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―――でも、…………だけど。

「(やっぱり俺たち異世界に来てるってことじゃーん!)」

悲観することはない。もしかしたらまだ夢の可能性も残っているけど、特になにをすることもなく、ただ家に引きこもっていた俺なんかが、こんな貴重で素晴らしい経験をさせてもらえたことに感謝しなくてはならない。それに俺よりも兄ちゃんの方があらゆる面で優れていているのは分かり切っていることだもん。

「だけど、つまりは兄ちゃんはこの世界で貴重な存在ということですか?」

だってわざわざ呼び出すほどなんだ。アニメでよくある重要な役割を担っているということじゃないだろうか。期待をしてアニさんの答えを待っていると、彼はゆっくりと頷いた。

「左様でございます。彼こそが我が国の王であります」
「……ほ、本当ですか!?兄ちゃんが、王様!?」
「はい。……改めまして、勇斗様…………いえ、国王。どうぞご理解のほどよろしくお願い致します」
「ふざけるな。理解なんてできるわけねえだろうが。くだらねえこと言ってないで、早く俺とゆずるを元の場所に戻せ」

……でも兄ちゃんの反応は相も変わらずだ。だけどそれも仕方ないことだと思う。こんなこと理解しろと言われても無理な話なのだ。しかもアニメやゲームなどの娯楽は兄ちゃんは一切しない。だからこそ異世界や異次元に夢を抱いていた俺とは違って、兄ちゃんは余計に理解し難いと思う。……しかも、一刻の王だと言われれば余計にだ。
だけどきっと兄ちゃんが深く考えることはないと思う。

「でも、でも!こっちの世界に呼ぶことができるっていうことは、つまり俺たちを元の場所に戻すことができるってことですよね?」

―――そう。こっちに来れたということは、戻ることもできるというわけだ。兄ちゃんの機嫌を少しでも和らげさせるために、アニさんの返答を待っていたのだが……、

「………………それは……」
「あ、アニさん……?」

…………俺の予想とは違って、アニさんは俺の台詞に少しだけ顔を顰めたのだ。

「…………も、もしかして、戻れないんですか……っ?」
「……いえ。戻れることには戻れると思うのですが……」
「どういうことだ?ハッキリと言え」
「は、はい。ただ、今は術者が倒れていまして……」
「…………そ、そんな……」

――アニさんの話を要約するとこうだった。
こうして違う世界に呼び寄せるという行為は、術者にかなりの負担とエネルギーを掛けてしまうそうだ。だからそのため、今回俺たちを呼び寄せた人は意識不明に陥っているらしい。……つまりは、死ぬ覚悟で兄ちゃんをこの世界に呼び寄せたというわけだ。
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