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第3章

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 アストリア王国に入って四日目の昼。私たちはいよいよ王都に辿り着いた。
 よい馬車を使っていたということもあるかもしれないが、普通に迂回路を使っていたら、その倍以上、二週間近くかかっていただろう。これだけ便利だと、二度と迂回路を使う気にならないかもしれない。
 途中の宿も、毎回、素敵な宿を取っていただいたのには、感謝しかない。将来、母のように高級宿に務めるのなら、あれぐらい出来てないと駄目なんだ、っていうのを、つくづくと考えさせられた。まだまだ、学ぶことがある。

 王都まで来ると、もう雪は残ってはいない。それでも、少しばかり肌寒さは残る。
 オルドン王国よりもギュッと詰め込まれた感じがする王都。たぶん、山々に囲まれて、狭い平地に作られたせいもあるのかもしれない。王都の中心に向かうほどに、古い石造りの建物が道沿いに並んでいる。

『レイ、あれがアストリア王家が住まう王城です』

 そう言われて、窓から見える建物を指さした。

 ――高い。

 いくつもの白い尖塔が青い空に突き刺さるかのように建っている。

 ――あそこに、エルドおじさんがいるのか。

 正直、おじさんが王様だというのが、ピンと来ない。移動中に、証拠にと見せられた、アストリア王家一家の姿絵を見ても、首を傾げてしまう。
 だって、あんな偉そうな顔をしたおじさんと会ったことがないのだもの。

 ぼんやりと、そんなことを考えているうちに、私たちは王城を囲む城壁まで来ていた。
 遠くからでも背の高い建物だとは思っていたが、ここまで近くに来ると、思った以上に大きいことがわかる。
 大きな門の所で衛兵に確認を取られた後、馬車はそのまま中へと入っていく。
 そして、王城の入口にある大きなロータリーに、馬車がゆっくりと止まった。
 ドアが開き、先にサージェント様が降りた。その後に私が降りようとした時、大きな手が差し出された。

「え?」

 今までも馬車を降りるときに、手を差し出して頂いたことはある。しかし、この手は。

『おかえり、レイ』

 まさかの、カイル……王太子。
 サカエラおじさんの家で会った時とはまったく違う、まさに『王子様』な格好での登場。その上、にっこりと笑顔を浮かべられて、私は唖然としたまま固まってしまった。

『レイ様、お早く』
『あ、は、はいっ』

 後ろにいるマリアから指摘を受けて、私は指先だけ、ちょこんと触れるだけにして、降りようとしたんだけれど。

『さぁ、しっかりつかまって』
「え、え、えぇぇぇ!?」

 グイッと引っ張られたと思ったら、どうやってなのか、横抱きに抱きかかえられていた。
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