44 / 81
第5章
43
しおりを挟む
思わず、「え?」と声をあげてしまう。
「こう見えても、私は国王だからねぇ。狙われる可能性があるから、護衛がいるわけだし」
そんな私に、お道化たふうに言うエルドおじさん。
「そ、そりゃそうだけど」
「早いところ、邪魔な王様は消してしまいたい奴等もいるわけさ」
「でも」
「私がいなくなれば、カイルが跡を継ぐ。しかし、もし、君が私の隠し子だとしたら、正当な後継者として、君が継ぐ可能性もある」
確かに、その昔、アストリアに女王がいたというのは、歴史で習った記憶がある。かなり、苛烈な女王だったからだけど。それだって100年以上前の話だ。
「でも、私はおじさんの子供じゃないよ」
「ああ、だから、それを知らない奴等が君を狙ってるかもしれない、ということだ」
それだって、なんだか、納得いかない。
「その、マイア―ル男爵が私へ接触してきた理由って」
「可能性としては、自分のところへの囲い込み、かな」
サカエラのおじさんが、首をかしげながら、そう答える。
「……跡継ぎとかいないんですか?」
「いや、一応、息子が一人いるようだ」
「だったら、私の必要性、なくないですか?」
「彼らが何を考えているのかはわからんがね。アストリアに戻ってこられないよう、マイア―ル男爵家に引き止めさせようとでもしてるのかもね」
「引き止めって」
「結婚とか?」
その言葉に、固まる私。
確かに、学校を卒業してすぐに結婚する子がいるにはいる。特に、お貴族様とか。
でも、私は平民で、結婚よりも母と同じ仕事がしたい。
いや、そもそも、私なんかと結婚させられるのって、まさか。
「ないない、私、平民ですし」
お貴族様的メリットなんて、ないでしょ。
「彼らは、君を王族の落としだねだと思ってるんだ。それをアストリアに来させないようにするだけで、何がしかの報奨があるとしたら?」
「え、でも、資産家なんじゃ」
「……資産はいくらあってもいい……そういう輩は、いくらでもいる」
思わず、げんなりする。
「それと、レイは忘れているようだけれど。君の父親は、アストリアでは伯爵家の長男だったんだよ」
「……」
「王妃であるイレーナに繋がる血筋だ。けして、ただの平民ではない」
苦笑いするエルドおじさん。
この前、アストリアに行って初めて会っただけなのに、王妃様からしてみれば、大した関係ではないと思うのだけれど。
「でも……たとえば、私が死んだとしても、カイル様が跡を継げば国としては安泰なのでは?」
「そんな悲しいことを言わないでおくれ。確かにカイルなら、よい王になるだろう」
エルドおじさんが、優しく微笑む。
「できれば、面倒なことは私の代で、始末してしまいたいものなんだがね」
遠くを見るように、天井を睨むエルドおじさんは、いつにも増して厳しい顔をしていた。
「こう見えても、私は国王だからねぇ。狙われる可能性があるから、護衛がいるわけだし」
そんな私に、お道化たふうに言うエルドおじさん。
「そ、そりゃそうだけど」
「早いところ、邪魔な王様は消してしまいたい奴等もいるわけさ」
「でも」
「私がいなくなれば、カイルが跡を継ぐ。しかし、もし、君が私の隠し子だとしたら、正当な後継者として、君が継ぐ可能性もある」
確かに、その昔、アストリアに女王がいたというのは、歴史で習った記憶がある。かなり、苛烈な女王だったからだけど。それだって100年以上前の話だ。
「でも、私はおじさんの子供じゃないよ」
「ああ、だから、それを知らない奴等が君を狙ってるかもしれない、ということだ」
それだって、なんだか、納得いかない。
「その、マイア―ル男爵が私へ接触してきた理由って」
「可能性としては、自分のところへの囲い込み、かな」
サカエラのおじさんが、首をかしげながら、そう答える。
「……跡継ぎとかいないんですか?」
「いや、一応、息子が一人いるようだ」
「だったら、私の必要性、なくないですか?」
「彼らが何を考えているのかはわからんがね。アストリアに戻ってこられないよう、マイア―ル男爵家に引き止めさせようとでもしてるのかもね」
「引き止めって」
「結婚とか?」
その言葉に、固まる私。
確かに、学校を卒業してすぐに結婚する子がいるにはいる。特に、お貴族様とか。
でも、私は平民で、結婚よりも母と同じ仕事がしたい。
いや、そもそも、私なんかと結婚させられるのって、まさか。
「ないない、私、平民ですし」
お貴族様的メリットなんて、ないでしょ。
「彼らは、君を王族の落としだねだと思ってるんだ。それをアストリアに来させないようにするだけで、何がしかの報奨があるとしたら?」
「え、でも、資産家なんじゃ」
「……資産はいくらあってもいい……そういう輩は、いくらでもいる」
思わず、げんなりする。
「それと、レイは忘れているようだけれど。君の父親は、アストリアでは伯爵家の長男だったんだよ」
「……」
「王妃であるイレーナに繋がる血筋だ。けして、ただの平民ではない」
苦笑いするエルドおじさん。
この前、アストリアに行って初めて会っただけなのに、王妃様からしてみれば、大した関係ではないと思うのだけれど。
「でも……たとえば、私が死んだとしても、カイル様が跡を継げば国としては安泰なのでは?」
「そんな悲しいことを言わないでおくれ。確かにカイルなら、よい王になるだろう」
エルドおじさんが、優しく微笑む。
「できれば、面倒なことは私の代で、始末してしまいたいものなんだがね」
遠くを見るように、天井を睨むエルドおじさんは、いつにも増して厳しい顔をしていた。
0
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
【R18】姫さま、閨の練習をいたしましょう
雪月華
恋愛
妖精(エルフ)の森の国の王女ユーリアは、父王から「そろそろ夫を迎える準備をしなさい」と命じられた。
それを幼いころから共に育った犬耳の従者クー・シ―(犬妖精)族のフランシスに告げると、彼は突然「閨の練習をしましょう」と言い出して!?天真爛漫な姫と忠犬従者の純愛ラブコメ。R18表現多。
第一部(姫と犬君が全話でいちゃらぶ)。第二部(姫の政略婚のゆくえ)。
お互いが大好きな可愛いい主従のいちゃらぶ。リクエストを頂き第二部も追加。
ムーンライトノベルズにも掲載。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる