77 / 95
第10章
71
しおりを挟む
翌日には、再びアーロンに抱えられて旅の空、である。
下手な乗合馬車なんかよりも早いのだから、当然か。若干、抱えられてるので、安定感はないんだけど。
「お、よし、街が見えてきたな」
相変わらず余裕のアーロンに、俺のほうも慣れてきた。
大きな街のせいもあって、中に入るのに並ぶ必要があるらしい。馬車の脇に、歩きの旅人たちが並ぶ。俺たちもその後ろに並んで待つ。さすがに、ここでは下ろしてもらう。
「なんか、ずいぶん時間かかってるな」
「どうもいつも以上に検問に時間かけてるようだぞ」
アーロンの独り言に、先に前に並んでいたおじさんが答えてくれた。
「犯罪者でも探してるんですかね」
「かもなぁ」
もしかして、例のエルフのことだろうか。
冒険者ギルドだけではなく、国とか街単位でも捜索が始まったってことなのだろう。
その後も30分近く待たされて、ようやく門までやってきた。
今回もアーロンのギルドカードで入れるかと思ったのだけれど、若い衛兵に俺の方が止められた。
「そちらのお子さんは」
「知り合いから預かってるんだが」
「お知り合いですか……一応、そのフード、とってもらえるかな」
最初はアーロンのAランクのギルドカードに目を輝かせてた衛兵だったけれど、俺の方に向けた目には、なんだか嫌な感じしかしない。
俺はフードをぎゅっと手で押さえ込んで、アーロンの背後に隠れる。
「嫌がっているから、止めてやってくれないか」
アーロンがなんでもないような感じで、注意するが、衛兵の方は「規則ですので」とか言いだした。
「は? 規則? こんな子供相手に?」
「ええ。今、どこの街でも、子供であっても顔の確認をさせてるんです」
「何のために」
「今、冒険者ギルドで探している子供がいるんですよ」
その言葉にドキッとする。
「まさか、それを調べるために、こんな列になってるのか? それは冒険者ギルドの仕事だろう?」
「でも、見つけたなら誰でもが報奨金を貰えますからね」
あっさりと言う若い衛兵に、アーロンも渋い顔になる。反対側の列の対応をしている中年の衛兵も同じなんだろう。じろじろと俺の方を見ている。
――最悪だ。
アーロンの後ろに隠れていた俺を、また別の衛兵が脇から出てきて捕まえようとする。
「い、嫌だっ」
掴まってたまるかっ!
俺はフードを掴んだまま、クルクルとアーロンの足元を逃げ回る。
「おい、落ち着け。すぐに済むんだから」
そう声をかけてくるのは追いかけまわしている衛兵だったが、なかなか俺を捕まえられない。そんな様子をアーロンはニヤニヤ笑いながら見ている。
「ア、アーロンさん、ちょっと、あなたの連れている子供なんですから、言ううこと聞かせてくださいっ」
「いやぁ、あいつは俺の言うこともまともにきかないからなぁ」
何言ってるんだ、コイツ。
ムカッとしながらも、あちこち逃げまくる。しかし、さすがに、俺だって疲れるわけで。
「くそっ、捕まえたぞっ! おらっ、フードを取れっ!」
思い切りフードを取られてしまった。
「あ」
「おっ」
衛兵たちは、がっかりした顔。アーロンは、ちょっと驚いている。周囲の他の旅人たちは、いい加減にしろって感じな顔になっている。
「す、すまんな」
そして、そっとフードを戻してくれた。
……何が起こっている?
