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第7章
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なんでいきなり、カイルがオルドン王国へやってきたのか。
エルドおじさんが無事にアストリアについているのは、サカエラのおじさんから聞いていたけれど、王太子が急に隣国に来たりするもの!?
私は隣に座るおじさんを見ると、困ったような顔になっている。その奥に座るショーンさんに至っては、訳が分からないという顔だ。
おじさんは折り返しカイルへと連絡をいれると、すぐに返事が返ってきた。
「……今は王城にいらしているそうです。王族の方々とのご挨拶が済んだので、すぐにいらっしゃるとか。侯爵様、こちらのお屋敷をご案内してしまいましたが、よろしかったでしょうか」
「構わない。何度もお時間をとっていただくわけにもいかないだろう」
侯爵様を目の前にして、ショーンさんやおじさんと話をするわけにもいかず、私は目の前のティーカップを手にする。
「それにしても、サカエラ、なぜ、アストリアの王太子がいきなり出てくるのだ?」
困惑気味のダルン侯爵。それはそうだ。普通、私たちのような平民と王族が繋がりがあるなんて、思いもしないだろう。
「はぁ……実は」
おじさんは、友人(エルドおじさんのこと)に、今回のマイア―ル男爵家とのことを相談していたことを話した。
「エルドさん?」
「ファルネーゼ子爵夫人は何度か会っているはずなんですが」
「名前には覚えがあるんだけれど」
「メリンダが宿に泊まらせていたと思うのですが」
「ああ! 体格の立派な方ね。その方が?」
「あー。えーとですねぇ……彼は……アストリア国王なんです」
「は?」
ダルン侯爵と子爵夫人が固まった。同じようにショーンさんも。
「国王陛下?」
「はい」
「あの方が」
「はい」
「国王陛下?」
「そうです」
「……なんですって!?」
そう叫んで立ち上がった子爵夫人。そうよね。そうなるよね。
おじさんの身分を知った時の自分を思い出し、遠い目になる。
子爵夫人が呆然としたままストンとソファに座ると、今度はダルン侯爵がおじさんに問いかける。
「し、しかし、どうやってアストリア国王と知り合いに」
「学生時代からの友人なんです……それにメリンダの夫だったレオンも」
「もしや、サカエラはアストリアの学院に留学していたのか」
おじさんは困ったような笑みを浮かべながら頷く。
「そ、それにしたって、王太子が出てくる理由があるまい」
「あー、それがですねぇ」
サカエラのおじさんが言葉をつなごうとした時、サロンのドアがノックされる。
「入れ」
「失礼いたします」
「ロイドか、どうした」
「は、あの、お客様がいらっしゃいましたが……」
「うん? どなただろう」
「えーと、アストリア王太子殿下と名乗ってらっしゃるのですが」
「な、何っ!?」
カイル、早すぎでしょ!
エルドおじさんが無事にアストリアについているのは、サカエラのおじさんから聞いていたけれど、王太子が急に隣国に来たりするもの!?
私は隣に座るおじさんを見ると、困ったような顔になっている。その奥に座るショーンさんに至っては、訳が分からないという顔だ。
おじさんは折り返しカイルへと連絡をいれると、すぐに返事が返ってきた。
「……今は王城にいらしているそうです。王族の方々とのご挨拶が済んだので、すぐにいらっしゃるとか。侯爵様、こちらのお屋敷をご案内してしまいましたが、よろしかったでしょうか」
「構わない。何度もお時間をとっていただくわけにもいかないだろう」
侯爵様を目の前にして、ショーンさんやおじさんと話をするわけにもいかず、私は目の前のティーカップを手にする。
「それにしても、サカエラ、なぜ、アストリアの王太子がいきなり出てくるのだ?」
困惑気味のダルン侯爵。それはそうだ。普通、私たちのような平民と王族が繋がりがあるなんて、思いもしないだろう。
「はぁ……実は」
おじさんは、友人(エルドおじさんのこと)に、今回のマイア―ル男爵家とのことを相談していたことを話した。
「エルドさん?」
「ファルネーゼ子爵夫人は何度か会っているはずなんですが」
「名前には覚えがあるんだけれど」
「メリンダが宿に泊まらせていたと思うのですが」
「ああ! 体格の立派な方ね。その方が?」
「あー。えーとですねぇ……彼は……アストリア国王なんです」
「は?」
ダルン侯爵と子爵夫人が固まった。同じようにショーンさんも。
「国王陛下?」
「はい」
「あの方が」
「はい」
「国王陛下?」
「そうです」
「……なんですって!?」
そう叫んで立ち上がった子爵夫人。そうよね。そうなるよね。
おじさんの身分を知った時の自分を思い出し、遠い目になる。
子爵夫人が呆然としたままストンとソファに座ると、今度はダルン侯爵がおじさんに問いかける。
「し、しかし、どうやってアストリア国王と知り合いに」
「学生時代からの友人なんです……それにメリンダの夫だったレオンも」
「もしや、サカエラはアストリアの学院に留学していたのか」
おじさんは困ったような笑みを浮かべながら頷く。
「そ、それにしたって、王太子が出てくる理由があるまい」
「あー、それがですねぇ」
サカエラのおじさんが言葉をつなごうとした時、サロンのドアがノックされる。
「入れ」
「失礼いたします」
「ロイドか、どうした」
「は、あの、お客様がいらっしゃいましたが……」
「うん? どなただろう」
「えーと、アストリア王太子殿下と名乗ってらっしゃるのですが」
「な、何っ!?」
カイル、早すぎでしょ!
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