなさい」
私の言葉に、遼ちゃんは少し照れたような、嬉しそうな顔で微笑んだ。
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