下手な乗合馬車なんかよりも早いのだから、当然か。若干、抱えられてるので、安定感はないんだけど。
「お、よし、街が見えてきたな」
相変わらず余裕のアーロンに、俺のほうも慣れてきた。
大きな街のせいもあって、中に入るのに並ぶ必要があるらしい。馬車の脇に、歩きの旅人たちが並ぶ。俺たちもその後ろに並んで待つ。さすがに、ここでは下ろしてもらう。
「なんか、ずいぶん時間かかってるな」
「どうもいつも以上に検問に時間かけてるようだぞ」
アーロンの独り言に、先に前に並んでいたおじさんが答えてくれた。
「犯罪者でも探してるんですかね」
「かもなぁ」
もしかして、例のエルフのことだろうか。
冒険者ギルドだけではなく、国とか街単位でも捜索が始まったってことなのだろう。
その後も30分近く待たされて、ようやく門までやってきた。
今回もアーロンのギルドカードで入れるかと思ったのだけれど、若い衛兵に俺の方が止められた。
「そちらのお子さんは」
「知り合いから預かってるんだが」
「お知り合いですか……一応、そのフード、とってもらえるかな」
最初はアーロンのAランクのギルドカードに目を輝かせてた衛兵だったけれど、俺の方に向けた目には、なんだか嫌な感じしかしない。
俺はフードをぎゅっと手で押さえ込んで、アーロンの背後に隠れる。
「嫌がっているから、止めてやってくれないか」
アーロンがなんでもないような感じで、注意するが、衛兵の方は「規則ですので」とか言いだした。
「は? 規則? こんな子供相手に?」
「ええ。今、どこの街でも、子供であっても顔の確認をさせてるんです」
「何のために」
「今、冒険者ギルドで探している子供がいるんですよ」
その言葉にドキッとする。
「まさか、それを調べるために、こんな列になってるのか? それは冒険者ギルドの仕事だろう?」
「でも、見つけたなら誰でもが報奨金を貰えますからね」
あっさりと言う若い衛兵に、アーロンも渋い顔になる。反対側の列の対応をしている中年の衛兵も同じなんだろう。じろじろと俺の方を見ている。
――最悪だ。
アーロンの後ろに隠れていた俺を、また別の衛兵が脇から出てきて捕まえようとする。
「い、嫌だっ」
掴まってたまるかっ!
俺はフードを掴んだまま、クルクルとアーロンの足元を逃げ回る。
「おい、落ち着け。すぐに済むんだから」
そう声をかけてくるのは追いかけまわしている衛兵だったが、なかなか俺を捕まえられない。そんな様子をアーロンはニヤニヤ笑いながら見ている。
「ア、アーロンさん、ちょっと、あなたの連れている子供なんですから、言ううこと聞かせてくださいっ」
「いやぁ、あいつは俺の言うこともまともにきかないからなぁ」
何言ってるんだ、コイツ。
ムカッとしながらも、あちこち逃げまくる。しかし、さすがに、俺だって疲れるわけで。
「くそっ、捕まえたぞっ! おらっ、フードを取れっ!」
思い切りフードを取られてしまった。
「あ」
「おっ」
衛兵たちは、がっかりした顔。アーロンは、ちょっと驚いている。周囲の他の旅人たちは、いい加減にしろって感じな顔になっている。
「す、すまんな」
そして、そっとフードを戻してくれた。
……何が起こっている?
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。
karashima_s
ファンタジー
地球にダンジョンが出来て10年。
その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。
ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。
ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。
当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。
運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。
新田 蓮(あらた れん)もその一人である。
高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。
そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。
ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。
必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。
落ちた。
落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。
落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。
「XXXサバイバルセットが使用されました…。」
そして落ちた所が…。
隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生
紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
【更新をやめております。外部URLの作品3章から読み直していただければ一応完結までお読みいただけます】
https://ncode.syosetu.com/n1436fa/
アウロス暦1280年、この世界は大きな二つの勢力に分かれこの後20年に渡る長き戦の時代へと移っていった
リチャード=アウロス国王率いる王国騎士団、周辺の多種族を率いて大帝国を名乗っていた帝国軍
長き戦は、皇帝ジークフリードが崩御されたことにより決着がつき
後に帝国に組していた複数の種族がその種を絶やすことになっていった
アウロス暦1400年、長き戦から100年の月日が流れ
世界はサルヴァン=アウロス国王に統治され、魔物達の闊歩するこの世界は複数のダンジョンと冒険者ギルドによって均衡が保たれていた
今日から始める最強伝説 - 出遅れ上等、バトル漫画オタクは諦めない -
ふつうのにーちゃん
ファンタジー
25歳の春、転生者クルシュは祖国を出奔する。
彼の前世はしがない書店経営者。バトル漫画を何よりも愛する、どこにでもいる最強厨おじさんだった。
幼い頃の夢はスーパーヒーロー。おじさんは転生した今でも最強になりたかった。
その夢を叶えるために、クルシュは大陸最大の都キョウを訪れる。
キョウではちょうど、大陸最強の戦士を決める竜将大会が開かれていた。
クルシュは剣を教わったこともないシロウトだったが、大会に出場することを決める。
常識的に考えれば、未経験者が勝ち上がれるはずがない。
だがクルシュは信じていた。今からでも最強の座を狙えると。
事実、彼の肉体は千を超える不活性スキルが眠る、最強の男となりうる器だった。
スタートに出遅れた、絶対に夢を諦めないおじさんの常勝伝説が始まる。
エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
ポリ 外丸
ファンタジー
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。
海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。
その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。
もう一度もらった命。
啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。
前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる