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第2章

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 彼らがなんで驚いたのか。

 ――エルフの言葉で『ハル』は『宝玉』を意味する。

 ……らしい。
 どうも昔の有名なエルフの王様の名前と同じだったようなのだ。それも、エルフだったら誰でもが知ってる名前で、不敬にあたるっていうんで、エルフの王族でしか使われない名前なんだそうだ。
 そんなん、俺が知るわけないじゃんねぇ?
 本来なら、なんでこのちんまい夫婦が知ってるんだ、と思うところなんだけど、二人とも、昔は冒険者をやっていて、あちこちの国を巡っていたそうだ。
 こんなちんまい姿で冒険者? って思うんだが、それなりに、求められる役割っていうのがあるんだそうだ。詳しくは教えてもらえなかったけど。
 だから、俺のことを王族か何かか、と焦ったらしい。素っ裸で森の中にいたら、捨てられたか、と思うわな。それに、王族にこんなラフな格好とかさせたら、色々言う人がいそうだもんな。まぁ、実際には、俺は王族でもなんでもないんだけどさ。

 さて、肝心のちんまい夫妻だけれど、名前はボブとメアリー。英語の教科書かよ、と心の中でつっこんだのは内緒だ。
 ちんまいおっさんと、おばちゃん、年は百三十才で同い年夫婦らしい。百超えてて、でも、まだおっさんとおばちゃんに見えるって、何の詐欺だよ。

 ところで、なんでボブさんが俺を見つけたか、というと、たまたま薬草を摘みに森に入ったところで、奥の方、まさに俺がいたあたりが光ったらしい。気になって仕方がなくて、無理して見にいったとか。
 確か、某ファンタジーのイメージでは、小人の種族って好奇心旺盛だったと記憶してる。なるほどね、と思うと同時に、その好奇心に助けられた、とつくづく思った。

 後から聞いた話、『魔の森』という名前だけあって、魔物が住んでる場所らしい。それも、俺がいたあたりはヤバかったというのだ。無事に村に戻って来れたのは奇跡に近いって。ボブさん、メアリーさんに殴られてた。助けてもらった身だけに、あんまり怒らないでやってほしい……。
 俺は、とりあえず、気がついたらあの場にいたことと、それ以前の記憶がないということにしておいた。接した感じ、ボブさん夫婦に悪意は感じない。そもそも、そんな人たちが俺を助けるとは思えないけど、こっちにどうやって来たのか、とか、説明しても通じるのか怪しいし。

「さ~て、ハル」

 ずずずっとお茶をすするボブさん。お茶、といっても、たぶんハーブティーみたいなもんだろう。爽やかな香りが部屋の中を充満している。

「お前さ、これから、どうするだ?」

 メアリーさんも隣に座って、俺を見てる。
 どうする、と言われても、現状、一文無しの俺。それも、どう見ても外見は子供の俺に、何が出来るというのだろうか。元の姿だったら、多少の力仕事が出来たかもしれない。しかし、これじゃぁ……。

「ハルさえよけりゃぁ、うちの子になるかぁ?」
「えっ」

 むーん、と悩んでたところに、メアリーさんの思いもしなかった爆弾発言。
 俺はびっくりしてマグカップを落としそうになった。
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