19 / 24
18
しおりを挟む―――でも、…………だけど。
「(やっぱり俺たち異世界に来てるってことじゃーん!)」
悲観することはない。もしかしたらまだ夢の可能性も残っているけど、特になにをすることもなく、ただ家に引きこもっていた俺なんかが、こんな貴重で素晴らしい経験をさせてもらえたことに感謝しなくてはならない。それに俺よりも兄ちゃんの方があらゆる面で優れていているのは分かり切っていることだもん。
「だけど、つまりは兄ちゃんはこの世界で貴重な存在ということですか?」
だってわざわざ呼び出すほどなんだ。アニメでよくある重要な役割を担っているということじゃないだろうか。期待をしてアニさんの答えを待っていると、彼はゆっくりと頷いた。
「左様でございます。彼こそが我が国の王であります」
「……ほ、本当ですか!?兄ちゃんが、王様!?」
「はい。……改めまして、勇斗様…………いえ、国王。どうぞご理解のほどよろしくお願い致します」
「ふざけるな。理解なんてできるわけねえだろうが。くだらねえこと言ってないで、早く俺とゆずるを元の場所に戻せ」
……でも兄ちゃんの反応は相も変わらずだ。だけどそれも仕方ないことだと思う。こんなこと理解しろと言われても無理な話なのだ。しかもアニメやゲームなどの娯楽は兄ちゃんは一切しない。だからこそ異世界や異次元に夢を抱いていた俺とは違って、兄ちゃんは余計に理解し難いと思う。……しかも、一刻の王だと言われれば余計にだ。
だけどきっと兄ちゃんが深く考えることはないと思う。
「でも、でも!こっちの世界に呼ぶことができるっていうことは、つまり俺たちを元の場所に戻すことができるってことですよね?」
―――そう。こっちに来れたということは、戻ることもできるというわけだ。兄ちゃんの機嫌を少しでも和らげさせるために、アニさんの返答を待っていたのだが……、
「………………それは……」
「あ、アニさん……?」
…………俺の予想とは違って、アニさんは俺の台詞に少しだけ顔を顰めたのだ。
「…………も、もしかして、戻れないんですか……っ?」
「……いえ。戻れることには戻れると思うのですが……」
「どういうことだ?ハッキリと言え」
「は、はい。ただ、今は術者が倒れていまして……」
「…………そ、そんな……」
――アニさんの話を要約するとこうだった。
こうして違う世界に呼び寄せるという行為は、術者にかなりの負担とエネルギーを掛けてしまうそうだ。だからそのため、今回俺たちを呼び寄せた人は意識不明に陥っているらしい。……つまりは、死ぬ覚悟で兄ちゃんをこの世界に呼び寄せたというわけだ。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
檻の中
Me-ya
BL
遥香は蓮専属の使用人だが、騙され脅されて勇士に関係を持つよう強要される。
そんな遥香と勇士の関係を蓮は疑い、誤解する。
誤解をし、遥香を疑い始める蓮。
誤解を解いて、蓮の側にいたい遥香。
面白がる悪魔のような勇士。
🈲R指定です🈲
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説はだいぶ昔に別のサイトで書いていた物です。
携帯を変えた時に、そのサイトが分からなくなりましたので、こちらで書き直させていただきます。
賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。
かるぼん
BL
********************
ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。
監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。
もう一度、やり直せたなら…
そう思いながら遠のく意識に身をゆだね……
気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。
逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。
自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。
孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。
しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ
「君は稀代のたらしだね。」
ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー!
よろしくお願い致します!!
********************
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。
双子攻略が難解すぎてもうやりたくない
はー
BL
※監禁、調教、ストーカーなどの表現があります。
22歳で死んでしまった俺はどうやら乙女ゲームの世界にストーカーとして転生したらしい。
脱ストーカーして少し遠くから傍観していたはずなのにこの双子は何で絡んでくるんだ!!
ストーカーされてた双子×ストーカー辞めたストーカー(転生者)の話
⭐︎登場人物⭐︎
元ストーカーくん(転生者)佐藤翔
主人公 一宮桜
攻略対象1 東雲春馬
攻略対象2 早乙女夏樹
攻略対象3 如月雪成(双子兄)
攻略対象4 如月雪 (双子弟)
元ストーカーくんの兄 佐藤明
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる