上 下
5 / 95
第1章 幼馴染が王子様になってました

05

しおりを挟む
 早目に家を出て、待ち合わせの時間より十分ほど早く着いた。これは、私の性分だから仕方がない。

 しかし。打ち上げの会場の入口で、一馬を待つこと……四十分。



 その間……連絡なし。



 か~~ず~~ま~~め~~!



 誘われているのは、もともと一馬で、私一人で会場に入る勇気はない。

 せっかくの機会だったけど、仕方がない。大きなため息をついて、入口から離れようとした。



「ごめ~ん、美輪さん、待った~?」



 ちょうど目の前に着いたタクシーから、オカマキャラの遼ちゃん登場。

 ……ということは。

 後から一馬も降りてきた。



「何よ、二人、一緒なの? だったら連絡くらい入れなさいよ!」



 怒り心頭の私に対して、一馬は、「ごめん、ごめん。ゲームしすぎて、充電きれた」と、飄々とした言い訳。



「だったら、遼ちゃんに代わりに連絡してもらえばいいじゃない!」

「えー、そしたら、美輪へのドッキリにならないじゃん」

「そうそう、僕が一緒ってわかったら、保護者の美輪さん、来てくれないんじゃないかって思って~」



 のほほんと言い訳するオカマ遼ちゃんに脱力。ああ、王子様はどこへいっちゃった?



「もう始まってるだろうから、入ろう」



 王子様キャラ復活した遼ちゃんは、私たちを連れて店内へ。







 店内は貸し切り状態。ちらほらと、ドラマでも見たことがある顔ぶれが。さすが芸能界。美男美女がたくさん。目の保養だわ~、と、部屋の隅の方で堪能してた。



 一馬は一馬で、知り合いに挨拶にいったり、何かと売り込んでいる模様。お子様なのに、すごいなぁ、と思いながら、クリームチーズのディップを山盛りつけたブルスケッタを頬張っていると。



「美輪さん、ちゃんと食べてます?」



 王子様キャラの遼ちゃん登場。こんな大口あけてるタイミングにくるなんて、なんか狙ってましたか? と言いたいくらい。

 慌てて飲み込んで、むせ返るというお決まりのパターン。



「え、え、だ、大丈夫!?」



 慌てて近くにあった飲み物を渡してくれる遼ちゃん……一気に飲むと……ねぇ、誰? こんなとこに日本酒置いたの。

 あまりお酒に強くない私、ノックアウト寸前。

 ぽわんとしてる私の口もとに、王子様遼ちゃんが親指を添えてきた。



 ふぉぉぉっ!?



 酔ってるから、余計に王子様度UPして見えるんですけどっ!?

 妄想暴走しちゃうんですけどっ!?



 私が勝手に一人で盛り上がってるところで、王子様遼ちゃんは私の口元に視線集中。そして親指にはクリームチーズ。



 え?



 王子様遼ちゃんは、ぱくっとその親指ごとクリームチーズを食べた。



 「やっぱり、美輪さんのお口って、美味しそうだよね。」



 クスッ。



 なんか、笑われた?

 王子様キャラに妖艶さがプラスされた遼ちゃんから、目が離せない。



「あの時みたいに、口でとってあげたほうがよかった?」

「っ!?」



 私のファーストキス。

 チビでおデブちゃんだった遼ちゃんは、そういう色気のあるキスをしたのではなく、食欲の延長で、私の口についていた生クリームを食べたんだろう、と思ってた。

 だって、まだ小学生の頃の話だし。

 今日みたいに、妖艶王子様になってそんなこと言われたら、勘違いしちゃうじゃないか。ただでさえ、私、酔っ払いなのに!



「りょ、遼ちゃん、その顔で言っちゃ、ダメ。勘違いしちゃう」



 ドキドキしながらも、小声で注意すると



「なーに? 聞こえな~い」



 そう言って、私の隣に急接近。

 もしかして、遼ちゃんも酔ってる? あれ? 

 遼ちゃん、未成年だっけ? 大丈夫?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

愛するオトコと愛されないオンナ~面食いだってイイじゃない!?

ルカ(聖夜月ルカ)
恋愛
並外れた面食いの芹香に舞い込んだ訳ありの見合い話… 女性に興味がないなんて、そんな人絶対無理!と思ったけれど、その相手は超イケメンで…

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

誘惑の延長線上、君を囲う。

桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には "恋"も"愛"も存在しない。 高校の同級生が上司となって 私の前に現れただけの話。 .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ Иatural+ 企画開発部部長 日下部 郁弥(30) × 転職したてのエリアマネージャー 佐藤 琴葉(30) .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ 偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の 貴方を見つけて… 高校時代の面影がない私は… 弱っていそうな貴方を誘惑した。 : : ♡o。+..:* : 「本当は大好きだった……」 ───そんな気持ちを隠したままに 欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。 【誘惑の延長線上、君を囲う。】

処理中です...