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第9章 宣戦布告される私と人気俳優の彼
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さっきの笑いはしまい込んで、真面目な顔で遼ちゃんに近づく阿川 光太朗は、芸能人オーラばんばんで、さすがに私も固まった。
「遼、ケガ、大丈夫か?」
「大丈夫です。すみません、今日の撮影……」
「仕方ないさ。とりあえず、お前のところはカットになっちまったけど」
「……ああ、悔しいなぁ」
「で。こちらは?」
ニッコリと極上の笑顔を見せた彼は、さすが『抱かれたい男』ランカー。
「その色気盛り盛りな笑顔、やめてください」
遼ちゃんが真っ青な顔で阿川さんを見上げてる。
「なんだよ。これが普通の俺の笑顔だ」
はっ!?
クラっとしそうになった私。思わず顔が真っ赤になる。
「み、美輪~、負けるな~!」
泣きそうな顔の遼ちゃんに、笑ってしまいそうになる。
「そうか、キミが美輪ちゃんか……遼から、色々聞いてるよ」
「え?」
私のどんな話を聞いているんでしょうか……思わず、遼ちゃんをジト―ッと見る。
「な、何もたいしたこと言ってないよ」
「んー、遼の大事な人ってことくらい?」
ニヤニヤしながら遼ちゃんを見つめる阿川さん。
「ところで、美輪ちゃん、ちょっと遼と話があるから、外、出てくれるかな」
「あ、はい。遼ちゃん、今日はもう帰るね。一馬、待たせてるし」
「うん」
寂しそうにお留守番を任される子犬のような目で見つめてくる。
「ああ、美輪ちゃん、待っててくれれば、その一馬って子も一緒に送るよ」
えぇぇぇぇっ!? 『抱かれたい男』が送ってくれる!?(そこばかり強調)
遼ちゃんは明らかに嫌そうな顔をしているけど、一馬も一緒だし。
「ちょっと待っててね」
バチッとウィンクされました。この人がやると嫌味じゃない上に、破壊力満点。
「は、はい」
素直に病室を出たのは言うまでもない。病室から出ると、休憩スペースに向かう。一馬はスマホとにらめっこ。
「一馬」
眉間にシワを寄せたまま見上げる。
「もう、いいのかよ」
「ん、とりあえず」
「じゃあ、帰る?」
「いや、今、遼ちゃんとこに来てる人が、送ってくれるって」
「え。俺はいいや。この時間だったら、送ってもらうほどじゃないし」
「いや、でも」
「わりぃ、ちょっと俺も急用できた」
そそくさと帰っていく一馬に、ぽつんと、休憩スペースに一人残された私。
……そんな私に忍び寄る影。
「あの」
びくっとして振り返ると、看護師さんたちの集団。こんだけ集まると、壮観。
「は、はい?」
「相模さんの病室から出てこられましたよね?」
「ああ、はい」
「さっき入っていった男性って」
「あー、えーと」
「もしかして、阿川さんですか!?」
身を乗り出して聞いてきたのは、横にかなりのボリューミーなおばさん看護師。
か、顔が怖すぎるっ!
「ご、ごめんなさい、わかりませんっ」
慌てて、非常階段のほうに走って逃げた。
その姿に気が付いたのか、遼ちゃんの病室から出た阿川さんが、追いかけてきて、階段を駆け下りている途中で捕まえられた。
「きゃあぁぁっ!」
「美輪ちゃん、待ってって!」
「あ、ああ。す、すみません」
「はぁっ、美輪ちゃん、足、早いね」
「そ、そんなことはないですっ」
うっすらにじんだ額の汗を、右手でぬぐうと、再び色気満点の笑顔の爆弾投下。
「いやいや、追いつくの大変だったし」
「えーと、とりあえず、もう帰るつもりなんですけど」
「そうだね。送るよ。」
「あ、いや、一馬が先に帰っちゃったんで」
「そうなんだ。じゃあ、美輪ちゃんだけでいいね」
そう言うと、あっさり、私の左手をつかんで歩いていく。
「え、え、えぇぇぇ?」
結局、阿川さんの車に乗せられることになった。
「遼、ケガ、大丈夫か?」
「大丈夫です。すみません、今日の撮影……」
「仕方ないさ。とりあえず、お前のところはカットになっちまったけど」
「……ああ、悔しいなぁ」
「で。こちらは?」
ニッコリと極上の笑顔を見せた彼は、さすが『抱かれたい男』ランカー。
「その色気盛り盛りな笑顔、やめてください」
遼ちゃんが真っ青な顔で阿川さんを見上げてる。
「なんだよ。これが普通の俺の笑顔だ」
はっ!?
クラっとしそうになった私。思わず顔が真っ赤になる。
「み、美輪~、負けるな~!」
泣きそうな顔の遼ちゃんに、笑ってしまいそうになる。
「そうか、キミが美輪ちゃんか……遼から、色々聞いてるよ」
「え?」
私のどんな話を聞いているんでしょうか……思わず、遼ちゃんをジト―ッと見る。
「な、何もたいしたこと言ってないよ」
「んー、遼の大事な人ってことくらい?」
ニヤニヤしながら遼ちゃんを見つめる阿川さん。
「ところで、美輪ちゃん、ちょっと遼と話があるから、外、出てくれるかな」
「あ、はい。遼ちゃん、今日はもう帰るね。一馬、待たせてるし」
「うん」
寂しそうにお留守番を任される子犬のような目で見つめてくる。
「ああ、美輪ちゃん、待っててくれれば、その一馬って子も一緒に送るよ」
えぇぇぇぇっ!? 『抱かれたい男』が送ってくれる!?(そこばかり強調)
遼ちゃんは明らかに嫌そうな顔をしているけど、一馬も一緒だし。
「ちょっと待っててね」
バチッとウィンクされました。この人がやると嫌味じゃない上に、破壊力満点。
「は、はい」
素直に病室を出たのは言うまでもない。病室から出ると、休憩スペースに向かう。一馬はスマホとにらめっこ。
「一馬」
眉間にシワを寄せたまま見上げる。
「もう、いいのかよ」
「ん、とりあえず」
「じゃあ、帰る?」
「いや、今、遼ちゃんとこに来てる人が、送ってくれるって」
「え。俺はいいや。この時間だったら、送ってもらうほどじゃないし」
「いや、でも」
「わりぃ、ちょっと俺も急用できた」
そそくさと帰っていく一馬に、ぽつんと、休憩スペースに一人残された私。
……そんな私に忍び寄る影。
「あの」
びくっとして振り返ると、看護師さんたちの集団。こんだけ集まると、壮観。
「は、はい?」
「相模さんの病室から出てこられましたよね?」
「ああ、はい」
「さっき入っていった男性って」
「あー、えーと」
「もしかして、阿川さんですか!?」
身を乗り出して聞いてきたのは、横にかなりのボリューミーなおばさん看護師。
か、顔が怖すぎるっ!
「ご、ごめんなさい、わかりませんっ」
慌てて、非常階段のほうに走って逃げた。
その姿に気が付いたのか、遼ちゃんの病室から出た阿川さんが、追いかけてきて、階段を駆け下りている途中で捕まえられた。
「きゃあぁぁっ!」
「美輪ちゃん、待ってって!」
「あ、ああ。す、すみません」
「はぁっ、美輪ちゃん、足、早いね」
「そ、そんなことはないですっ」
うっすらにじんだ額の汗を、右手でぬぐうと、再び色気満点の笑顔の爆弾投下。
「いやいや、追いつくの大変だったし」
「えーと、とりあえず、もう帰るつもりなんですけど」
「そうだね。送るよ。」
「あ、いや、一馬が先に帰っちゃったんで」
「そうなんだ。じゃあ、美輪ちゃんだけでいいね」
そう言うと、あっさり、私の左手をつかんで歩いていく。
「え、え、えぇぇぇ?」
結局、阿川さんの車に乗せられることになった。
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