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第10章 やっぱり、ケダモノよりもケモミミが好き

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 応接室に入ると、見覚えのある顔がいた。
 それが私の顔を見て、嬉しそうに微笑みながら立ち上がる。

「メイリン、会いたかった!」

 久々に見た王太子。ちゃんと服を着ている。当たり前か。
 以前よりも、少しだけやつれてみえる。ここまでの移動が、しんどかったのかしら?

「ご無沙汰をしております」

 私はできるだけ冷静なふりをして、カーテシーをしてみせる。うん、ちゃんと、伯爵令嬢しているぞ。

「そんな、改まる必要などないよ。随分と、背が……伸びた?」

 そう。この3か月で身長がかなり伸びた。
 元々、それなりに背が高かった。なにせ、王太子と並んでも、私の方が少しだけ低いかな? 程度だったのだ。それが……今は、見下ろしている。

「成長期ですからね。オホホ」

 そして王太子の視線は、そのまま私の背後に向かい、堂々と立っているへリウスを見て……固まった。
 うん、そうね。へリウスは私よりも、もっと背が高いものね。

「こ、この者は?」

 顔を強張らせながら、目はへリウスから離さない。離せない、が正しいか。
 だって、へリウス、満面の笑みを浮かべながら、殺気を放ちまくってるんですもの。私に向けられてるわけじゃないけど、背中がもぞもぞするわ。

「こちらは……」
「俺はメイの番だ」

 へリウスが、王太子を睨みつけながら、そう言い放った。
 その堂々たる言い様に、ちょっと口元が引きつる私。しかし、それ以上に、王太子の方が唖然としている。

「メイ、だと!? そ、それに、つ、番だとっ!?」
「フンッ、そもそも、お前は誰だっ!」

 今にも噛みつきそうな勢いで問いただすへリウス。
 もう、落ち着け。ハウス!って叫びそう。

「なっ、ぶ、無礼者っ」

 王太子の背後にいた護衛騎士が、剣に手をかける。

「黙れ」

 へリウスの声に威圧が乗る。その声だけで、護衛騎士の身体が固まる。

「へリウス、少し黙ってて」

 背後のへリウスに目を向けずに、声だけで制する。

「メイ」
「大丈夫よ」

 へリウスの心配そうな声に、宥めるように声をかける。
 そして、王太子へと目を向けると、フンっと鼻で笑いながら、へリウスを紹介した。

「王太子殿下、こちらはへリウス・オラ・ウルトガ様……ウルトガ王国の王子殿下であらせられます」
「な、なんだと」
「メイ、そんな他人行儀な紹介はやめてくれ……我が運命の番よ」

 ちょ、ちょっと、今、ここでバックハグとかやめて! 頭にキスしないで!

「う、運命の番っ!? そ、それでは、もう……」

 真っ青な顔になった王太子は、膝から崩れ落ちる。
 うん? なんで、そこまでショックを受けるかな。

「王太子殿下、まだですよ」

 そう言って護衛騎士の後ろから現れたのは、見覚えのある女……まさかの、猫獣人のパティだった。
 久しぶりに見た彼女も、少しやつれているか。以前よりも、毛並みに艶がない。

「ま、まだとは」
「まだ、番にはなってないってことですよ……ねぇ、へリウス様?」

 王太子の言葉に、ニヤニヤ嗤いながら答えるパティ。
 そしてへリウスを見る彼女の目は、昏く、熱のこもったものだった。
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