30 / 95
第4章
29
しおりを挟む
村を出て三日目。そろそろ魔の森の際に来ている。奥の方とは違って、木漏れ日が漏れているだけで、だいぶ明るく感じる。現れる魔物はほとんどなく、小さな獣の姿を見かけるだけだ。
ボブさんたちの息子さんたちが住んでいるのは、この際の外にある町。ここからじゃ、まだ、町の影も消えない。たぶん、町自体が森から出る道の先にあるんだろう。俺たちは、その道からだいぶ離れた場所にいるもんだから、見えなくて当たり前だ。
「さてとぉ……町に行く前にっと」
ボブさんは荷物を降ろして、リュックらしきものから何かを取り出した。その間に、メアリーさんは少し大きめな石を集め始めている。
「なんなんです? それ?」
「う~ん、獣人の仲間への合図する団子だなぁ。ちぃとばかし、臭ぇぞ」
掌サイズの丸い草団子みたいなのを、石でつくられたかまどみたいなのの真ん中に置くと、そこに火打石で火をつけた。最初はジーッと燻ってる感じだったのが、徐々に火が広がり、白い煙がもくもくとあがり始める。
「くっ、マジで臭いっ」
俺は袖で鼻のあたりを隠して、かまどから離れる。
この匂いじゃ、魔物も野生の動物も近寄ってこないだろう。しかし、この匂い、キッツイなぁ。
* * *
草団子を焚きだして、そろそろ小一時間くらい経つ。その間、ウエストポーチにぶっこんでたゴブリンの耳を整理していた。一応、十個で一束になるように、麻紐で括りつけたてみたら、だいぶ数があってびっくりした。
気が付けば、団子も黒い塊状態だ。煙もほぼ出てきていない。これで本当に、ボブさんの知り合いというのが来るんだろうか? と疑問に思っていると、少し遠くの方でカサカサッと音をたてて、何かが近寄って来る音が聞こえた。
「ボブさん」
「……でぇじょぶだぁ」
そう言いながらも、ボブさんもメアリーさんも隙はない。俺も背中に背負っていた弓に手を伸ばす。弓を構えながら、何がきてもいいように待ち受ける。
ガサガサという音が近くなり、ギュッと弓に握りの部分に力をいれる。矢をつがえて、グイッと弦を引く。これで、いつでも撃てる。
「おっと、矢を射るのはやめてくれよ」
呑気な声が聞こえたかと思ったら、ずいぶんと大柄……見上げるような巨大な狼の獣人が現れた。
――すげぇ。
素直に感動した。
初めて見る獣人の姿は、美しいの一言に尽きる。
顔は人間の顔(悔しいくらいのイケメンだ)なのだが、大きな耳が頭の上にあって、ピコピコしている。黒い毛並の太い尻尾がゆさゆさと揺れていている。綺麗なスカイブルーの目が、優しそうに微笑んでいる。
「ヘリウス、よく来てくれたなぁ」
ボブさんたちは、にこやかな顔で狼の獣人を迎え入れていた。
「おう、ボブとメアリーの頼みじゃ断れないさ」
ニカッと笑う顔に、こいつ、絶対、女にモテモテだよな、と思ったら、なんかムカついてきた。
ボブさんたちの息子さんたちが住んでいるのは、この際の外にある町。ここからじゃ、まだ、町の影も消えない。たぶん、町自体が森から出る道の先にあるんだろう。俺たちは、その道からだいぶ離れた場所にいるもんだから、見えなくて当たり前だ。
「さてとぉ……町に行く前にっと」
ボブさんは荷物を降ろして、リュックらしきものから何かを取り出した。その間に、メアリーさんは少し大きめな石を集め始めている。
「なんなんです? それ?」
「う~ん、獣人の仲間への合図する団子だなぁ。ちぃとばかし、臭ぇぞ」
掌サイズの丸い草団子みたいなのを、石でつくられたかまどみたいなのの真ん中に置くと、そこに火打石で火をつけた。最初はジーッと燻ってる感じだったのが、徐々に火が広がり、白い煙がもくもくとあがり始める。
「くっ、マジで臭いっ」
俺は袖で鼻のあたりを隠して、かまどから離れる。
この匂いじゃ、魔物も野生の動物も近寄ってこないだろう。しかし、この匂い、キッツイなぁ。
* * *
草団子を焚きだして、そろそろ小一時間くらい経つ。その間、ウエストポーチにぶっこんでたゴブリンの耳を整理していた。一応、十個で一束になるように、麻紐で括りつけたてみたら、だいぶ数があってびっくりした。
気が付けば、団子も黒い塊状態だ。煙もほぼ出てきていない。これで本当に、ボブさんの知り合いというのが来るんだろうか? と疑問に思っていると、少し遠くの方でカサカサッと音をたてて、何かが近寄って来る音が聞こえた。
「ボブさん」
「……でぇじょぶだぁ」
そう言いながらも、ボブさんもメアリーさんも隙はない。俺も背中に背負っていた弓に手を伸ばす。弓を構えながら、何がきてもいいように待ち受ける。
ガサガサという音が近くなり、ギュッと弓に握りの部分に力をいれる。矢をつがえて、グイッと弦を引く。これで、いつでも撃てる。
「おっと、矢を射るのはやめてくれよ」
呑気な声が聞こえたかと思ったら、ずいぶんと大柄……見上げるような巨大な狼の獣人が現れた。
――すげぇ。
素直に感動した。
初めて見る獣人の姿は、美しいの一言に尽きる。
顔は人間の顔(悔しいくらいのイケメンだ)なのだが、大きな耳が頭の上にあって、ピコピコしている。黒い毛並の太い尻尾がゆさゆさと揺れていている。綺麗なスカイブルーの目が、優しそうに微笑んでいる。
「ヘリウス、よく来てくれたなぁ」
ボブさんたちは、にこやかな顔で狼の獣人を迎え入れていた。
「おう、ボブとメアリーの頼みじゃ断れないさ」
ニカッと笑う顔に、こいつ、絶対、女にモテモテだよな、と思ったら、なんかムカついてきた。
0
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜
Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・
神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する?
月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc...
新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・
とにかくやりたい放題の転生者。
何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」
「俺は静かに暮らしたいのに・・・」
「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」
「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」
そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。
そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。
もういい加減にしてくれ!!!
小説家になろうでも掲載しております
私のスローライフはどこに消えた?? 神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!
魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。
なんか旅のお供が増え・・・。
一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。
どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。
R県R市のR大学病院の個室
ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。
ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声
私:[苦しい・・・息が出来ない・・・]
息子A「おふくろ頑張れ・・・」
息子B「おばあちゃん・・・」
息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」
孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」
ピーーーーー
医師「午後14時23分ご臨終です。」
私:[これでやっと楽になれる・・・。]
私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!!
なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、
なぜか攫われて・・・
色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり
事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!!
R15は保険です。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
ダラダラ異世界学校に行く
ゆぃ♫
ファンタジー
「ダラダラ異世界転生」を前編とした
平和な主婦が異世界生活から学校に行き始める中編です。
ダラダラ楽しく生活をする話です。
続きものですが、途中からでも大丈夫です。
「学校へ行く」完結まで書いてますので誤字脱字修正しながら週1投稿予定です。
拙い文章ですが前編から読んでいただけると嬉しいです。エールもあると嬉しいですよろしくお願いします。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる