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十一空間目
3 R-15
しおりを挟むだけど携帯番号を書いていたというのに何の音沙汰もなしに長い間放置されていた神田さんの気持ちを考えると、それはとても辛いものだと思ってしまう。だって俺が逆の立場だったら、番号を見た上で無視をされているという考えに至って悲しい思いをしていたと思うから……。
「……ご、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。俺も回りくどいやり方しちまったしな」
しかし神田さんは俺を咎めることはせずに、更に強く抱き締めてくれた。
「今はただ有希が俺の腕の中に居るということだけで十分だ」
「…………神田さん」
「この肉感堪らねえ……落ち着くし、興奮する」
そう言って神田さんは俺の首元に顔を埋めて深く呼吸をしていた。どうやら俺の匂いを嗅いでいるようだ。
…………もしかして神田さんはデブ専なのか?という思考が一瞬過ってしまったが、多分そういうわけではないのだろう。わざわざ訊いてこの雰囲気を壊してしまうのは勿体なく感じたので、俺は敢えて訊ねることはしなかった。
「(……それに多分訊いたところで、『有希だからいい』とか言われそうな気がする)」
これってただ自惚れているだけだろうか。確かな自信なんて勿論ないけれど。でも、うん。多分、神田さんはそう言うと思う。自分の中でそう結論付けた後、俺は背後に居る神田さんに向き合うように体勢を変えて、自分からも神田さんの逞しい身体に抱き着いた。
「…………はぁー」
…………ドキドキする。だけど、それ以上に落ち着く。どんなにこの匂いを、この体温をもう一度味わいたくて恋しく想っていただろうか。久しぶりの神田さんをゆっくりと堪能するべく、片方の手で彼の背中に腕を回して更に強く抱き着き、もう片方の手で彼の髪の毛を撫でたのだった。
「……好き、……好きです」
こんなに隙間なく抱き着いているというのに、それでも神田さんが足りないと思ってしまうくらいだ。好きで、好きでどうしようもない。今が幸せ過ぎてなぜか泣きそうになりながら素直に自分の気持ちをを口に出せば、神田さんは俺の首元に顔を埋めたまま、俺の皮膚に吸い付いてくる。……どうやら痕を付けているようだ。
「…………はぁ、っ、ん、ダメ、です」
「なんでだ?」
「……あ、っ、ふ……それ、っ、変な、気分になっちゃうから……ぁ」
チュッ、チュッと何度も音を立てて所有印を付けてくる神田さんの行動に、俺の身体は馬鹿正直にウズウズしてしまう。
「……んっ、あぅ、馬鹿に、なっちゃう」
「なっちまえよ。どんな状態になろうとも、俺はお前を愛し抜いてやるから」
「はぁ、ぁあっ、ん……んん」
なんという捻じ曲がった愛情なのだろうか……。
だが、そんな言葉すら嬉しいと思ってしまう俺も相当おかしいのかもしれない。
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