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第5章
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面談に、現れたのはサカエラのおじさんと、エルドおじさん。
なんで、エルドおじさんまで来てるの!?
そして二人に挟まれて座って、先生と向かい合わせに座っている。
「あのぉ……こちらの方は……?」
担任の先生も、いきなり予定外の人がいたら驚くに決まってる。
特に、エルドおじさんは190センチ近い大男だから、圧迫感が半端ないと思う。
サカエラのおじさんに、おずおずと聞いている先生が、なんだか不憫に思えてきた。
「彼も、私同様、レイの後見人みたいなものです」
ニコリと笑うサカエラのおじさんに、迫力負けしている先生。
まぁ、それは仕方がないかな。
「ええ、先生、気にしないでください。私はレイの父親のつもりですから!」
「エルドおじさん!」
放っておくと、調子に乗るんだからっ。
「えーと、君の志望は……就職でいいのかい?」
「はい。『ダルンの癒し亭』のファルネーゼ子爵夫人とは話をしています」
私は、母みたいに宿屋での仕事がしたいと思っている。
いつも、疲れて帰ってきても、楽しそうに仕事の話をしてくれる母を見てきたから。私もいつか、母みたいに笑顔で仕事の話ができるようになりたい。
「サカエラさんは、ご存じでしたか」
「やりたい仕事については、聞いていましたが……もう子爵夫人と話をしていたとは」
少し、残念そうな顔で、私を見つめる。
「でも、現実的に考えて、早くに働いたほうがいいと思って。おじさんにはお世話になりっぱなしだし」
「そんなことは、心配しなくていい」
隣で静かに聞いていたエルドおじさんが、急に口を挟んできた。
「……でも、私には、それほど余裕はないし」
「レイ、学べる時に、しっかり学びなさい。お金は、私やサカエラに頼りなさい」
「だ、大丈夫です。母のお金が少しあるし」
いつも、二人に頼ってばかりだし、これは、私の人生だし。
「ダメだ」
両隣から、声が被ってきた。
「メリンダのお金は、万が一の時のために、とっておきなさい」
「そうだよ、メリンダの金は、そんなにたくさんではなかっただろ。何かあった時のために取っておきなさい」
父が亡くなってからは、母一人、子一人で、慎ましやかに生活してた。
そんな私たちに手を差し伸べてくれたのが、サカエラのおじさんやエルドおじさんだけれど、それでも母は彼らに頼りきらないように、必死に生きていたと思う。
母が亡くなってからは、母のお金はサカエラのおじさんに預かってもらいっぱなしだ。それだって、大した金額ではない。
「でも……」
「おじさんたちに任せなさいっ」
二人がかりの説得に、困惑する私。
言いくるめられていく私を正面で見ていた先生は、面白そうに見ていた。
なんで、エルドおじさんまで来てるの!?
そして二人に挟まれて座って、先生と向かい合わせに座っている。
「あのぉ……こちらの方は……?」
担任の先生も、いきなり予定外の人がいたら驚くに決まってる。
特に、エルドおじさんは190センチ近い大男だから、圧迫感が半端ないと思う。
サカエラのおじさんに、おずおずと聞いている先生が、なんだか不憫に思えてきた。
「彼も、私同様、レイの後見人みたいなものです」
ニコリと笑うサカエラのおじさんに、迫力負けしている先生。
まぁ、それは仕方がないかな。
「ええ、先生、気にしないでください。私はレイの父親のつもりですから!」
「エルドおじさん!」
放っておくと、調子に乗るんだからっ。
「えーと、君の志望は……就職でいいのかい?」
「はい。『ダルンの癒し亭』のファルネーゼ子爵夫人とは話をしています」
私は、母みたいに宿屋での仕事がしたいと思っている。
いつも、疲れて帰ってきても、楽しそうに仕事の話をしてくれる母を見てきたから。私もいつか、母みたいに笑顔で仕事の話ができるようになりたい。
「サカエラさんは、ご存じでしたか」
「やりたい仕事については、聞いていましたが……もう子爵夫人と話をしていたとは」
少し、残念そうな顔で、私を見つめる。
「でも、現実的に考えて、早くに働いたほうがいいと思って。おじさんにはお世話になりっぱなしだし」
「そんなことは、心配しなくていい」
隣で静かに聞いていたエルドおじさんが、急に口を挟んできた。
「……でも、私には、それほど余裕はないし」
「レイ、学べる時に、しっかり学びなさい。お金は、私やサカエラに頼りなさい」
「だ、大丈夫です。母のお金が少しあるし」
いつも、二人に頼ってばかりだし、これは、私の人生だし。
「ダメだ」
両隣から、声が被ってきた。
「メリンダのお金は、万が一の時のために、とっておきなさい」
「そうだよ、メリンダの金は、そんなにたくさんではなかっただろ。何かあった時のために取っておきなさい」
父が亡くなってからは、母一人、子一人で、慎ましやかに生活してた。
そんな私たちに手を差し伸べてくれたのが、サカエラのおじさんやエルドおじさんだけれど、それでも母は彼らに頼りきらないように、必死に生きていたと思う。
母が亡くなってからは、母のお金はサカエラのおじさんに預かってもらいっぱなしだ。それだって、大した金額ではない。
「でも……」
「おじさんたちに任せなさいっ」
二人がかりの説得に、困惑する私。
言いくるめられていく私を正面で見ていた先生は、面白そうに見ていた。
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