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第7章
63 sideカイル
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オルドン王国に向かったのには理由がある。
一番は当然、レイに会いたいがためだったが、その次の理由として、厄介なヤツがレイに手を伸ばしてきたからだ。
――グライス伯爵。
実母の再婚相手であり、コヴェリ公爵の弟でもある。
陛下を体調不良にさせた黒幕は、コヴェリ公爵にほぼ間違いない。残念ながら、実行犯であるメイドと料理人は、すでに始末されてしまい、明確な証拠を手に入れることが出来なかった。
そのコヴェリ公爵の命を受けてなのか、グライス伯爵の手の者がオルドン王国に多数入り込んだとの報告があがったのは、陛下がオルドン王国に着いた頃のこと。どこから情報が漏れたのか、レイの身辺が怪しくなってきたのだ。
「王妃殿下」
「わかってます。私が……余計なことをしたばかりに」
王妃に呼ばれた庭園の東屋。大きなため息をついた王妃は、しばらく無言になる。
彼女の背後には、護衛のようにユージンがついていた。
「……あの子は、あのまま平民のままでいいのかしら」
「亡くなった母と同じ仕事をするつもりだと、言っておりました」
「そうなのね……でも、そうも言ってられなくなったわね」
王妃の元にもグライス伯爵たちの動きが知らされているのだろう。
「あの子をバーンズ伯爵家で引き取らせることはできないかしら」
「いきなり伯爵家にですか」
「以前、伯爵夫人にレイとのお茶会の話をした時、彼女はだいぶ関心があったようだったけれど……伯爵本人はどうなのかしらね」
その言葉に、ユージンはすぐに動いた。
数日のうちに、バーンズ伯爵から可能であればレイを引き取る意思があるとの返答を引き出してきていたのは、流石だった。
いざ、その話をサカエラ氏やレイに伝える手配をしようとしたところに、サカエラ氏からレイの母親の親戚が接触してきたとの連絡が来た。
そのタイミングの怪しさに、私はいてもたってもいられず、城を飛び出していた。
「殿下~!」
猛スピードで馬を走らせる私の後を、リシャールとチャールズが必死に追走してくる。
「そ、そんなに急いでどこいくんすかーーーっ」
「オルドン王国!」
「ちょ、し、仕事残ってるっすよぉー」
「陛下がやってくれるっ」
「……チャールズ、黙れ」
通常なら馬車で2週間はかかる道のりを、王族専用の街道を使って3日で駆け抜け、オルドンの王都に到着した私たち。そのままサカエラ氏の元へ行くつもりだったのが、陛下からの伝達の魔法陣により、オルドン王家に顔を出せ、と言われてしまった。
「そんな時間はないのに」
「まぁ、まぁ。陛下にもお考えがあるんでしょうよ」
「そうです。だいたい、貴方様はアストリアの王太子なんです。オルドン王家に顔を出さないわけにもいかないでしょう」
実際には、顔も出さずに帰ったことが一度ある。その時は、ユージンとともにお忍びで、という体で済ませたのだが。
「まったく、面倒な……」
「面倒がらないでくださいっ!」
チャールズの諫める声に、私は肩を竦めた。
一番は当然、レイに会いたいがためだったが、その次の理由として、厄介なヤツがレイに手を伸ばしてきたからだ。
――グライス伯爵。
実母の再婚相手であり、コヴェリ公爵の弟でもある。
陛下を体調不良にさせた黒幕は、コヴェリ公爵にほぼ間違いない。残念ながら、実行犯であるメイドと料理人は、すでに始末されてしまい、明確な証拠を手に入れることが出来なかった。
そのコヴェリ公爵の命を受けてなのか、グライス伯爵の手の者がオルドン王国に多数入り込んだとの報告があがったのは、陛下がオルドン王国に着いた頃のこと。どこから情報が漏れたのか、レイの身辺が怪しくなってきたのだ。
「王妃殿下」
「わかってます。私が……余計なことをしたばかりに」
王妃に呼ばれた庭園の東屋。大きなため息をついた王妃は、しばらく無言になる。
彼女の背後には、護衛のようにユージンがついていた。
「……あの子は、あのまま平民のままでいいのかしら」
「亡くなった母と同じ仕事をするつもりだと、言っておりました」
「そうなのね……でも、そうも言ってられなくなったわね」
王妃の元にもグライス伯爵たちの動きが知らされているのだろう。
「あの子をバーンズ伯爵家で引き取らせることはできないかしら」
「いきなり伯爵家にですか」
「以前、伯爵夫人にレイとのお茶会の話をした時、彼女はだいぶ関心があったようだったけれど……伯爵本人はどうなのかしらね」
その言葉に、ユージンはすぐに動いた。
数日のうちに、バーンズ伯爵から可能であればレイを引き取る意思があるとの返答を引き出してきていたのは、流石だった。
いざ、その話をサカエラ氏やレイに伝える手配をしようとしたところに、サカエラ氏からレイの母親の親戚が接触してきたとの連絡が来た。
そのタイミングの怪しさに、私はいてもたってもいられず、城を飛び出していた。
「殿下~!」
猛スピードで馬を走らせる私の後を、リシャールとチャールズが必死に追走してくる。
「そ、そんなに急いでどこいくんすかーーーっ」
「オルドン王国!」
「ちょ、し、仕事残ってるっすよぉー」
「陛下がやってくれるっ」
「……チャールズ、黙れ」
通常なら馬車で2週間はかかる道のりを、王族専用の街道を使って3日で駆け抜け、オルドンの王都に到着した私たち。そのままサカエラ氏の元へ行くつもりだったのが、陛下からの伝達の魔法陣により、オルドン王家に顔を出せ、と言われてしまった。
「そんな時間はないのに」
「まぁ、まぁ。陛下にもお考えがあるんでしょうよ」
「そうです。だいたい、貴方様はアストリアの王太子なんです。オルドン王家に顔を出さないわけにもいかないでしょう」
実際には、顔も出さずに帰ったことが一度ある。その時は、ユージンとともにお忍びで、という体で済ませたのだが。
「まったく、面倒な……」
「面倒がらないでくださいっ!」
チャールズの諫める声に、私は肩を竦めた。
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