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第2章

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 カイルという超美形のアストリア人が、いきなり私を自分の国へ連れていきたいだなどと言い出して驚いた。
 本人はあっさり言ったけど、行商人や冒険者でもない限り、多くの平民は自分の国から出ることなど多くはない。馬車での長距離移動ということもさることながら、盗賊や魔物といった危険があるから、護衛を雇ったりしてお金がかかるのだ。
 当然ながら、私はまだ他の国に行ったことは一度もない。そもそも、隣の街(乗合馬車で二日)まで行くなんていう金銭的な余裕もないのだ。
 一応、サカエラおじさんに養われているという扱いになってるけど、ちゃんと、屋敷の仕事(主に侍女頭のマリエッタさんの手伝いとか)をさせてもらっているけれど、なかなかお金は貯まらない。

「おじさん、私にはそんなお金……」
「何言ってるんだ。カイルが誘ってるんだ。当然、カイルが出してくれるさ……『レイの費用は、当然、カイルもちだろう?』」

 おじさんは、意地悪そうな顔でカイルにそう言うと、カイルは驚いたように言った。

『当然だよ。子供にそんな金を出させるつもりはない』

 本当に嬉しそうに自分の国のことを話しだすカイル。
 美味しい物や、美しい街の話、特にアストリアは大きな教会が有名で、周辺国からも多くの観光客がやってくるとか。
 正直、ついていっていいのか迷っていた私。でも、話を聞けば聞くほど行ってみたいという気持ちに変わっていく。

 ――今は亡き父の祖国。興味がないわけがない。

 それも、費用はあちら持ちなのだ……けして美味しい物につられたわけではない。
 ただ、アストリア王国ともなると、そう簡単には行けない。移動する時間だけでも、どれくらいかかるんだろうか。
 それに学校もある。次の長期の休みは夏休み。

 結局、夏休みにアストリア王国に行くことになった。
 それまでは少し時間があるからと、カイルは一旦帰国することになった。
 その代わりに、この前会ったユージンというアストリア人と一緒に来るように、と言われた。どうも、カイルの知り合いだったらしい。
 あの人か、と思うと、ちょっと……いや、かなり憂鬱。長時間、一緒に移動とかって、私は耐えられるんだろうか。

 サカエラのおじさんは、せっかくだから夕飯でもと、声をかけたけれど、カイルはホッズさんの食事に心を惹かれながらも、宿にユージンを待たせているから、と言って玄関に向かう。でも、すんごい残念そうな顔してる。

『あちらで君を待っているよ』

 振り返りながらにこやかに微笑むと、私の頬に軽くキスをして、サカエラのおじさんの家を去っていった。
 まさか、あんな美形の男性に頬にキスされるなんて!
 初めてのことに、硬直する私。

「あいつめ、手が早すぎるだろ」

 ボソリと言ったおじさんの呟き声は、聞き取れなかった。
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