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第3章

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 俺がこの世界に来て、二か月が経った。
 その間、ボブさんたちには、世話になりっぱなしで、申し訳ないくらい。ボブさんたちは、最近はすっかり俺のことを孫扱いしている。実際、ボブさんたちの息子さんたちのところには、俺くらい(あくまで見た目だけど)の子供がいるらしい。
 今まで、こんなに甘えさせてもらったことがないから、ちょっとだけ、嬉しい。
 でも、いつまでも、ここにいるのも気が引けるのも事実。かといって、これから先どうしたい、というのが見つからない。

 残念ながら、いまだに魔法の使い方はわからない。
 その代わり、弓の使い方とナイフの使い方をメアリーさんに教わった。そして、なぜだかボブさんからはピッキングの仕方も。小人族という生き物は、冒険者の中でも斥候役だったり、あるいはシーフの役割だったりを兼ねるそうだ。

「いやぁ、さすがエルフだけあって、覚えるの早ぇなぁ」
「そうかなぁ」

 一緒に森の中を走り回ってるのは、小人族のケイン。年は五十二歳だけど、見た目は俺よりちょっと上くらい。村の中でも面倒見のいい若手のホープだ。
 他の若者たちも、あちこちで獲物を探している。みんな魔物除けのお香をつけてるから、臭い。そう、初めてボブさんに抱えられた時の匂いだ。さすがに、俺も慣れた。

 小さなウサギ(といっても、子ウサギじゃない。すでに成獣)を二羽捕まえて、ホクホクの俺。さばき方も教えてもらったさ。火の起こし方も道具さえあれば、ちょっと時間はかかっても、なんとかできる。腰に下げているバッグには、狩りの途中で見つけたキノコや薬草、落ちてた栗なんかが入ってる。

「んだば、村に戻るか」
「うん」

 俺たちは、夕飯はなんだろうね、なんて話しながら帰ってきたんだけれど、村の入口近くまで来てみると、何やら騒がしい。

「どしただ?」
「何かあったのかな」

 小走りで村に入ってみると、大きな馬車が二台に、人間の男たちがいっぱいいる。

「で、でけぇ……」

 つい、言葉になんて出てしまった。
 何せ、小人族の集団に慣れてしまったのだ。人間の、それも大人の男たちの集団に圧倒される。でもケインは見慣れているのか、さっさと集まっている連中の中に入っていく。
 たぶん、あれだ。ようやく行商人がやってきたのだろう。馬車の辺りには、小人族の、特におばちゃんたちが集まってる。そして、おじさんたちや若者は護衛の人間たちに何やら聞いている。
 俺も近くで聞き耳を立てたいところだが、ちょっと手にしている荷物が多かった。俺は、先にボブさん夫婦の家に置きに向かおうとしたんだが。

「あれ? なんで、こんなとこにエルフがいんの?」

 訝しそうな若い男の声が、背後から聞こえた。

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